日本株を揺るがすエヌビディアと日銀と… アノマリーで振り返る2024年相場

岡田禎子
2025年1月21日 10時00分

《マーケットでよく知られた月ごとのアノマリーと、その月に「強い銘柄」や注目すべきイベントなどをお届けしているシリーズ「今月の株価はどうなる?」。今回は、2024年相場の答え合わせです【今月の株価はどうなる?2024総集編】》

乱高下の激しかった2024年の日本株相場。マーケットを揺るがした変動要因は「エヌビディア」「日米の中央銀行」「地政学的リスク」、そして……「あの人」!

アノマリーの視点からみた「上がる株」の予想と結果を、マーケットの概況とともに振り返りましょう。

【1月】プラス8%の好成績

日経平均株価は激震の700円安という幕開けながら、終わってみればプラス8%の好パフォーマンス。中国株の大幅安で日本株に買いが入ったことや、米ハイテク株高や円安、新NISAスタートによる高配当株の上昇期待など複合的な要因がありました。

1月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
波乱含みながらも上昇しやすい月
大発会は急落となりやすい
年末商戦関連銘柄
「1月効果」で小型株が賑わう
新NISAスタートで高配当株が人気に?

「1月効果」では大型株のほうに資金が流入し、小型株はそれに劣後したため、予想としてはやや外れとなりました。ただ、小型株もプラスでは推移しました。

(参考記事)1月の株価はどうなる? 追い風を背に日本を元気にする「辰巳天井」となるか

【2月】大型株が絶好調

22日、日経平均株価はバブル期以来34年ぶりの史上最高値を更新しました。アメリカの半導体大手エヌビディア<NVDA>の好決算を受け、日本株も大きく上昇となりました。

2月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
相場に底堅い動きが見られる月
株主優待の権利取りに注目イオン<8267>
✖️コメダホールディングス<3543>
春節関連銘柄高島屋<8233>
JR東日本<9020>

権利取りで賑わう候補に挙げていたコメダホールディングス<3543>ですが、絶好調となった大型株の裏で、これら中小型株は物色の蚊帳の外となってしまいました。

(参考記事)2月の株価はどうなる? 節分天井か、それとも… 春節の向こうに見えてくる波乱の予感

【3月】ついに4万円の大台へ

日経平均株価は4日に史上初の4万円台に乗せました。その後、調整を経て、19日に日銀がマイナス金利を解除すると、41,087円まで高値を切り上げました。

3月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
月末にかけて盛り上がる月
高配当株に注目淺沼組<1852>
日本郵政<6178>

個人投資家の買いが入った高配当株は、パターンどおり下値の強い動きとなりました。ただ、淺沼組に関しては、3月期末一括配当の銘柄であるため権利落ち後は手仕舞いの売りが出てしまい、月末には大きく下落しました。

(参考記事)3月の株価はどうなる? 重要イベント満載で相場は春の嵐か、サクラ咲くか

【4月】株価は総崩れ

米FRBの利下げ期待が後退したことに加え、中東情勢の悪化もあり、日本株もハイテク株を中心に総崩れとなりました。ただ、春の外国人買いは史上2番目の規模で行われました。

4月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
年間を通じて株価が上がりやすい月✖️
4月に強い株山洋電気<6516>
アクティビスト銘柄✖️ショーボンド<1414>
✖️熊谷組<1861>
レジャー関連&百貨店関連銘柄✖️オリエンタルランド<4661>
✖️J.フロント リテイリング<3086>
春の外国人買いソニーグループ<6758>
半導体関連銘柄✖️東京エレクトロン<8035>
✖️アドバンテスト<6857>

多くの項目で例年のパターンどおりとはならなかった2024年の4月相場。その理由は、FRBの利下げ期待が後退したことで日米ともに地合い悪化となり、半導体関連銘柄中心に利食い売りが加速したためです。

(参考記事)4月の株価はどうなる? 決算発表で上がる株と、みんな大好きソニー&半導体

【5月】日米ともに堅調

アメリカの長期金利が一服したことや米エヌビディア<NVDA>の超絶好決算を受けて、日米ともに堅調な動きとなりました。

5月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
日米ともに軟調になりやすい✖️
5月に強い株寿スピリッツ<2222>
ゴールデンウィーク関連銘柄アサヒグループホールディングス<2502>
東宝<9602>◯
MSCI新規採用銘柄アシックス<7936>

軟調になりやすい5月相場でしたが、エヌビディアのおかげで強い相場となり、アノマリー的には外れの結果となりました。

(参考記事)5月の株価はどうなる? ゴールデンウイークで上がる株と決算発表のポイント

【6月】日経がダウを上回る

米FRBの利下げ期待が高まったことや、日銀が翌7月にも追加利上げに動くのではとの思惑が広がったことにより、日経平均株価はダウ平均株価を上回る上昇を見せました。

6月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
アメリカ株より日本株が優位になりやすい
6月に強い株トランザクション<7818>
猛暑関連銘柄明治ホールディングス<2269>
キーコーヒー<2594>
アクティビスト銘柄✖️京成電鉄<9009>
熊谷組<1861>
注目のIPOアストロスケールホールディングス<186A>

京成電鉄<9009>は、アメリカの証券会社による格下げがあったことに加え、英投資ファンドによるオリエンタルランド株削減提案を株主総会で否決したことから下落となりました。

(参考記事)6月の株価はどうなる? 梅雨時のアノマリーで上がる株と、IPO市場の超新星

【7月】1000円超の下落

半導体をめぐる米中対立激化への懸念が生じたこと、また、米ハイテク株において市場コンセンサスを下回る決算発表が続いたことから、日本株も25日には1000円を超える下落となりました。

7月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
夏枯れ相場になりやすい
7月に強い株コスモス薬品<3349>
パリ五輪関連銘柄アシックス<7936>
エービーシー・マート<2670>
新紙幣発行銘柄グローリー<6457>
日本金銭機械<6418>

新紙幣発行銘柄は、発行当初が天井でその後は続かず、下落となってしまいました。

(参考記事)7月の株価はどうなる? 夏枯れ相場でも上がる株と、五輪&新紙幣への期待

【8月】パニック売りで4000円安

アメリカの景気減速懸念が強まったほか、日銀・植田総裁の発言が利上げに積極的と受け止められたことから、急激な円高が進行。5日の日経平均株価はパニック的な売りが加速し、4000円を超える史上最大の下げ幅を記録しました。

8月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
夏枯れ相場が本格化する月✖️
8月に強い株理想科学工業<6413>
ディフェンシブセクター雪印メグミルク<2270>
銚子丸<3075>
エンタメ関連銘柄カプコン<9697>
東宝<9602>

強烈な急落の後は買い戻しの動きが入るなどボラティリティの高い展開となったため、「夏枯れ」と言われる薄商いの相場とはなりませんでした。

(参考記事)8月の株価はどうなる? 夏枯れにも負けないタフな銘柄を探せ!

【9月】反転のち2000円急落

18日の米FOMCで0.5%の利下げが決定されたことを受けて、日米ともに株価は好転。しかしながら、27日の自民党総裁戦で石破茂氏が勝利すると、金融所得課税強化や経済政策などへの警戒感から日経平均株価は2000円近くの急落となりました。

9月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
下落傾向が強い月
9月に強い株あみやき亭<2753>
ディフェンシブセクターが強いTSI<3608>
湖池屋<2226>
連続増配銘柄三菱GHキャピタル<8593>
商船三井<9104>
日経平均株価採用で上昇良品計画<7453>
野村総合研究所<4307>
東京ゲームショウで注目カプコン<9697>
スクエア・エニックス<9684>

半導体関連銘柄の下落によって個人投資家のセンチメントが悪化し、ディフェンシブセクターや連続増配銘柄などは中小型株は軟調となりました。

(参考記事)9月の株価はどうなる? 荒れがちな相場に強い銘柄の共通点とは

【10月】キャラ変で買い戻し

4日発表の雇用統計を受けてアメリカ株が上昇。さらに、石破首相が突然の〝キャラ変〟でマーケットフレンドリーになったことも好感され、日本株も好調に。7日の衆院選では与党苦戦への警戒感から下落基調でしたが、イベント通過後は買い戻しとなりました。

10月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
上昇しやすいがクラッシュに注意
10月に強い株大和ハウス<1925>
国慶節で上がる株高島屋<8233>
資生堂<4911>
中間決算で上方修正高砂香料<4914>
三栄コーポレーション<8119>

10月の訪日外国人客数は過去最高を記録。百貨店銘柄は軒並み上昇となったものの、ドラッグストアや資生堂<4911>など中国関連銘柄は、同国の大型経済対策への期待が剥がれて下落しました。なお、三栄コーポレーション<8119>は、上方修正はなかったものの大幅増益でした。

(参考記事)10月の株価はどうなる? クラッシュこそ絶好の買い場となる銘柄を探せ

【11月】トランプ・トレードから超弱気へ

5日のアメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利したことから、「トランプ・トレード」を意識した買いが優勢となりました。しかし、そのトランプ氏が中国をはじめとする各国への関税強化の方針を打ち出すと、輸出関連を中心に売りが膨らみました。

11月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
月末に向かって上昇しやすい月✖️
11月に強い株✖️ミネベアミツミ<6479>
アメリカ大統領選で上がる株✖️住友林業<1911>
✖️積水ハウス<1928>
ブラックフライデー&サイバーマンデー✖️イオン<8267>
エービーシー・マート<2670>

トランプ次期政権への不安感や日本政治の先行き不透明感、さらには、円高による7〜9月の企業業績が事前予想を下回ったことで、日本株は超弱気となりました。ミネベアミツミ<6479>の中間決算は本業こそ好調でしたが、円高が響いて下方修正となったため。

(参考記事)11月の株価はどうなる? 勝ち月に強い銘柄とアメリカ大統領選挙で上がる株

【12月】なんとか年末高へ

ダウ平均株価が50年ぶりの10日連続下落。FOMCで2025年の利下げは2回と示唆され、ハイテク株が大きく下落したことを受けて、日本株でも売りが加速しました。ただ、長期金利が落ちつくと日米ともに年末高へ。大納会は35年ぶりの高値更新で終わりました。

12月相場の特徴&アノマリーで上がる株2024年の結果
月末に向かって上昇しやすい月
12月に強い株MS&ADインシュアランスグループ<8725>
高配当株✖️JT<2914>
商船三井<9104>
注目のIPOキオクシアホールディングス<285A>
クリスマス商戦三越伊勢丹ホールディンス<3099>
ソニーグループ<6758>

NISA筆頭格のJT<2914>でしたが下方修正が響き、12月の株価は盛り上がらずに終わりました。ただ、権利落ち後は配当分ほどには下がらず、下値が堅い様子も見えました。高配当株は、NISA新枠組が活発に動いたようです。

(参考記事)12月の株価はどうなる? 年末株高に向けた注意点と上昇しやすい銘柄

2024年最大の変数はアノ人だった!

2024年の12か月を振り返ってみると、アノマリーにもとづいた予想はある程度、有効であることがわかります。

ただし、刻々と変わりゆくマーケットでは「アノマリーどおりになる」ことはありません。お決まりのパターンがあったとしても、そこに変数が加わることで不確実性が生じるからです。

すべてが外れた11月相場。その最大の変数は「トランプ氏」でした。2025年はそのトランプ氏がアメリカ大統領として再登板するわけですから、さあ大変。

マーケットは、不確実性を最も嫌う生き物です。アノマリーをしっかり押さえ、変数も念頭に置きながら、準備万端で2025年相場を生き抜いていきましょう。

【おすすめ】なぜ明日上がる銘柄がわかるのか 元手30万円を数億円の利益に変えたプロの銘柄選び

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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