株価のボラティリティを活用して大きな利益を上げるには

鈴木林太郎
2020年6月3日 9時20分

ボラティリティを利益に変える

株の世界でよく耳にする「ボラティリティ」。わかりやすく言うと、株式の価格変動の幅を表します。

「ボラティリティが高い」とは値動きが大きいときに使われる表現です。2008年に起きたリーマンショックや2020年のコロナショックでも、マーケットにおける価格変動は激しくなりました。なぜなら、マーケットは先行きの不透明さを最も嫌うからです。

値幅が大きいということは、そこにはチャンスがあるということでもあります。ボラティリティをうまく活用することで、大きな利益を生むことができるのです。

2つのボラティリティ

ボラティリティを測る指標には、ヒストリカル・ボラティリティ(HV)とインプライド・ボラティリティ(IV)の2種類があります。

  • ヒストリカル・ボラティリティHV)……ヒストリカルと言うとおり、過去のデータに基づいて分析された変動率です。価格が変動すると大きくなり、価格が安定すると小さくなります。
  • インプライド・ボラティリティIV) ……株式市場で取引されているオプション価格から算出された変動率のことです。市場参加者の相場の先行きに対する「予想」が数値化されたものと言えます。

この2つのボラティリティには、ある程度の連動性があることも特徴です。ただし、実際に相場の動きによって上昇・下落するインプライド・ボラティリティと違って、ヒストリカル・ボラティリティは過去のデータから算出されるため、指標に現れるのが少し遅れます。

長い間、市場価格が安定しているなかで1日だけ大きく株価が動いたとしても、ヒストリカル・ボラティリティには大きな動きがない、ということです

ボラティリティの傾向

ボラティリティの傾向を理解するには、株式市場の特徴を知ることも大切になります。

例えば、一日の取引がスタートする午前9時から午前10時までの時間帯に、株価が上昇することが多くあります。これは、前日の取引終了後から出されている先物注文が集中することで、ボラティリティが高くなることが要因です。

他にも、企業がプレスリリースを発表したり、何かポジティブな要素があったりすると、その銘柄の売買が激しくなってボラティリティが高くなり、株価が高騰する場合があります。

また、話題性のある企業の新規上場や、米FRBによる金融政策の行方、あるいは政治家の発言なども、ボラティリティを高くする傾向にあります。

トレーダーとボラティリティ

ボラティリティを特に重要視しているのが、短期間で何度も売買をするトレーダーたちです。なぜなら、ボラティリティの高い銘柄を繰り返し売買すれば、利益を得る機会が増えるからです。1回1回の売買の利益は小さくても、それを積み重ねることで、大きな利益につながります。

ボラティリティが高いということは、大きく上がると同時に大きく下がるということです。そこで、安く買って高く売るだけでなく、高値で空売りして安値で買い戻すこともあわせて行い、トレード機会を増やすことができます。つまり、利益を得るチャンスが倍増するのです。

ボラティリティが高い銘柄

ボラティリティの高い銘柄といえば、テーマ株と中小型株が代表格でしょう。

テーマ株は、その時々に注目されている旬のテーマに関連する銘柄群です。ここ数年では、ハイテク株や工業株などが大きく注目を集めました。様々な要因で注目されると、突然、株価が上昇することもあり、値動きの激しさも特徴です。

一方の中小型株は主に時価総額の規模で分類され、東京証券取引所では上位100銘柄を大型株、続く400銘柄を中型株、それ以外を小型株としています。

中小型株では、時価総額が低く流動性も低い(取引数が少ない)ため、買いが集中すると株価が急騰することも珍しくありません。ボラティリティが高いことから投機目的での売買も多く、トレーダーの思惑がダイレクトに反映されやすい点も特徴でしょう。 

・新興国の債券

債券の利回りは、先進国よりも新興国のほうが高くなっています。

債券はその国の経済的な信用力がなくては資金が集まりませんが、新興国の中央銀行の信用力は高いとは言えません。経済が長期的に安定しているのかどうかわからず、また、社会情勢が不安定な国も多いため、常にインフレが発生するリスクと隣り合わせです。

常にリスクがあるからこそ、債券の利回りを高く設定し、急なインフレの上昇に備えているのです。また、債券価格が大幅に下落したり、債務不履行になるリスクもあります。こうした要因から、新興国の債券はボラティリティが高くなる特徴があり、その値幅を狙って売買をするトレーダーもいます。

・暗号通貨(仮想通貨)

2017年の年末に起きた暗号通貨ブームはまだ記憶に新しいでしょう。暗号通貨の代名詞とも言えるビットコインは高騰し、2017年12月には200万円を突破しましたが、その後は40万円前後まで下がり、2020年5月は100万円前後を推移しています。

今後どのように落ち着くかは誰にもわかりませんが、21世紀に入り、これほどボラティリティが高い金融市場は暗号通貨以外に存在しません。言い換えれば、これほど高いリスクを伴った金融商品もない、というでもあります。

リスクも高くなることに要注意

ボラティリティが高ければ利益を得るチャンスも大きくなりますが、同時に、ボラティリティが高いほど比例してリスクも大きくなります。つまり、短期間で資産を大きく増やすこともあれば、一瞬で資産を失う可能性もあるということです。

売買ルールを遵守し、損切りを徹底して、しっかりリスク管理できるかどうかが、ボラティリティを利用して利益を出すポイントと言えるでしょう。

ボラティリティは怖くない

株を始めたばかりだったり、ゆっくりと資産を育みたいと考えている投資家にとっては、ボラティリティの高さは怖いと感じられるでしょう。しかし、確かにリスクがあるものの、せっかく株の世界に足を踏み入れたのなら、ボラティリティに乗ることを検討してみるのもいいかもしれません。

あくまでディフェンシブな資産形成をしながらも、ボラティリティの高さに資金を投じることで、思わぬ利益を得られるかもしれません。もちろん、その際にはリスクを十分に認識しておくことが重要ですので、少額で始めるなど慎重な資金管理も欠かせません。

また、ボラティリティと向き合うことは、普段とは違う視点から株価を見ることにつながり、相場というものを理解する手助けにもなるでしょう。決して無理にチャレンジすることなく、でも選択肢のひとつとして持っておくことは、投資家としての成長につながるのではないでしょうか。

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[執筆者]鈴木林太郎
鈴木林太郎
[すずき・りんたろう]金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのが好き。
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