公募割れが多発する2022年のIPO市場 最も多いのはみずほ、では公募割れゼロの証券会社は?
主幹事ランキングで振り返るIPO
2022年は8月までに計43銘柄がIPO(新規株式公開)を行いました。
そこで今回は、2022年8月までのIPOにおいて「主幹事を務めた証券会社」にフォーカスしてみたいと思います。主幹事とは、企業が株式を新規公開する際に、新株の引き受け・販売を手がける証券会社のことです。
まずは、主幹事を務めたIPO件数のランキングを見てみましょう。
8月までに43銘柄がIPOを行うなかで、計10社の証券会社が主幹事を務めました。
件数では、1位のみずほ証券(11銘柄)と2位のSMBC日興証券(9銘柄)が、3位グループの大和証券、野村證券、SBI証券(各5銘柄)以下を大きく引き離しています。
近年は、みずほ証券、SMBC日興証券が主幹事のIPOが多い状態が続いており、本年も同様の傾向が継続中です。
なお、不祥事の影響が懸念されたSMBC日興証券でしたが、主幹事件数は引き続きトップ集団を維持しています。
初値上昇率ベスト5の主幹事はどこ?
次に、今年8月までにIPOを果たした銘柄の中から、初値上昇率(公募価格から初値への上昇率)ベスト5について、それぞれの主幹事を務めた証券会社を見てみましょう。
新興市場が不調の中でIPO市場も不調が続いていますが、それでも、AI事業などを手がける銘柄では初値は大きな上昇を見せました。それらの銘柄を扱った証券会社は……
初値上昇率ベスト5のうち、1位のサークレイス<5029>と2位のANYCOLOR<5032>を含む3銘柄が、大和証券主幹事でした。
大和証券は、手がけたのは5銘柄と多くありませんでしたが、半数以上が初値上昇率の上位に食い込んだことになり、その存在感が際立っています。
3位のトリプルアイズ<5026>を手がけたいちよし証券も、2銘柄の主幹事案件のうち1銘柄で+150%の初値上昇率となっており、よい結果を残したと言えます。
公募割れが多かった証券会社は?
2022年のIPO市場は、初値が公募価格を下回る「公募割れ」が多発しており、かつてのように「IPOならほぼ儲かる」という環境にはありません。
8月までに12銘柄が公募割れとなりましたが、それらの主幹事証券は、公募割れ銘柄数の多い順に次のようになっています。
みずほ証券は、主幹事件数と公募割れ銘柄数のいずれも1位となりました。
案件が多いだけに公募割れも多くなる……と言いたいところですが、公募割れ比率は36%となっています。3件に1件以上が公募割れとなっているだけに、みずほ証券が主幹事の銘柄を狙う場合には、投資家としては対策が必要そうです。
さらに、2位の東海東京証券は、主幹事を務めた3銘柄すべてが公募割れ(公募割れ比率100%)という残念な結果になりました。同社の主幹事銘柄へのIPO投資は慎重な検討が必要、といわざるをえません。
3位のSMBC日興証券は、主幹事を務めた9銘柄のうち2銘柄が公募割れで、その比率は22%。みずほ証券に比べれば低いものの、2割を超える公募割れは「多い」といえるかもしれません。
ちなみに、このランキングを見てもわかるように、初値上昇率ベスト5のうち3銘柄を占めた大和証券は、主幹事を務めた中から公募割れは1銘柄も出ていません。
同じくいちよし証券も、数は少ないものの、主幹事の2銘柄はいずれも公募割れとなっていません。
IPO投資では主幹事の“過去”も要チェック
2022年8月までのIPO状況を見ると、主幹事が11銘柄と最多のみずほ証券は公募割れ比率36%で、一方、5銘柄と主幹事件数がさほど多くない大和証券ではすべての銘柄で初値が公募価格を上回っています。
ここからわかるのは、主幹事の証券会社によって公募価格(売出価格も含む)の設定に個性や傾向があるのではないか、ということです。
2022年のIPO市場では公募割れがコンスタントに発生しているものの、IPOする企業はほぼ毎月あります。この環境下でIPO投資を手がける際は、主幹事証券会社の「過去の実績」(主に公募割れ銘柄の数や比率)にも注意を払っておいたほうがよさそうです。
9月は9銘柄のIPOが予定されており、IPO市場の後半戦が本格スタートします。
候補銘柄の事業内容や公募価格の予想PERについて分析するだけでなく、主幹事証券の値付け傾向なども頭に入れながら、できるだけ公募割れを避ける投資判断を心がけましょう。