5月の株価はどうなる? ゴールデンウイークで上がる株と決算発表のポイント

岡田禎子
2024年5月1日 14時00分

《5月はゴールデンウィーク、6月は梅雨、7月になれば夏休み……と、月によって誰もが思い浮かべる共通のイメージがあるように、実は、株式投資にも「◎月といえば▲▲▲株」といったお決まりの銘柄があります。では、5月に恒例の上昇しやすい銘柄は?【今月の株価はどうなる?2024】》

5月に上昇しやすい銘柄とは?

5月相場は「Sell in May(セルインメイ=5月に株を売れ)」とも言われるように、日米ともに軟調となりやすい月です。

この厳しさの背景として、4月末から始まる企業の決算発表があります。投資家たちが決算の結果を見極めようとすることで、株が買い控えられてしまうのです。

そんな5月相場で株価が上昇しやすいのは、どのような銘柄でしょうか。過去10年で5月の勝率が高かった主な銘柄を調べてみました。

8勝2敗という成績だった日経平均株価よりも好成績を残した銘柄の顔ぶれを見ると、食品、サービス、IT関連、輸送用機器関連などが並んでいます。

5月の2大イベントで上がる株

5月相場では10連勝中の寿スピリッツ<2222>は、5月に上昇しやすい株としてマーケットではおなじみの銘柄です。

土産やギフト用菓子製造の会社で地域ブランド菓子を展開している企業で、「メープルバタークッキー」や「ルタオ」の「ドゥーブルフロマージュ」など、多くの人が一度は味わったことがあるのではないでしょうか。

過去10年の5月の成績は、驚異の10連勝中! 前月比の騰落率を見ると、2021年は6.3%、2022年は3.4%、そして2023年は5.0%という好成績となっています。

この株価上昇のポイントは、5月中旬に行われる本決算発表と、なんといっても同社がゴールデンウイーク&インバウンド関連の代表銘柄だから、です。

過去の決算内容を見ると、ここ10年は、コロナ禍の2021年、2022年を除き、ほぼ2桁の増益で業績を拡大しています。さらに、2022年、2023年は上方修正を発表しており、「業績の急拡大」「上方修正」が素直に好感されたといえます。

5月14日に発表される予定の2024年3月期も、経常利益前期比38.5%増の過去最高益となる見通しです。

ただ足元の株価は、4月11日に発表された同期の売上状況で、第1四半期→第2四半期→第3四半期と伸び率の鈍化が見られたことから、目先の利益を確定する売りが出ている模様。本決算発表でのサプライズや、ゴールデンウィーク代表銘柄としての株価回復が待たれます。

決算発表のサプライズにご用心

5月中旬には、3月期末決算企業の本決算発表が相次ぎます。

決算の内容は、フタを開けてみるまではわからないもの。事前にさまざまな情報が飛び交うものの、それを覆す「サプライズ」が起こるのが決算発表です。結果次第では、株価が大きく乱高下する銘柄も見られますので、注意が必要です。

株価上昇につながる「ポジティブ・サプライズ」となり得る材料としては、「上方修正」や「市場コンセンサスを上回る来期見通し」などがあります。

また、「自社株買い」や「増配」といった株主還元策も、現在のマーケットで株価が反応しやすい材料のひとつ。株主還元への意識の高い企業は、相場環境が悪い中でも下値硬直性(一定以上は下がりづらい)があり、新NISAや東証の企業改革といった追い風もあるため、投資家には魅力的と映るからです。

そのような視点も持ちながら、5月相場で連勝中の銘柄についても、2024年3月期の決算内容をしっかりと吟味してから、最終的な投資判断を下すようにしてください。

連休はビール株でほろ酔い気分?

国内ビールのトップであるアサヒビールを有するアサヒグループホールディングス<2502>も、ゴールデンウィーク関連銘柄として広く知られています。

コロナ禍を除くと増収増益で業績を拡大しており、ゴールデンウィークの特需に加え、5月に第1四半期決算があることから、新製品のヒット状況が明らかになれば「連想買い」が起きやすくなります。

「さあ、ビールが美味しい季節!」「ビアガーデンもオープンして、需要も増加するぞ!」というわけです。特にアサヒは業務用に強いため、株価も上昇しやすい、と考えられます。

東宝<9602>もゴールデンウィークの代表的な銘柄です。飲食店や遊戯施設を併用したシネマコンプレックスを運営することから、連休中の近場な娯楽への需要を満たす企業として挙げられます。 

今年は、「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」(4月12日公開)、「ゴジラ×コング 新たなる帝国」(4月26日公開)など期待の映画も公開されました。

今年のゴールデンウイークは、2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行されてからの初めての大型連休です。

旅行会社の調査では、国内旅行は旅行者数が2280万人(前年比100.9%)、平均費用は36100円(同103.7%)、旅行消費額8231億円(同104.7%)となっています。

物価高の影響もあって旅行者数は前年並みですが、平均旅行費用は上昇しています。また、行き先はやや近場で分散傾向、鉄道や航空機を利用した旅行が増えています。

ゴールデンウイーク関連のその他の銘柄としては、アサヒ同様に需要増が期待されるビール各社のほか、鉄道銘柄としてJR4社や私鉄各社、それに「夢の国」なども挙げられます。

MSCI指数の定期入れ替えで株価はどうなる?

5月は世界的なベンチマークとなっている株価指数「MSCI指数」の定期的な見直し&入れ替えがあります。

MSCI指数を構成する銘柄の見直しと入れ替えは、年4回(2、5、8、11月)行われますが、特に大幅な入れ替えとなるのが5月と11月です。見直しの結果は日本時間5月15日の早朝に発表され、月末に実際の組み入れ変更(リバランス)が発生します。

MSCI指数に採用されて組み入れられると、この指数に連動するように設計されているファンド(投資信託)で買い需要が発生する可能性が高まることから、「買い材料」となります。

ただし、事前の予想で採用される可能性が高いと見られる銘柄については、すでに買い付けている場合も多くあります。その場合、実際の入れ替え発表とともに利益確定の売りが出て、株価は下がることも多いので注意が必要です。除外される銘柄の場合は、これとは逆の動きが起きます。

現時点で、新規採用の有力候補として上がっているのは荏原<6361>、アシックス<7936>など。除外の候補はシャープ<6753>、飯田グループホールディングス<3291>、ヒロセ電機<6806>、小糸製作所<7276>などです。

5月の日本株はどう動く?

個別株に投資するには、相場全体の流れもしっかり掴んでおくことも大切です。過去の相場から、5月の日本株は、初旬から中旬までは軟調または下落し、中旬以降は上昇に転じる……という傾向があります。

前半の軟調な要因となっているのは、4月末から5月にかけての決算発表です。

特に5月中旬は、3月期決算企業の本決算発表が相次ぐため、投資家は好決算や来期業績の見通しを期待して買い控えます。また、日本企業は保守的な業績予想を出す傾向にあるため、失望売りにつながりやすい、ということもあります。

決算が出揃ってくると、株式相場も徐々に通常モードになります。

2024年3月の日銀短観では、日本企業の2024年度の経常利益計画は前年比マイナス3%(想定為替レート141.42円)と見込んでおり、さらに日本企業は期初により保守的な予想を出す傾向にあります。

現在のマーケットは2桁増益を予想して動いていますので、このギャップから一旦は織り込む流れとなるかもしれません。中東情勢などの外部環境によってはリスクが長引く可能性もあります。

足元は、日銀による為替介入やFOMCの結果を受けて、急激な円高となっています。

さらに、投資家の多くが休暇を取るために市場参加者の少ないゴールデンウィーク期間中には、アップルの決算やアメリカの雇用統計など、マーケットにインパクトを与える材料が次々と発表されます。仕掛け的な動きで株価が変動しやすいため注意したいところです。

世界を動かす決算発表に注目!

現在、世界の相場をリードする存在と言われているのが、アメリカの半導体企業エヌビディア<NVDA>です。同社の今期(2024年1月期)の第1四半期決算発表が、5月23日に予定されています。

好決算であれば、東京エレクトロン<8035>、アドバンテスト<6867>、ディスコ<6146>、ソシオネクスト<6526>といった日本の半導体関連銘柄も上昇する可能性が大です。これらは日経平均株価への寄与度が高いため、相場全体にも影響を与えるかもしれません。

マーケットの大きな期待にエヌビディアは応えられるのか……? 世界中が注視しています。

5月に強い銘柄を物色しよう

5月に株価が上昇しやすい株をさまざまご紹介してきましたが、「恒例」だからといって、今年も必ず上がるとは限りません。ただ、実際に、相場環境が悪くなりやすい5月でも強い銘柄はあります。

ゴールデンウィークは美味しいビールでしっかりエナジーチャージしつつ、5月に上がる株をしっかり押さえて、決算発表シーズンの荒波を乗り切りましょう。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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