2018年に最も読まれた記事 第1位は秘かな大変革が連覇達成
今年10月1日をもって、東京証券取引所に上場するすべての株式の売買単位(単元)が100株に統一されました。銘柄ごとに徐々に進められてきた変更は、大きなニュースにはならずとも、日々の取引には確実に影響を及ぼしました。その証拠として、この記事が当サイトにおいて「今年最も読まれた記事」となりました。しかも、2位以下に大差をつけての連覇達成です。
売買単位が100株に統一! 株価への影響は?
(※編集部注:本記事のもとになっている記事は2017年3月に掲載されたものです)
株式を購入しようと発注する際に、「この銘柄って100株単位? それとも1000株?」と迷った経験はありませんか? 1000株だと最低投資金額が大きすぎて仕方なく断念……なんてこともあって困りますよね。しかし、そんな心配もまもなく不要になります。
なぜ売買単位を統一するのか?
株式の売買単位(単元)は、その株式を取引するときの最低株数で、銘柄ごとに異なります。2017年1月現在では、100株と1000株の2種類のみですが、かつては1株、10株、50株……など、8種類もの単位がありました。
しかし、このように売買単位が何種類も存在する市場は国際的にも稀で、とても使い勝手が悪く、投資家にとっての利便性を低下させる原因となっていました。
売買単位を100株に集約すれば、必要な最低投資金額を把握しやすくなりますし、銘柄同士の比較も容易になります。市場の使い勝手が向上し、国内外から多くの投資資金が入ってきます。また、中長期的には流動性の向上にもつながります。
さらに投資家の立場で言えば、取引を行う際に「100株だけ売却するはずが、1000株売ってしまった!」などの誤発注のリスクが減る、という効果も期待できます。
2018年10月までに100株に統一!
そこで、東京証券取引所をはじめとする全国証券取引所は、2018年10月までに売買単位を100株に統一することとしています。この計画は2007年11月以降、全国証券取引所が「売買単位の集約に向けた行動計画」として進められてきました。
当初8種類あった売買単位も、いまでは1000株と100株の2種類に統一され、2018年10月にはすべての銘柄が100株単位になる、という最終段階まで来ています。東証上場の企業の80.1%が、すでに100株単位へと変更しています(2017年2月1日時点)。
必要資金が10分の1になる?
売買単位がすべて100株になることで、今後、個人投資家にとってどのような影響があるのか、気になりますよね。とくに「株価への影響はどうなるの?」が知りたいところです。
ここで注目すべきは、株を買うときに投資する「必要最低投資金額」がどうなるか、です。売買単位の変更により、1単位あたりの必要最低投資額が小さくなれば、投資資金が少ない投資家でも手を出しやすくなり、流動性が向上し、プラス効果となります。
たとえば、1株の株価が1,000円、売買単位が1000株の銘柄なら、必要最低投資金額は1,000円×1000株=100万円です。この銘柄が、1000株→100株の売買単位の統一を行うと、1,000円×100株=10万円となり、必要最低投資金額が10分の1に下がります。
100万円は無理だけど10万円ならば……と、これまで躊躇していた個人投資家などが新たに買いに入ることが考えられます。その結果として取引量や出来高が増えれば、短期で売買するトレーダーや機関投資家も参入し、より活発な売買が行われるようになります。
このように、流動性が向上することで、株価にはプラスに働きます。企業側にとっても、個人投資家のような中長期保有の株主が増えると株価が安定する、というメリットがあります。
売買単位統一と同時に起こること
以下は、2017月4月に売買単位の統一をした銘柄です。
銘柄名 | 売買単位の変更日 (効力発生日) |
変更内容 | 備考 |
三井金属エンジニアリング | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
コーアツ工業 | 2017年3月29日 (2017年4月1日) |
1000株→100株 | 同時に、株式併合(10株→1株)を実施 |
東京エネシス | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
キッコーマン | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
東レ | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
関東電化工業 | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
ライオン | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
ホソカワミクロン | 2017年3月29日 (2017年4月1日) |
1000株→100株 | 同時に、株式併合(5株→1株)を実施 |
丸山製作所 | 2017年3月29日 (2017年4月1日) |
1000株→100株 | 同時に、株式併合(10株→1株)を実施 |
富士通ゼネラル | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
サンコー | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
扶桑電通 | 2017年3月29日 (2017年4月1日) |
1000株→100株 | 同時に、株式併合(10株→1株)を実施 |
三井不動産 | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
三菱地所 | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
杉村倉庫 | 2017年4月1日 (同上) |
1000株→100株 | |
学研ホールディングス | 2017年3月29日 (2017年4月1日) |
1000株→100株 | 同時に、株式併合(10株→1株)を実施 |
ホウライ | 2017年3月29日 (2017年4月1日) |
1000株→100株 | 同時に、株式併合(10株→1株)を実施 |
太洋物産 | 2017年3月29日 (2017年4月1日) |
1000株→100株 | 同時に、株式併合(10株→1株)を実施 |
変更内容の欄には、売買単位が「1000株→100株」とあり、備考欄を見ると、同時に株式併合(10株→1株 あるいは 5株→1株)が行われる銘柄もあることがわかります。
「株式併合」は「株式分割」とは逆で、2株を1株に併合する、といったケースです。たとえば1000株保有の株主は、2:1の株式併合によって500株保有となりますが、理論上、株価は2倍に調整されるため、併合前後で資産価値は変わりません。
売買単位の統一の推進と同時に、東京証券取引所では必要最低投資金額を「5万〜50万円」とすることを推奨しています。NISAの枠にも収まりやすく、個人投資家が流入しやすいためです。これが、売買単位統一と同時に株式併合を行うか否か、という対応の違いに表れています。
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