株価は3年で下がる? 一流の投資家が「2年上げたら慎重に!」と釘を刺す理由

朋川雅紀
2024年11月13日 15時00分

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3年という数字には意味がある

私は「3年」という期間に非常に大きな重要性を見いだしています。

例えば、「石の上にも三年」ということわざがあります。ご存じのとおり、「どんなに苦しくて大変でも、じっと辛抱すれば必ず報われる」という意味です。とても冷たい石でも、その上に3年も座っていれば温まる、という意味が語源になっているようです。3年という数字に特別な意味はありませんが、基本的には「長い」という意味が含まれています。

「長期」の定義にはいろいろありますが、私自身は、株式投資というものを──その時々で銘柄は変わるかもしれませんが──10年、20年、30年……と続けて行うものだと考えています。ただし、私は個別企業への投資を考える場合は「3年」に注目し、3年をひとつの目処として考えています。具体的には、「3年くらいは持ち続けられる企業」を中心に投資対象を物色します。

私は、投資対象企業のライバル企業に対する優位性がある程度の期間(少なくとも3~5年)にわたり持続できるどうかを使って必ずチェックしています。将来をイメージできるという意味で、3~5年はしっくり来ます。技術革新の波が次から次へと押し寄せる昨今では、10年を超えた企業の姿は想像しにくいものです。

また、景気や株価のサイクルを考えるうえでも、「3年」はとても役に立つ定規です。「株価が2年上げたら慎重に!」は私のモットーです。実際、株価が上昇し始めて2年経ったら売る(株の比率を減らす)準備をし、迷った場合は買いよりも売りを優先します。

とりわけ株価の上げ局面では、この2年という目安はとても有効です。過去の例を見てみましょう。

アメリカ株式(S&P500)は、2016年2月に底を打って、2018年9月に天井をつけています(=2年7か月)。その3か月後の12月には株価は再び底を打って、2020年2月に天井をつけています(=2年2か月)。

株価の上昇→下落と投資家心理

投資家心理から考えても、2~3年という期間はある程度、説明が付きます。気の早い、あるいは先見の明がある投資家は、世の中がまだ景気の回復に懐疑的で悲観的なときに、近い将来に景気回復が始まるという見通しの下で株を買い始めます。

いわゆる「悪材料出尽くし」というのが、その根拠です。

そして、株価が1年も上昇し続けると、それまで悲観的だった投資家の中には、ひょっとしたら景気が回復しているのではないか、と期待を抱き始める者が出てきます。そして、彼らも株を買い始めます。経済指標もちらほら良い兆しが見え始めますが、世の中の大多数は株にも景気にもまだ悲観的です。

株価の上昇が2年を過ぎる頃(3年目)になると、世の中のセンチメントが大きく変わります。それまで弱気だった人が景気の回復を叫び、新聞・雑誌などで景気回復や株の上昇を頻繁に報道するようになります。自分のまわりでも株で儲けた人が増え、知人からは株を買うように勧められます。

こうなると、相場は天井に近くなります。いわゆる「好材料出尽くし」です。

株価には、ゆるやか・・・・に上昇し、急激・・に下落する傾向があります。これは、一般的に、投資家は買いには慎重で、少しずつこわごわと買うのに対して、売りは素早く行動するからです。

株を持っていなければ、損失のリスクは発生しないのですから、投資家の行動はうなずけます。売りの場合には、「投げ売り」という言葉が存在することからも、買いとの違いは明白です。株の上昇が3年以上続くことは珍しくありませんが、株価の下落が3年以上続くことはめったにありません。

株価が2年上げたら慎重に!

景気や株価のサイクルを考える場合、基本的には「3年」が投資期間のひとつの目処となるということです。これは、慎重な、あるいは疑り深い市場参加者が〝変化〟を認識するのに3年程度はかかる、という前提に立っています。

というのも、通常、変化というのはゆっくり起きるからです。白から出発して、徐々に黒が加わって灰色になり、そして、完全な黒に変わっていきます。

経済指標に関して言えば、景気が減速し始めた当初は、好材料の中に悪材料がちらほら見受けられます。やがて悪材料が目立ち始め、最終的には、悪材料が支配的となります。一進一退を繰り返しながら、変化してゆくものです。

したがって、市場参加者も徐々にこの変化を認識し、情報を完全に消化するのに3年前後の時間を要することになります。

ただし、前回の株価サイクルでは、コロナ禍において株価が大きく下落しました。株価は2020年3月に底を打ち、2022年1月に天井を付けているので、厳密には3年目を迎える前に天井となりました。

しかし、この間の株価上昇があまりにも大きかったことを考慮すると、ある程度、説明が付くでしょう。本格的な下落が始まったのは3月ですから、「株価が2年上げたら慎重に!」は大きく間違っていなかったと思います。

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[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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