フィンテックだけじゃない。教育から法律、不動産まで、いま注目される「テック株」とは
注目が集まる「◎◎テック」とは?
近年、株式市場に新風をもたらす業種・銘柄として注目が集まっているのが、いわゆる「テック株」です。フィンテックを筆頭に、最近ではさまざまな「◎◎テック」が聞かれるようになりました。
金融+テクノロジー=フィンテック
既存事業にテクノロジーを融合させることで革新をもたらす「◎◎テック」の代表がフィンテックです。
フィンテック(FinTech)とは「金融(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた言葉で、ICT(情報通信技術)を使った革新的な金融サービスのことをいいます。2015年前後からメディアなどでも紹介されるようになり、関連銘柄が注目を浴びました。
例えば、スマホによる電子決済サービスを提供するウェルネット<2428>もフィンテック銘柄として株価を伸ばしました。2013年1月に400円弱だった株価が2016年には2,000円台を突破するなど、3年で5倍以上の伸びです(現在はまた大きく下げていますが)。
さらに広がるテック企業
最近は、ICT技術が私たちにとってより身近な部分にも応用されるようになり、フィンテック以外の◎◎テックと、それを提供するテック企業も数多く登場しています。
例えば、教育分野にテクノロジーを活用する「エドテック(EdTech)」や、農業にテクノロジーを応用した「アグリテック(AgriTech)」、法律分野にテクノロジーを生かす「リーガルテック(LegalTech)」、さらに不動産取引にもテクノロジーが活用され始めています。
教育分野に貢献する「EdTech」とは
電子教科書やオンライン授業など教育のデジタル化が進んでいますが、そうした技術を支えているのがエドテック(EdTech)です。文部科学省がデジタル教科書の併用を進めていることから、国策に関連した銘柄としても注目されています。
・チエル<3933>
ジャスダックに上場しているチエル<3933>は、日本の小中高校そして大学向けに、学習用クラウドソフトやデジタル教材、タブレット端末を供給するエドテック企業です。学校はクラウドによって出欠管理を自動化できるほか、授業では端末を通じて教員の教科書を児童・生徒に共有することもできます。
同社の株価は2019年には400~500円台を推移していましたが、コロナ禍でオンライン授業を取り入れる学校が増えたことから好業績となり、2020年6月には2,485円の上場来高値をつけました。
現在は1,500円台を推移していますが、文科省の方針次第によっては再度大きく伸びることもあるかもしれません。
・アメリカで注目のテック株
アメリカ市場に目を向けると、さらに多くのエドテック銘柄があります。教育関連という点を考えてみても、少子化が進む日本よりも、今後も人口増加が見込まれているアメリカのほうが期待できるかもしれません。
チェグ(Chegg<CHGG>)は電子教科書を販売するほか、中古教科書を売買できるプラットフォームを展開。また、月々14.95ドルで、わからない問題をいつでも質問できるサービスなどを提供しています。
コロナ禍での株価上昇が著しく、2020年3月に30ドル台だったのが5月には倍の60ドルになり、2021年2月には100ドルを突破しました。
コロナ禍でますます注目が集まるエドテック銘柄ですが、国の教育方針に左右される側面もあるため、その点は注意しておきたいところです。
法律を身近にする「LegalTech」とは
かつては弁護士に相談するのはハードルの高い行為でしたが、「リーガルテック(LegalTech)」の登場によって、誰でも気軽に相談できるようになりました。
・弁護士ドットコム<6027>
日本を代表するリーガルテック企業といえば、マザーズに上場している弁護士ドットコム<6027>ではないでしょうか。同社は法律関連のポータルサイトを運営しており、利用者は弁護士への質問を投稿したり、自分に合う弁護士を探したりすることができます。
弁護士ドットコムは厳しい状況が続く弁護士業界で注目を浴び、登録弁護士数は2016年から倍増して、2020年は2万人を超えました。2015年からは電子契約サービス「クラウドサイン」を開始し、ペーパーレス化を推進する企業の間で導入が進んでいます。
弁護士ドットコムの株価は2020年3月時点で3,000円台でしたが、テレワークの普及で「クラウドサイン」が注目を浴びたのか、6月には10,000円を突破、10月には15,000円台に乗せるまで急上昇しました。現在は再び9,000円台で落ち着いていますが、今後の動きにも目が離せません。
・アメリカ株やIPOにも期待
ちなみに、「クラウドサイン」と同様のサービスを提供する企業としてはアメリカのドキュサイン(DocuSign<DOCU>)もあり、公式ホームページによるとすでに50万社以上を顧客として抱え、世界最大規模とのことです。
リーガルテック銘柄はあまり多くは見られませんが、同じくアメリカのロス・インテリジェンス(ROSS Intelligence)など、AIによる法的文書の検索・分析システムを開発するベンチャーは数多くあります。こうした企業が今後IPOで売り出される可能性もあるため、期待したいところです。
不動産のハードルを下げる「ReTech」とは
不動産(Real Estate)とテクノロジーを組み合わせた「ReTech」は、ICTなどの新技術を使って不動産の管理や取引をより円滑にします。日本国内では「ReTech」よりも「不動産テック」のほうが一般的なようです。
2020年の後半はコロナショックからの回復で日経平均株価が上昇しましたが、特にIT関連株の伸びが大きく、その流れで不動産テック銘柄も注目を浴びました。
・プロパティデータバンク<4389>
2000年に設立されたプロパティデータバンク<4389>、オーナー企業を対象とした不動産管理クラウドシステムを提供しており、利用者は土地情報や写真などの基本情報を管理できるほか、出入金管理などの会計業務、メンテナンス業務をひとつのクラウドでできるようになります。
プロパティデータバンクの株価は、2020年5月までは3桁でしたが、現在は2,000円弱を推移しています。
・GA technologies<3491>
同じく注目度の高い不動産テック企業が、GA technologies<3491>です。BtoC向けに不動産物件のポータルサイト「RENOSY(リノシー)」を運営するほか、BtoB向けにはCADデータ作成ソフト、業者間のプラットフォームなども提供しています。
GA technologiesの株価は、2020年5月の900円台から10月には3,000円を突破。2020年の一年でプラス124.5%という急上昇を遂げました。
不動産テック銘柄を考える際は、当然、不動産市場の状況も把握したほうがよいでしょう。
次なるテックでテンバガーを狙う
以前はフィンテック銘柄だけが注目を浴びていましたが、近年ではエドテックや不動産テックなど、さまざまなテック株にも熱い視線が注がれるようになりました。
なかには業績とともに株価も大きく伸ばしている企業もあり、テンバガーを狙える銘柄として魅力的に見えるかもしれません。ただし、テック株だからといってすべてが上がるわけではなく、また、比較的不安定な新興市場の銘柄も多いため、そうしたリスクは十分に理解しておきたいところです。
テクノロジーの進化は今後も続いていくでしょうから、次々と新たな「◎◎テック」が誕生することも予想されます。安易に飛びつくのは危険ですが、それでも目新しさや成長への期待は大型株にはない魅力ですので、時にはこうした銘柄に注目してみるのも面白いのではないでしょうか。