宇宙、メタ、暗号資産… 2021年相場で急騰した銘柄とその教訓

山下耕太郎
2021年12月31日 12時00分

急騰劇を演じた3つの銘柄

アメリカ株に比べ、日本株の上値は重い一年でした。アメリカを代表する株価指数であるダウ平均株価は20%近く値上がりしたのに対し、日経平均株価は4.9%の上昇にとどまりました。ただ、個別株では大きく値上がりした銘柄もあります。そのなかから、特に印象に残った3銘柄を紹介します。

・INCLUSIVE<7078>

テレビ局などのウェブメディア事業を手掛ける会社。同社は今年、2度の急騰を演じました。

1度目は、2月に「ホリエモン」こと実業家の堀江貴文氏に第三者割当増資で約18万株を発行したときです。堀江氏は第2位の大株主になりました。調達資金は、堀江氏のメールマガジンを運営するSNSメールマガジン社の取得にあて、情報発信を支援する事業を拡充しました。

2月15日に366.6円(分割後株価:4月に1対3の株式分割を実施)だった株価は、4月9日には2,576円まで上昇。約7倍となったのです。

そして2度目は、10月26日に小型衛星打ち上げロケットなどを開発するインターステラテクノロジズ(IST)との提携を発表したときです。ISTは日本の民間企業として初めて宇宙空間に達するロケットを打ち上げたことで知られています。同社の創業者も堀江氏です。

10月25日に737円だった株価は、11月5日に5,900円まで上昇。今度は約8倍になりました。

このように、INCLUSIVEは材料株として1度目に7倍、2度目8倍と大きく上昇。2021年上半期 (1~6月)の上昇率は331.4%となり、シンバイオ製薬<4582>の532.4%に次ぐ上昇率になりました。11月中旬以降は調整局面に入っていますが、来年も宇宙関連銘柄として再び脚光を浴びるかどうかに注目しています。

・シーズメン<3083>

アメカジと和装装飾の2事業を展開するアパレルメーカーですが、メタバース関連銘柄として注目されています。10月22日にメタバース専門のアパレルブレンドを新設すると発表したからです。

メタバースとは、インターネット経由でアクセスできる共有の仮想空間のことで、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を利用したデジタル空間を指します。メタバースでは自分のアバター(分身)を使い、現実世界のようにゲームをしたり、コミュニケーションに参加したりできます。

また、暗号資産(仮想通貨)を使ってデジタル資産を購入するなどの経済活動も可能で、すでに2007年頃には、アバターを作成して商品の売買やコミュニケーションが可能な「セカンドライフ」が流行りました。ちなみに、任天堂7974>の「あつまれ どうぶつの森」もメタバースの一種です。

そして、10月28日にフェイスブックが社名をメタ・プラットフォームズ<MVRS>に変更し、メタバース企業への移行を目指すと発表したことから、「メタバース」が株式市場で注目されるようになったのです。

シーズメンは、新事業として「ポリゴンテーラーファブリック」というアパレルブランドを新設。自分自身の分身であるアバターの衣料品を、仮想空間でファッションとしてリデザインし、現実の衣料品として商品化するのです。

シーズメンの株価は10月22日の終値301円から、11月5日の高値2,540円ま8倍以上に上昇。その後は調整局面となりましたが、2022年もメタバースは株式市場の主要テーマだと考えているので、引き続き同社の株価に注目しています。

・グローバルウェイ<3936>

下半期にもっとも注目を集めた銘柄のひとつといえるでしょう。株価上昇のきっかけは、7月21日に発表した業績予想の上方修正でした。傘下のスイスの会社が手掛ける暗号資産「タイムコイン」の売却利益を計上したからです。

株価はこの日の終値36.7円(株式分割後)から11月2日の高値2,192.5円まで約60倍に上昇。過去に例がないぐらいの短期間での上昇となりました。INCLUSIVE<7078>も7倍、8倍という急騰劇を演じましたが、その比較にならないぐらいの上昇となったのです。

また、グローバルウェイもINCLUSIVEも株式分割をしており、それが人気に拍車をかけました。

しかし、12月15日時点のグローバルウェイの株価は348円で、ピークから85%も下落しています。短期間で大きく上昇した銘柄は暴落する可能性も高く、流動性も低い場合が多いので、損切り注文を必ず入れておくなど、徹底したリスク管理が必要です。

実際、グローバルウェイは信用規制が入るなど「仕手化」しました。高値圏では特に乱高下することが多いので、仕手化した株には手を出さないのが得策です。安いときに買いを入れ、高値圏で売却するのが株の基本。値上がりしているからといって安易に高値圏で買いを入れないようにしてください。

リスク管理が何より大事

2021年の日本株は、アメリカ株などに比べると上値の重い展開になりました。個別株では大きく上昇した銘柄もありますが、高値圏では値動きが荒くなる分、下落リスクも高まります。材料株は徹底的なリスク管理が重要になるので、株価が上がっているからといって、慌てて買わないことが大切です。

2022年はどんな銘柄がどんな急騰を見せるのか。2021年の教訓を踏まえつつ、今から楽しみに備えておきましょう。

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[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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