株の暴落を引き起こす「規制リスク」について考える アノ倒産企業も……

かぶまど編集部
2019年2月6日 8時00分

投資家を失意に突き落とす、暴落という悲劇。それは、様々な要因によって引き起こされます。サンバイオ<4592>のように個別銘柄の事情による場合もあれば、ある銘柄群が一斉に、雪崩を打って暴落を始めるケースも……。その一例が、法改正などの「規制リスク」です。

それは、あるスクープから始まった

一発のキラーコンテンツで大化けの可能性もある、夢のあるゲーム関連銘柄。しかしこの業界は、「規制による大暴落」という危険を孕んでいる点に要注意です。2012年に実際に起きた暴落の事例から学びを得ていきましょう。

ソーシャルゲーム株大暴落

2012年5月の連休明け、ソーシャルゲーム関連銘柄の株価が暴落しました。

そのきっかけは、当時さまざまなゲームで導入されていた「コンプガチャ」について、景品表示法で全面的に禁じられている「カード合わせ」という懸賞に当たると消費者庁が判断した——という読売新聞のスクープ記事でした。

読売新聞のスクープ記事が出されたのが5月6日。その後、5月18日に消費者庁から正式に見解が出されます。

それを受けて、グリー<3632>、ディー・エヌ・エーDeNA)<2432>、サイバーエージェント<4751>、ドワンゴ<3715>、ミクシィ<2121>、NHN Japanの6社からなるソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会が、すべてのコンプガチャを廃止することを正式に決定しました。

各社の株価はどうなった?

この「コンプガチャ・ショック」で各社の株価はどう変動したのでしょうか。

グリー<3632>

スクープ翌日の5月7日はストップ安。スクープ前5月2日の終値2,151円から6月4日の安値1,050円まで、下落率は51%にもなりました。

ディー・エヌ・エー<2432>

同じくスクープ翌日の5月7日はストップ安。5月2日の終値2,490円から6月4日の安値1,392円までの下落率は44%。

サイバーエージェント<4751>

利益のほぼ全てをソーシャルゲームから得ていたグリーやディー・エヌ・エーと違い、同社は、子会社で制作したゲームを「モバゲー」などの他のプラットフォームに提供するビジネスのほうが売上・利益貢献度ともに大きかったのが実情です。

つまりソーシャルゲームへの依存度は低いにもかかわらず、5月7日には、やはり株価はストップ安。5月2日の終値253,000円から6月4日の安値145,000円までの下落率も42%と、グリーやDeNAの下落率に近いものになっています(株式分割前の株価で表示)。

このように予想不可能なところが、規制リスクの怖さです。いつ、世論が動き、行政が動くのか(あるいいは動かないのか)──その予測は非常に難しいのです。

ソシャゲだけじゃない! さまざまな規制リスク

規制リスクの怖さはソーシャルゲームだけではありません。

【金融】グレーゾーン金利への規制

それまでは法律の〝グレーゾーン〟ということで認められていた、「利息制限法の上限以上~出資法の上限未満」のグレーゾーン金利による貸付が、2006年1月の最高裁判決で違法となりました。

その後、利息制限法の上限金利以上で支払われた金利については、過去に遡って、貸金業者に返済義務が発生しました。いわゆる「過払い利息の返還」問題です。

これにより、貸金業界全体で単位の負担が発生しました。その結果、当時の消費者金融大手4社は……

  • 武富士<8564>  → 倒産(上場廃止)
  • アイフル<8515> → 私的整理
  • プロミス<8574 → 三井住友フィナンシャルグループ<8316>の子会社化(上場廃止)
  • アコム<8572>  → 三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>の子会社化

規制によって業界地図が大きく変貌したのです。現在でも上場企業として生き残っている2社の株価推移が、この衝撃を物語っています。

クレディセゾン<8253>やイオンクレジットサービス(イオンフィナンシャルサービス<8570>連結子会社)などのクレジットカード各社も過払い利息の返還負担に苦しみ、これらの銘柄に投資していた投資家の損失も極めて大きいものでした。

【人材派遣】製造業派遣の規制

2007年以降、グッドウィル(非上場)の二重派遣等の法律違反問題などを契機とした、製造業派遣などの規制強化によって、グッドウィルは倒産、フルキャストホールディングス<4848>など同業他社の株価も暴落しました。

このほか、パチンコ・パチスロ機の製造メーカーに関しては、警察庁・保安通信協会(保通協)の胸先三寸で、出玉規制が緩められたりきつくなったりし、それが業績にダイレクトに響きます。規制リスクとともに存在している銘柄群だと言えるでしょう。

投資家はどうすべきなのか?

新たなビジネスが次々と生まれる現代、勢いのある新興銘柄には市場の注目も、資金も集まります。しかし、新しいということは、言ってみれば無法地帯。やりすぎれば、行政による介入があるかもしれません。

では、どう対策すればいいのか? まず、このような規制リスクのある株は、何かあったら「スピーディーな損切り」を徹底することが大切になります。

もしくは、そもそも手を出さないという選択肢もあります。それは自分が取るべきリスクなのか──どんなリスクにせよ、よく見極めた上で判断を下すことを常に心がけましょう。

[執筆者]かぶまど編集部
かぶまど編集部
無防備なまま株式市場に参加して大切なお金をなくしてしまう人をひとりでも減らしたい──そんな思いから、未来の株価や相場を予測するのではなく、過去の事例やデータといった「普遍的な事実」に焦点を当てた記事を発信します。同時に、株初心者の方や、これから株を本気で始めようとしている方にもわかりやすい解説を心がけています。
最新記事
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格など投資の最終決定は、ご自身のご判断で行っていただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証するものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等にはお答えいたしかねますので、予めご了承くださいますようお願い申し上げます。また、本コンテンツの記載内容は予告なく変更することがあります。
お知らせ
» NTTドコモのマネーポータルサイト「dメニューマネー」に記事を提供しています。
dメニューマネー
» 国際的ニュース週刊誌「Newsweek(ニューズウィーク)」日本版ウェブサイトに記事を提供しています。
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
» ニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」に配信中。「経済」「マネー」「株・投資」ジャンルから、かぶまどをチェック!
SmartNews(スマートニュース)
トヨタを買って大丈夫?