7月の株価はどうなる? いつもと違う夏枯れ相場で注目のホットな銘柄とは

岡田禎子
2025年6月21日 12時00分

《7月といえば、七夕に夏休み──。実は株式市場にも、月ごとの「風物詩」があります。お決まりのパターンや上がりやすい株など、その月ならではの「あるある」を知っておけば、ムダな損失を避け、大きなチャンスをつかめるかもしれません》

夏枯れで方向感欠く7月相場

7月相場は例年「夏枯れ相場」と言われ、出来高が減少し、方向感を欠く月です。

上旬は、ETFの分配金原資捻出に向けた売りが市場を撹乱し、思わぬ波乱となることもあります。中旬から下旬にかけては、3月期決算企業の第1四半期決算を控えて様子見ムードが強まり、方向感の定まらない動きとなる……そんな傾向があります。

日経平均株価の過去20年の7月の月間騰落率(=前月終値と当月終値の比較)は平均+0.4%で、なんとかプラスではあるものの、12か月の中ではあまり大きなパフォーマンスを見込めない動きになっていることが確認できます。

もちろん、今年も例年どおりの値動きをするとは限りませんが、こうした相場の季節性や、その月の恒例イベントにあわせた値動きのパターンを事前に知っておくことで、それを先回りして投資することもできるようになります。

さらに、月ごとのアノマリーからその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。「アノマリー」とは相場における経験則のことで、根拠はないけどよく当たるものや、相場格言として長く言い伝えられているものも多くあります。

〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは

7月の株価はどう動く?

7月相場はもともと、ETFの換金売りによって需給が悪化する懸念のほか、3月期決算企業の第1四半期決算発表を控えて投資家の買い姿勢が慎重になりがちとなることもあって、そもそも夏枯れ相場に入りやすい構図があります。

(過去の7月の日経平均株価のチャートはこちら

しかし、今年の7月は例年の夏枯れとはやや趣が異なり、重要イベントが連続します。

まずは4日。アメリカが独立記念日を迎えます。トランプ政権はこの日に向け、大型減税法の成立を目指す構えです。8日には、相互関税の延長停止期限が到来。翌日から上乗せ分の関税が発動するリスクもあり、通商問題が再び緊張をはらむ可能性があります。

インフレ圧力が残る中での大型減税の実施は、株式市場に追い風となるか、それとも火種となるのか? 一方で、相互関税の問題が夏までに解決に至らなければ、明確なネガティブ材料となるでしょう。

さらに月末の29日・30日にはアメリカでFOMCが、30日・31日には日銀の金融政策決定会合が開催されます。

FRB、日銀ともに現状維持、というのが現在の市場のスタンダードな見方。ただFRBに関しては、トランプ大統領が利下げを急がぬ現議長に不満を示しており、後継候補の噂や、フォワードガイダンス(事前の方針表明)に対する信任の低下は、市場心理に悪影響を与えかねません。

このように、株・為替ともに波乱材料がそこかしこに点在するのが、今年の7月相場です。それぞれの材料を冷静に見極め、いつにも増してリスク管理を一層強化しておく必要があります。

7月のアノマリーで上がる株

そんな7月相場で上昇しやすいのは、どんな銘柄でしょうか? 過去10年(2015年~2024年)の7月相場で勝率が高かった銘柄を見てみましょう。

上位に並んでいるのは、いずれも7月相場に強い銘柄として相場ではおなじみの企業たち。この10年で一度も7月に下落したことのないセントラル硝子<4044>のほか、9連勝中と好調なコスモス薬品<3349>にも注目です。

これらの株価上昇のポイントは、高い成長性と、7月・8月に控える決算発表です。

・セントラル硝子<4044>

板ガラスメーカーとしては国内3位のセントラル硝子<4044>。実は、洗浄剤など化成品やファインケミカル事業が主力です。円安メリット銘柄としても知られています。

セントラル硝子が7月に上昇する要因として考えられるのは、例年8月上旬に発表される第1四半期決算です。期初の会社計画が保守的な企業として知られており、第1四半期決算はたいてい好進捗率になります。そのため、上方修正への期待から決算先回りの思惑買いが入りやすいのです。

今期(2026年3月期)は、アメリカの関税政策による自動車需要の低迷や原燃材料費の増加などで、30%近くの減益という厳しい会社予想を出しています。ただ、これも第1四半期の好進捗率となる兆しが見られれば、株価上昇の再現性は高まりそうです。

・コスモス薬品<3349>

7月9連勝中のコスモス薬品<3349>。九州を地盤にドラックストアを展開している会社で、関東での出店も178店舗に拡大中です。7月に本決算の発表を迎えることもあって、成長性と実績への信頼感から毎年のように7月に強さを見せている銘柄でもあります。

今期(2025年5月期)は4期ぶりの最高益更新が見込まれ、すでに第3四半期までの進捗率は100%を超えており、増額修正の期待が高まっています。2025年も季節習性を発揮できるのか、注目です。

旅に遊びに…夏にホットな銘柄をチェック!

夏の旅行・レジャーシーズンが始まると、関連銘柄が賑わいを見せます。

大手旅行サイト「トリップアドバイザー」が行った調査によると、今年の夏に「旅行を計画している」と回答した人は約7割で、そのうち82%が国内旅行を計画中とのこと。行き先は沖縄(那覇市、恩納村)、北海道(函館市、富良野市、小樽市)などが人気のようです。

(参考)トリップアドバイザー、2025年夏の旅行動向を調査

沖縄では、7月25日に大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」(国頭村今帰仁村)が開業予定です。関連銘柄として、おきなわフィナンシャルグループ<7350>、サンエー<2659>、沖縄セルラー<9436>などが投資家の期待を集めています。

一方インバウンドでは、東京と大阪が、世界の夏の旅行先人気ランキングで1位と2位になっています。

(参考)Mastercard Economics Institute、2025年の旅行動向を発表

大阪・関西万博の関連銘柄としては、西日本旅客鉄道<9021>、ロイヤルホテル<9713>、タカチホ<8225>などが挙げられます。

レジャー関連銘柄では、ラウンドワン<4680>、サンリオ<8136>、イオンファンタジー<4343>などのレジャー施設のほか、7月18日に「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章」、8月に「ジェラシック・ワールド/復活の大地」の公開を控える東宝<9602>など。

今年の夏をもっとも熱くしてくれる銘柄はどれになるでしょうか。

夏の参院選で注目される銘柄とは?

3年に一度の参議院議員選挙が7月20日に行われます。248議席のうち半数の124議席が改選。先の衆院選で過半数を割って少数与党となった自民・公明が、参議院での過半数の維持することができるのかが大きな注目点です。

投資家視点では、こうした国政選挙の実施によって恩恵を受ける銘柄に注目度が高まります。

例えば、投票用紙の集計機など選挙関連機器を手がけるムサシ<7521>やグローリー<6457>、封筒大手のイムラ<3955>、選挙用ののぼりやたすきのイタミアート<168A>などは特需が期待されます。

さらに、世論調査などでトランスコスモス<9715>やGMOリサーチ&AI<3695>も挙げられます。

国策は買い! 国土強靭化計画に注目

選挙で注目されるのが、各政党の政策公約です。

代表的なのは公共事業(インフラ投資)。特に「国土強靭化」は、石破政権による5か年計画が6月に閣議決定されたばかりです。参院選で与党が勝利した場合は速やかに推進され、反対に敗北した場合には推進力や資金規模・スピードが鈍化する可能性が高まります。

7月はもともとゲリラ豪雨や台風が相次ぐ時季で、防災・減災関連など建設・土木株が盛り上がりやすい月でもあるため、注目したいテーマです。

関連銘柄には、7月に強い銘柄にも登場しているライト工業<1926>や大成建設<1801>、東洋建設<1890>、下水道関連で日本ヒューム<5262>やNJS<2325>、栗本鐡工所<5602>、日水コン<261A>などがあります。

「備えあれば、迷いなし」

7月の後半になると、3月期決算企業の第1四半期決算発表が続々と始まります。

ここで注目したいのは「通期予想を上方修正した銘柄」。第1四半期決算で通期予想を上方修正するということは、次の中間決算で再度の上方修正を行う可能性が高く、マーケットで「再評価」される対象となりやすいのです。

7月相場は、いわば後半戦の幕開け。足元ではアメリカの関税政策や中東リスク、日本の政局など不確実性が高い状況ですが、このような時こそ「備えあれば、迷いなし」。アノマリーを手がかりに、夏以降に向けた次なる一手を冷静に、そして、しなやかに選びたいところです。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) note:https://note.com/okapirecipe_555
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