決算発表の時期とルールは? 投資家が知っておきたい会社の思惑
《決算発表は、それによって株価が大きく動くこともあり、投資家なら注目しておかなければいけないイベントです。ということは、当然、会社にとっても重要な意味をもちます。決算発表の時期や内容によっては、株価に影響を与えてしまうことも。知らなければもったいない、「決算発表の時期から会社の思惑を読み解く方法」について紹介します》
決算発表の「45日ルール」と決算ラッシュの関係
決算発表とは、会社が直近の事業活動の結果や先行きの見通しを報告することです。また、決算発表の内容をまとめた書類を決算短信といいます。
現在、上場企業は四半期(3か月)ごとの決算発表を義務付けられています。とくに第3四半期や第4四半期の決算短信が開示されるや否や、株価が突如として乱高下し、市場が大荒れになることも。こうした事態に備えるためにも、決算発表の時期を知っておくことは大切です。
では、それはいつなのでしょうか。
日本の上場企業の多くは3月末決算です。ここで大事なのは、「期末の決算短信は期末から45日までに開示しなくてはいけない」というルールがあること。東京証券取引所は、決算短信についての様式を定めた「決算短信・四半期決算短信作成要領等」で、次のように求めています。
事業年度又は連結会計年度に係る決算については、遅くとも決算期末後45日(45日目が休日である場合は、翌営業日)以内に内容のとりまとめを行い、その開示を行うことが適当であり、決算期末後30日以内(期末が月末である場合は、翌月内)の開示が、より望ましいものと考えられます。(「決算短信・四半期決算短信 作成要領等」より)
「ぐずぐずせずにさっさと出しましょう」というわけです。3月末決算の会社の場合は3月31日が締切となるので、ゴールデンティークが明けてから5月15日にかけての時期が「決算発表ラッシュ」となるのは、そういう理由からです。
〈参考記事〉ソニーの株価が下がった理由は? いまこそ知りたい決算発表と株価の基本
今期の決算発表時期は?
では実際に、2018年3月期の決算発表スケジュールはどうなっているでしょうか。ヤフーファイナンスなどの情報サイトや証券会社などのホームページでは、取引所から発表された情報をもとに、決算発表の時期をカレンダー表示で見られるようになっていて便利です。
以下はSBI証券のサイト画面(画像をクリックすると実際のページに移動します)。
ただし、ここには本決算(第4四半期決算)だけでなく、各四半期決算を発表する会社の数も含まれています。さらに、本決算であっても3月期とは限らず、2月期決算の場合もありますので、チェックする際には注意が必要です。例えば、4月2日に決算発表した10社のうち、3月期の本決算は1社のみとなっています。
また、こうした決算発表日はあくまで予定で、必ずしも確定しているわけではありません。会社が取引所に仮の予定を連絡をしている場合や、前年の決算発表日が予定日として入っている場合も多いようです。いずれにしても、実際の決算発表の時期は変更になる場合もあると思っておきましょう。
4月1日に決算発表しちゃう「超せっかち」な会社
2018年3月期の決算発表のトップを飾ったのは、中部や関東に焼き肉・焼き鳥チェーンを展開するあみやき亭<2753>でした。実はこの会社、今年は4月2日、2017年は4月3日でしたが、それ以前は5年連続で4月1日に決算発表をした、根っからの「超せっかち」です。
スピーディーな決算発表には、投資家の注目を浴びるという狙いがあります。特に、一部の地域でしか事業展開をしていない会社にとっては、エリア外の投資家にも自社を知ってもらう貴重な機会と言えます。ただ「せっかちだから」ではなく、そんな思惑が隠されているのです。
金曜日に決算発表するのは「思いやり」?
各会社の予定を見てみると、決算発表は「金曜日」が多いことに気づきます。さらに注目したいのが「発表時刻」です。2018年4月27日に決算発表をした295社のうち、株式市場が閉じる午後3時より前に発表したのは85社。それ以外の210社が午後3時以降に決算発表を行いました。
すべての投資家・トレーダーが四六時中、株価をチェックできるわけではありません。本決算の発表は、場合によっては株価が大きく変動する可能性のあるイベントですから、取引終了後に発表する会社が多いのです。これは、投資家への「思いやり」と言えないこともありません。
金曜日の夕方に発表することで、投資家たちが土日で「クールダウン」できるという効果もあります。それによって、ネガティブ・サプライズによる株価の乱高下を防ぎたいのです。
過去には、致命的な情報を「平日の日中」に開示したことが、より騒動の悲惨さを増したと思われるアキュセラ・インクの事例もありました。
トヨタが開けた風穴でなにかが変わる?
決算発表時期には会社の思惑がひそかに交錯しますが、2018年3月期決算では、ここに新しい流れが加わりました。トヨタ自動車<7203>が、5月9日(水)の午後1時半に決算発表をしたのです。同社にとって初めてとなる、取引時間中の決算発表でした。
実は、取引終了後の決算発表には問題もあります。インサイダー取引などを回避するためにも、重要情報は速やかに開示されるべきですが、決算にかぎっては、朝の取締役会で承認した内容を、午後3時以降まで待ってから開示する会社が多いのです。
トヨタの場合、質疑応答の時間を十分に確保するといった理由もあったようですが、最大の時価総額を誇る会社の新たな試みだけに、この情報開示は大きな注目を集めました。結果としては、2年ぶりの最高益決算という好業績もあって、株価は急騰しています。
決算発表は50日までセーフだったりします
ところで、「決算発表の45日ルール」によれば、3月期決算の発表デッドラインは5月15日ですが、それより後に発表する会社も多くあります。その中には、東京海上ホールディングス<8766>などのビッグネームもあります。
なぜか? 実は東証は、「45日以内の開示が望ましい」と言いつつも、同時に、次のようにも言っているのです。
なお、事業年度又は連結会計年度に係る決算の内容の開示時期が、決算期末後50日(50日目が休日である場合は、その翌営業日)を超えることとなった場合には、決算の内容の開示後遅滞なく、その理由(開示時期が決算期末後50日を超えることとなった事情)及び翌事業年度又は翌連結会計年度以降における決算の内容の開示時期に係る見込み又は計画について開示してください。(「決算短信・四半期決算短信 作成要領等」より)
要するに、本当は45日以内に開示してほしいけど、現実としては50日までは認めましょう、という猶予があるようですね。
締切を守れない遅刻常習犯
決算発表の45日ルールをまとめると、次のようになります。
- 上場企業は45日以内(45日目が休日である場合は、翌営業日)に決算発表をする必要があるが、実質50日まではセーフ
- 金曜日午後3時以降の発表が多いのは「焦らずクールダウンしてね」
- 超スピード発表で存在感を示す会社もある
決算発表は株価にインパクトを与えかねないだけに、その時期をいつにするかは、会社側のさまざまな思惑が働いているようです。なかには、最終デッドラインの5月20日(50日)にすら間に合わない会社もあります。しかも、毎年のように締切を破っている〝常習犯〟も。
一体どういう理由で遅刻してしまうのか、また、そうした会社の株価はどうなっているのか……。その「言い訳」からは会社の内情が見え隠れしてきますので、こちらもご参考にしてください。