2023年の株式市場はどうなる? ウサギが跳ねたら株価はどこまで飛んでいく?
干支で読む、2023年の株式市場
株式市場には「アノマリー(Anomaly)」と呼ばれる〝法則のようなもの〟がたくさんありますが、日本ではこんな干支アノマリーが知られています。
辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる
これによると、2023年の卯年は「跳ねる」ということで、「千里を走る」だった2022年(寅年)から、さらに上昇してくれそうな兆しを感じさせます。
このアノマリー、どれくらい信用できるのでしょうか? 残念ながら未来は誰にもわかりませんが、「過去はどうだったのか?」を知ることはできます。過去の卯年の日経平均株価を振り返ることで、令和5年の株式市場がどんなものになるのかを思い描いてみます。
2011年(平成23年)──東日本大震災。国難の一年
- 年始の始値:10,352.19円
- 年末の終値:8,455.35円 −1896.84円(−18.3%)
「跳ねる」のイメージとは真逆の、年間を通じて右肩下がりのチャートとなりました。それもそのはず。特に急落があった3月に東日本大震災が発生し、国難の一年でした。
地震が発生したのは3月11日金曜日、株式市場が閉場する直前の14時46分でした。この日の日経平均株価の終値は9,985円。週が明けて、水曜日16日には8,530円と14.6%も下落。その後に少し戻すも、全体を通じては右肩下がりの一年となりました。
・2011年はこんな年
[新語・流行語大賞]
- なでしこジャパン……サッカー女子日本代表チームの愛称
2011年、なでしこジャパンはワールドカップ初優勝に輝き、暗い一年を照らした貴重な明るいニュースになりました。
他の流行語の顔ぶれを見ると、「帰宅難民」「こだまでしょうか(震災によりCMが自粛されていたころに流れていたACジャパンのコマーシャルの一節)」「3・11」「風評被害」というように、いずれも震災関連の言葉が並びます。
1999年(平成11年)──世紀末へ、ウサギ跳ねるっ!
- 年始の始値:13,779.05円
- 年末の終値:18,934.34円 +5,155.29円(+37.4%)
2011年からは一転、ウサギが野山を元気に飛び跳ねているような、絶好調のチャートです。年始から年末の上昇率はなんと37.4%! 跳ねてます!
・1999年はこんな年
[新語・流行語大賞]
- 雑草魂……1999年にプロ野球・読売巨人軍に入団した新人・上原浩治投手を称えた言葉
- ブッチホン……時の首相・小渕恵三氏のクセ?
大賞は2つ。「雑踏魂」の上原投手は、同期に横浜高校でセンバツ、甲子園と春夏を連覇し、鳴り物入りでプロ入りした「平成の怪物」こと松坂大輔投手がいます。上原投手は甲子園出場すらなかったのですが、プロの舞台で活躍し、雑草魂を漲らせました。
小渕首相は、メールを送ってきた一般人にまで「もしもし、オブチです」と電話をかけてくる、相当の「電話魔」だったのだそう。
なお、前年1998年の流行語大賞のトップテンは「日本列島総不況」「貸し渋り」など厳しい世相が垣間見える顔ぶれだったのですが、翌年は一転、世紀末に向け大躍進の一年となりました。
1987年(昭和62年)──ウサギを阻むブラックマンデー
- 年始の終値:18,702.64円
- 年末の終値:21,564.00円 +2,861.36円(+15.3%)
前年の1986年も株価は右肩上がりの絶好調。1987年もその勢いを引き継いではいるのですが、この年は世界的なトピックもありました。
10月19日月曜日、米ニューヨーク市場の暴落に端を発した株安は、瞬く間に世界をかけめぐりました。日経平均株価もそのあおりを受け、1日で14.9%も下落しています。ただ、諸外国に比べると下落幅は低く、ここからさらにバブルへと日本経済は突入していきます。
・1987年はこんな年
[新語・流行語大賞]
- マルサ……国税庁査察官を主人公にした大ヒット映画「マルサの女」(監督・伊丹十三、主演・宮本信子)から
映画の登場人物たちが行っていた涙ぐましい脱税の努力も、バブルならではでしょうか。
銀賞には、この年に民営化された「JR」も入っています。現在、JRグループで上場しているのは東日本(東日本旅客鉄道<9020>)・西日本(西日本旅客鉄道<9021>)・東海(東海旅客鉄道<9022>)・九州(九州旅客鉄道<9142>)の4社です。
1975年(昭和50年)──慌ただしくもN字に跳ねる
- 年始の終値:3,777.40円
- 年末の終値:4,358.60円 +581.2円(+15.4%)
一年を通じたチャートの形は、年始から5月まで上昇、その後9月まで下落し、そしてまた上昇と、「N」型を描いています。この年のウサギは一気にジャンプせず、2回に分けて跳ねた、ということなのかもしれません。
・1975年はこんな年
山陽新幹線が岡山~博多間開業。また、多くの人に愛され続ける日常の定番商品「きのこの山」(明治ホールディングス<2269>)、「ペヤングソース焼きそば」、「キャンパスノート」(コクヨ<7984>)は、この年に生まれた「同級生」です。
世界に目を向けると、ベトナム戦争が終結した年でもあります。
1963年(昭和38年)──東京オリンピック前夜
- 年始の終値:1,418.25円
- 年末の終値:1,225.10円 −193.15円(−13.6%)
6月末までは上昇、7月からは一転下落しています。
翌年に東京オリンピック開催を控え、「オリンピックイブ」である1963年は日本初の高速道路(名神高速道路:栗東IC〜尼崎IC)が開通するなど「イケイケドンドン」な年だったはず。ですが、チャート上ではその華やかな雰囲気はいまひとつ感じられません。
・1963年はこんな年
あの黒部ダムができた年です。放水がおなじみの黒部ダムも還暦なのですね。この年は北陸地方を中心に歴史的な豪雪があり(発生年から「サンパチ豪雪」と呼ばれています)、死者228名・行方不明者3名の大参事になりました。アメリカでは同年、ケネディ大統領が暗殺されています。
ウサギが跳ねても沈んでも
過去の卯年を振り返ってみると、明らかに「跳ねた」のは1999年。1987年と1975年も、年始と年末の株価を比べると+15%超となっているので、「跳ねている」と言っていいでしょう。5回の卯年のうち、3回は跳ねたことになります。
ただ、2011年の東日本大震災、1987年のブラックマンデーなど、大きな災害や経済的出来事があった年もあり、株価もそれに影響を受けています。一方で、東京五輪の前年1963年は株価的にはいまひとつで、「ムード」と「株価」が必ずしも一致しないことも教えてくれます。
2023年のウサギは跳ねるのか、それとも……? 相場が跳ねようが沈もうが、心は軽やかに飛び跳ねていきたいですね。