「サーキット・ブレーカー制度」とは?
・サーキット・ブレーカー制度[サーキット・ブレーカーせいど/Circuit Breaker]
株式市場や先物取引の価格が一定以上の変動となった場合に、取引を一定時間、強制的に中断する制度。個別銘柄の値幅制限(ストップ高・ストップ安)と近しい制度。
日本では1994年2月14日より、東京証券取引所と大阪証券取引所で導入。先物とオプション取引にのみ適用され、現物株式は対象外となっている。
【概要】
- 金融商品:先物取引
- 発動条件:制限値幅の10%の範囲外で1分間以上推移した場合
*値幅制限は四半期ごとに見直される。2020年3月〜5月の日経225先物の値幅制限は1,870円(詳細はJPXホームページを参照のこと) - 取引中断時間:10分間
- 発動時の制限値幅の上限又は下限の拡大:日経平均先物やTOPIX先物などの主要な先物取引の場合は、12%以上の価格変動。2回目は16%
- 再開方法:取引中断時間を経過後、制限値幅を拡大し、板寄せ方式を行う
【適用除外の条件】
- 日中立会または夜間立会の終了時刻から20分前以降に発動条件に該当した場合
- 日経平均VI先物と配当指数先物を除く先物取引が、同日に制限値幅を2回拡大した後、再度発動条件に該当した場合
- 東証が取引の一時中断を行うことが適当でないと認めた場合
【主な発動事例】
- 2001年9月12日:アメリカ同時多発テロの翌日。アメリカ全土の金融取引が全て中止になり、その他の株式市場が急落。日経平均先物の取引が中断。
- 2008年10月14日:リーマン・ブラザーズ破綻を受けた世界各国と中央銀行の対応策を好感し、株価が急騰。日経平均先物が取引を中断。
- 2008年10月16日:前日のニューヨーク市場でダウ平均株価が史上2番目の下げ幅となり、取引開始直後に日経平均先物の取引が中断。
- 2011年3月14日:東日本大震災を受けて売りが殺到。TOPIX先物が取引を中断。翌日には日経平均先物とTOPIX先物が、それぞれ史上初となる1日で2回の取引中断。
【海外の発動事例】
- 2020年3月9日:新型コロナウイルスの感染拡大および原油価格の急落を受けて、S&P500の下落率が7%に達したことから15分間、取引が自動停止した。2013年の制度導入以来、ニューヨーク市場でのサーキット・ブレーカー発動は史上初。
・短期トレードの現場から一言
サーキット・ブレーカーは、地政学的リスクや金融危機の際の付き物だ。ただし、過去の価格動向を見ると、そう単純ではないことがわかる。
例えば、アメリカ同時多発テロの翌日。日経平均先物は、前日比960円安で寄った直後にサーキット・ブレーカーが発動。取引再開後は、中断前とほぼ同じ価格で始まり、そこから400円ほど上昇。そして、後場には再びサーキット・ブレーカーが発動する水準まで売り込まれることとなった。
サーキット・ブレーカー制度が導入される以前にも、先物取引における値幅制限はあった。1991年1月17日に湾岸戦争が開戦し、その日の日経平均先物は300円安で寄り付いた。しかし、戦争の早期終結への思惑が台頭すると一転、買い気配になり、そのままストップ高まで急騰したのである。
このように、サーキット・ブレーカーが発動したからといって、その方向に全力で資金を投じると、とんでもないしっぺ返しを喰らう可能性もある。誰もが売っているときは売り玉が枯渇しているため次の動作は買い戻すしかなく、その逆もまた然りだ。
*「現場から一言」は、株式市場に真摯に向き合う投資家・トレーダーの視点から、初心者が特に勘違いしやすい側面について、経験を積んだ人々の知見をお届けします。ただし、これは絶対的な「正解」ではなく、あくまで一個人の見解である点にご留意ください。