2020年の株価はどうなる? 子年の株式市場は本当に繁栄するのか
干支で読む、2020年の株式相場
もういくつ寝ると令和も2年目に突入します。東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020年の株式相場はどうなるのか、大いに気になるところですが、株式相場には「アノマリー(Anomaly)」と呼ばれる〝法則のようなもの〟がたくさんあり、日本にはこんな相場格言もあります。
辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる
この干支アノマリーによれば「子は繁栄」、つまり子年(ねずみどし)の2020年の株式市場は「かなりいい感じ」ということになりそうですが、それは本当でしょうか。ここでは未来を予測するのではなく、過去の子年を振り返ることで、来たる新年に思いを馳せてみたいと思います。
2008年(平成20年)──リーマンショック!
- 年始の始値=15,155.73円
- 年末の終値=8,859.56円 −6,296.17円(−58.46%)
日経平均株価がおよそ半値になる大・大・大暴落。「繁栄」どころではありません。
2008年9月15日に、米投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦倒産法第11章の適用を申請し、経営破綻しました。これがいわゆる「リーマンショック」ですが、チャートを見ると、それに呼応するように、日経平均株価も9月末から10月にかけ大幅に下げていることがわかります。
リーマンショックの要因となったのは、返済されるかどうかが怪しい危険な不良債権・サブプライムローンを抱えすぎたせいです。前年の2007年には、フランスの大手銀行がサブプライムローンが組まれたファンドの解約を凍結し、世界中の投資家がパニックになった「パリバ・ショック」も起きています。
つまり、サブプライムローンには「キナ臭い」動きがすでにあったわけですが、ここまで決定的な出来事がない限り株価が下がらないというのは、なかなか興味深いですね。
【2008年の新語・流行語大賞】
- アラフォー
- グ〜!(エド・はるみの一発ギャグ)
1996年(平成8年)──失われた20年の序盤戦
- 年始の始値=19,945.68円
- 年末の終値=19,361.35円 −584.33円(−3.3%)
年の始値と終値で比較しても、また、年内のチャートの動きを見ても「小幅な値動き」にとどまり、「繁栄」感はまったくありません。
この2年前から、「失われた20年」と言われる時代がスタートしています(他の区切り方をする場合もあります)。不景気ではあるのですが、その一方で、ダイエー(現・イオン<8267>)やイトーヨーカドーなどの大手スーパーは、この年から元日営業に舵を切っています。
2019年には「働き方改革」「人手不足」などで元日営業は縮小の流れが進んでいますから、時代の移り変わりを感じます。
【1996年の新語・流行語大賞】
- 自分で自分をほめたい(アトランタ五輪で3位に入賞した有森裕子の言葉)
- 友愛/排除の論理(鳩山由紀夫元首相の政治方針)
- メークドラマ(セ・リーグ大逆転優勝を遂げた長嶋茂雄監督の言葉)
なお、トップ10の中には「援助交際」も入っており、不穏な世相が透けて見えます。
1984年(昭和59年)──バブルが始まる2年前
- 年始の終値=9,927.11円
- 年末の終値=11,542.60円 +1615.49円(+16.3%)
若干夏ごろに沈んでいますが、日経平均株価はおおむね右肩上がり。年始から年末までの値上がり率は16.3%と、まずまず「繁栄」と言っていい一年ではないでしょうか。トヨタ自動車<7203>が製造業としては日本初の「売上高5兆円企業」となったのも、この年からです。
『現代用語の基礎知識』が発表する「新語・流行語大賞」はこの年からスタート。大賞にあたる金賞は「オシンドローム」。NHK朝の連続テレビ小説『おしん』への熱狂ぶりが伝わる言葉です。貧困の中を生きぬくヒロインの物語ですが、放送されていたのはむしろ、しっかり好況な時代だったのです。
1972年(昭和47年)──懐かしき繁栄の日々
- 年始の終値=2,712.31円
- 年末の終値=5,207.94円 +2495.63円(+92.0%)
株価がおよそ倍になるという、まさに「繁栄」の一年でした。チャートを見ても大きな崩れはない、きれいな右肩上がりです。
連合赤軍による「あさま山荘事件」など物騒な出来事もありましたが、経済的には順調で、札幌、福岡、川崎の各市が政令指定都市になり、人口増や都市の繁栄、ひいては日本経済の繁栄が偲ばれます。
ちなみに、低価格家具で一世を風靡している「ニトリ」のニトリホールディングス<9843>は、この年に創業しています。結構老舗なんですね。
1960年(昭和35年)──岩戸景気、絶賛進行中
- 年始の終値:869.34円
- 年末の終値:1,356.71円 +487.37円(+56.1%)
戦後の高度成長期の中でも特に長く続いた「岩戸景気」(1958年7月~1961年12月)の真っ最中だったこの年。株価も年間で56.1%増と、こちらも「繁栄」を絵に描いたような一年でした。
安保闘争が激化するなど国政は混乱もありましたが、その一方で、カラーテレビの放送が開始した年でもあります。世界に目を向けると、トーゴやコンゴが西欧諸国から独立するなどの動きがありました。
子が繁栄したのは昔の話?
リーマンショックが大爆発した2008年、失われた20年が始まったばかりの1996年、バブル2年前でおおむね堅調な1984年、日経平均倍増の絶好調1972年、岩戸景気でテレビで株価も好調の1960年……
過去5回の子年の日経平均株価の推移を見てみると、総じて「繁栄」とまとめるにはとても無理があることよくがわかります。アノマリーとして成立しているのは1984年までの〝過去〟のお話、と言うことができるのかもしれません。
相場が小幅な値動きをしようと、大幅な値動きになろうとも、どちらもうまく乗りこなすために必要なのは、アノマリーではなく、自分だけの確固とした投資判断です。2020年こそ、自らの手で「繁栄」を造り出したいものですね。