ソニーの株価が下がった理由は? いまこそ知りたい決算発表と株価の基本

佐々木達也
最終更新日:2021-08-12 公開日:2021-07-05

《一年のうち最も株価の変動が大きくなるのが決算発表のシーズン。誰もが注目する一大イベントですが、決算内容が芳しくないにも関わらず株価が上昇したり、好決算なのに株価が下落したり……といった憂き目を見た人も多いことでしょう。なぜ、このような現象が起こるのでしょうか?》

株式市場の一大イベント、決算発表とは

企業が直近の事業活動の結果を報告したり、先行きの見通しを発表したりすることを決算発表といいます。

決算の期間には四半期(3か月)、中間(6か月)、通期(12か月)といった種類があり、現在、上場企業は四半期ごとの決算発表を義務付けられています。かつては四半期決算の発表は企業の自主性に任されていましたが、2009年以降は金融商品取引法により、3か月に一度の公表が必要になったのです。

ただし、決算月をいつにするかを決めるのは企業の自由。例えば、12月が決算月の企業であれば、1〜3月期が第1四半期、4〜6月期が第2四半期です。そして、1〜6月期は上半期の中間決算、1〜12月期が通期(本決算)となります。

また、四半期末から45日(およそ1か月半)以内には決算短信の開示を行うとルール(45日ルール)があります。決算の開示時期が遅れる場合、上場企業はすみやかに理由と開示時期の見通しを発表しなければなりません。

3月決算企業の年間スケジュール

では、日本企業に多い3月期決算で一年の流れを見てみましょう。

まず3月末で通期の決算が確定し、4月下旬を目処に前期の通期決算が発表されます。また、ほとんどの企業はこのときに翌年3月末までの今期の業績見通しを発表します。

その後、7月下旬〜8月上旬にかけて4〜6月期(第1四半期)の決算、10月下旬〜11月上旬にかけて4〜9月期(上半期)の決算が発表されます。この過程で今期の見通しに対して業績が上振れたり、下振れたりしている場合は業績予想の修正を行います。

  • 3月31日=決算日
    • 4月下旬〜5月上旬:決算発表(3月31日から45日以内)
    • 7月下旬〜8月上旬:第一四半期決算発表(4〜6月期)
    • 10月下旬〜11月上旬:上半期の中間決算発表(4〜9月期)
    • 1月下旬〜2月上旬:第3四半期決算発表(10〜12月期)

〈参考記事〉上方修正で上がる株・下がる株 業績修正が株価に与える影響とは

年明け頃には当期の決算もだいぶ着地点が見えてきて、市場の関心は次期の通期決算の見通しがどうなるかに移っていきます。

また、小売企業などでは、四半期決算とは別に月次の売上高などを開示している企業もあり、株価の材料となることがしばしばあります。

進捗率には企業ごとの傾向が出る

決算発表の内容を見るときに、四半期ごとの数値とあわせて確認したいのが「進捗率」です。進捗率とは、通期の業績予想に対して、四半期の業績がどの程度まで達成できたかを表した数字です。

ある3月決算企業の今期の会社予想の営業利益が100億円、第1四半期の営業利益の実績が20億円、第2四半期の営業利益が25億円だったとします。

この場合、第1四半期の営業利益の進捗率は20%(20億/100億)、第2四半期の営業利益の進捗率は25%(25億/100億)となります。また、上半期の中間決算(4〜9月期)の進捗率は45%(45億/100億)となります。

単純計算した場合、四半期で25%ずつ利益を出せば、​通期予想が達成できます。しかし実際には、企業にも競馬の競走馬のような「先行逃げ切り型」や下半期にかけて業績が伸びる「差し・追い込み型」といったクセがあるのが特徴です。

例えば、建設業などでは予算の都合から期末(1〜3月期)にかけて工事が集中しやすく、3月決算であれば「追い込み型」の進捗率となりやすい傾向があります。

企業や業種によってこういった特徴があるため、その企業の過去の進捗率と比較して出遅れていないかどうか、同業他社の進捗率と比べたらどうか、といった視点で見ることも大切です。

好決算=株価上昇とは限らない

株式市場にとって、決算発表は最も株価が大きく動く時期です。決算がよいと株価は上昇、悪いと下落する……と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。

株価を動かす要因はさまざまですが、大きな材料のひとつにコンセンサス市場コンセンサス)と呼ばれるものがあります。コンセンサスとは、その企業について調査している複数のアナリストが公表した予想(市場予想)を平均したものです。

コンセンサスとは良い予想も悪い予想もあわせた平均的な予想値であり、したがって、コンセンサスは投資家の「期待値」と言い換えることもできます。

株価は市場参加者の思惑(=期待や失望)で動きますので、決算内容そのものよりも、このコンセンサスと比べてどうだったか、が株価を大きく動かす要因となるのです。

つまり、実際の決算内容がコンセンサスを上回っていれば株価は上昇し、コンセンサスを下回っていれば下落する可能性が高くなります。たとえ赤字決算でも、コンセンサスの数値よりも良ければ株価は上がりますし、黒字でもコンセンサス(期待値)に届かなければ株価は下がってしまうのです。

決算発表のインパクトが大きくなったワケ

ちなみに、このコンセンサス(市場予想)の精度は企業ごとに異なります。

時価総額が大きく、市場の関心が高い銘柄ほど調査をしているアナリストが多くなるため、一般的に予想の精度が上がります。反対に、新興株や中小型株など調査しているアナリストが少ない銘柄ほど精度は低く、そのため決算発表後の株価変動が大きくなる傾向にあります。

また、かつては一部の外資系証券などで、決算前の企業に対するアナリストの事前取材が行われていました。これを「プレビュー取材」といい、業績予想のヒントとなっていたことから、決算前のプレビューレポートで株価が変動する場面もありました。

しかし、2018年から上場企業が投資家に対して公平な情報開示を義務付ける「フェア・ディスクロージャー・ルール」が施行。現在では、上場企業は決算期末から開示までの間は取材そのものを受け付けない、業績に関する一切のコメントをしない、といった対応に変わっています。

このことは、投資家の間での情報開示の不公平が是正され、それによって一層、決算発表後のインパクトが大きくなったことを示しています。

最高益で下がった株・最大赤字で上がった株

「最高益更新で株価下落」の謎

決算発表後の悲劇でよくあるのが、「最高益更新で売られる」というパターンです。

企業の業績が好調だという情報が市場関係者に広がると、それにつれてアナリストの業績予想も強気なものに変わっていきます。特に成長企業では一般的に会社の業績予想に比べてアナリストの業績予想は強気になりやすいため、市場の期待値であるコンセンサスも上がっていくことになります。

・ソニーグループ<6758>

ソニーグループ<6758>(旧ソニー)は、2021年4月28日に発表した2021年3月期の連結決算(米国会計基準)の純利益が前期比2倍の1兆1717億円と、過去最高益となりました。

巣ごもり需要で「プレイステーション5」などのゲームのダウンロード販売や有料会員の獲得が進み、音楽のストリーミング再生などの継続収入も伸びたことが要因と考えられます。

ただ、同時に発表した2022年3月期の純利益の会社予想は6600億円と減益の見通しとなりました。

この数字が7000億円以上を見込んでいたコンセンサスを下回ったことから、翌営業日の株価は7%を超える下落で、「材料出尽くし」と見た売りに押されました。

「過去最大赤字で株価上昇」の怪

同じ理屈で、「過去最大の赤字で買われる」というパターンもしばしば出現します。2021年3月期決算では、新型コロナウイルス禍で業績が大幅に悪化した鉄道・レジャー株などにこうした銘柄が散見されました。

・東日本旅客鉄道<9020>

東日本旅客鉄道JR東日本)<9020>もそのひとつです。

くしくも上のソニーグループと同日の4月28日に発表された2021年3月期の連結決算は純利益が5779億円の赤字で、国鉄民営化以降では初の最終赤字となりました。新型コロナウイルスの感染拡大により外出や移動が制限され、旅行・ビジネス利用が著しく低迷したことが大きな要因です。

しかしながら、同時に発表された2022年3月期の純利益予想では360億円の黒字転換となり、コンセンサスよりも強気の見通しとなりました。

新型コロナウイルスワクチンの接種も進み、前期が業績悪化の底になるとの期待から「悪材料出尽くし」という見方が広がり、4月30日の株価は2%高と買われ、その後も上昇基調となっています。

噂で買って事実で売る

このように通期の決算発表では、好調な実績や厳しい状況はすでに株価に織り込まれていることが多いため、よほどのサプライズがないと株価の材料にはなりにくいと言えるでしょう。その分、かえって次期の予想のほうが材料となって株価に影響したのです。

また、この両者の決算発表とその後の株価の動きは、「噂で買って事実で売る」という株式投資の有名な格言を体現したものとなりました。

株価には相場全体のムードも影響

決算発表に対する市場の反応には、相場全体の地合いセンチメント)も影響します。

地合いとは市場の雰囲気やムードのことをいい、地合いが良いと、多少の悪材料が出ても株価は下がりにくい状況が続きます。

例えば、決算発表で当期の業績予想が減益となり、市場予想を下回ったにも関わらず、「成長投資のための前向きな減益」と受け止められるようなパターンです。他にも、売り一巡後には再び買い戻されるパターンもよく目にします。

アナリストたちは企業の実態を分析し、現実に沿った数値を予想しますが、その一方で、実際の株価はこのように「雰囲気」に影響されてしまいがちであるのもまた事実。決算発表は、まさに市場参加者の心理がよく現れるイベントと言えるでしょう。

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[執筆者]佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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