50歳の人こそ今から株を始めるべき3つの理由

高株 昇
2018年7月23日 11時00分

最近の50代のライフスタイルは多様化している。住まいも持家・賃貸・社宅など様々で、三世代同居の大家族もいれば、一人暮らしの人もいる。

すでに孫に囲まれている人、これから子どもの教育費が大変な時期にさしかかる人、住宅ローンが長く続く人、親の介護をしている人、夫婦共働きで生活にゆとりがある人、独身で仕事一筋の人……など、百人いれば百通りの人生を歩んでいる。

社会人デビューからまもない20代前半の人が株を始める場合と違って、手持ちの資産状況も様々だ。したがって、現在ある資産を、老後に向けてどのように活用していくかを考えた投資方法が必要になってくる。

50年の経験は投資にも役に立つ

ライフスタイルは人それぞれでも、50代に共通しているのは、一般的に定年が近づいてきて収入はピークから下り坂になり、セカンドライフを考えざるを得なくなることだ。気力・体力・集中力が年々衰えてくるのも否めない。

こうした状況でむやみに株を始めても、大きな失敗をしたら取り返しがつかなくなる。老後のための蓄えが吹っ飛んでしまうかもしれない。

そんなことを言われたら何だかネガティブな気分になった……という〝アラフィフ(50歳前後)〟の人もいるかもしれない。だが、経験のない人からすれば株式投資は未知の世界で、しかもリスクがあるのだから当然だろう。それに、株で大儲けできるのは、ほんの一握りだとも言われる。

それでも、株で着実に資産形成していくことは十分に可能だ。株を始めることで新たな世界も見えてくる。何より、50年の人生経験が投資に役立つことも少なくないのだ。

今50歳の人は学生時代にバブルを迎え、社会人になってからはバブル崩壊、相次ぐ金融機関の破綻と再編、アナログ社会からIT社会への変貌、リーマンショック、消費税の引き上げ、少子化・超高齢社会で現役世代の社会保障負担の増加……など、経済分野だけでも激動の30年を経験してきた。

もはや忘れているかもしれないが、大なり小なり人生の節目では、何度か大事な決断を迫られることもあったのではないだろうか。その決断は、良い方向に向かうこともあれば裏目に出たこともあっただろう。

株式投資も同じだ。買った株が短期間で大きく値上がりすることもあれば、その逆もある。そのときどうするかの選択肢は3つ——売るか、買い増しするか、しばらく様子を見るか。そのとき、激動の30年を経験している50代ならば、20代や30代とは違った判断できるはずなのだ。

株式投資で重要なのは出口戦略

買った株が値上がりしても、売らないことには利益が確定しない。株は買い時よりも売り時を見極める方がはるかに難しい。株価の上昇が続くと、「まだ上がりそうだから、ここで売ったらもったいない」と躊躇しているうちに急落することは、よくある。

だが、そこで怖くなって慌てて売ると、売ったとたんに再び上昇し始めて悔しい思いをする。一度この経験をすると、せっかく売るタイミングなのにためらってしまい、結果的に含み損を抱えて長い間保有したままになることがある。投資の世界では、これを「塩漬け」と呼ぶ。

どんな株でも上がったり下がったりするものだ。今まで投資経験がなくても、長い人生の中でたくさんの情報に触れていれば、その感覚は身についているはずだ。そうは言っても、いざ自分のお金で投資すると、どうしても目の前の値動きが気になって判断を誤りがちになるのもわかる。

それでも50歳にもなれば、若い頃とは違って物事を俯瞰して見る力は養われているはずだ。酸いも甘いも経験しているからこそ生じる迷いもあるだろうが、年の功を生かして少し冷静になれば、目先の利益だけにとらわれない判断ができるのではないだろうか。

株式投資では、出口戦略こそ重要だ。そのためにも、心とお金の余裕を持つことが大切だ。そして、いざ株を買うときは、一度に大金をつぎ込まないこと。株式投資は決して博打ではない。ゆとりを持って投資しよう。

株を始めるなら退職“前”に

今50歳の人が公的年金をもらえるのは基本的に65歳からだが、年金だけで老後の生活費を賄うのは厳しい。まだ住宅ローンの返済や子どもの教育資金に追われていて、自分の老後資金まで手が回らないという人も少なくない。だが、そろそろ老後資金の準備も始めたい。

超低金利時代が果てしなく続くなか、多少のリスクは覚悟しても投資しなければ、お金はほとんど増えない。

やっと定年を迎えた頃に、経済的にも時間的にもゆとりが出てきたことで、退職金を元手に株を始める人もいるが、急に自由に使える大きな資金を手にすると気も大きくなって、知識やセオリーを備えないまま株を始めて大失敗するケースもよくある。

50歳前後の人は、一般に定年世代に比べると手持ちの資産は少ないが、収入は多い。じっくりと株式投資に費やすことができる期間も長い。

現役時代から株式投資に慣れておくと、いざ退職金が入ったときの運用にも役立つ。頭の老化予防にもつながり、リタイア後の生きがいにもなる。定年後は、長い人生経験と株式投資を通じて得た知識を活用して社会に還元していくことも可能だ。

50歳は「人生100年時代」の折り返し地点。まだまだ老けてはいられない。後半戦はこれからだ。老後を見据えて株を始めには、ちょうど良い時期と言えるのではないだろうか。

[執筆者]高株 昇
高株 昇
[タカカブ・ノボル]証券会社を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。お金に関する各種セミナー、金融系資格取得講座、企業研修などで幅広く講師を務めるほか、書籍・雑誌・ウェブメディア等での執筆活動、コンサルティング活動なども行う。ファイナンシャル・プランナー(CFP)、証券アナリスト。
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