戌年は投資家が笑う? いろいろあった過去の戌年をプレイバック

網代奈都子
2018年2月7日 8時00分

相場格言が伝える干支と株価の関係

日本には、干支と株価の関係を示唆する、次のような相場格言があります。

辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる

「ほんと?」と思う人も多いでしょうが、こういった、法則と呼ぶには少々あやふやなジンクスを「アノマリー(Anomaly)」と言います。長年、株をやっている人なら、さまざまなアノマリーを耳にしたことがあるでしょうし、それをもとに売買をしたこともあるかもしれません。

この干支アノマリーによれば「戌笑う」、つまり戌年の2018年は投資家がニコニコ笑顔になるはずですが、果たしてどうなるでしょうか。ここでは未来を予測するのではなく、過去のデータに学ぶ道を選びたいと思います。1970年(戌年)以降の戌年における日経平均株価の推移を見てみましょう。

2006年(平成18年)──リーマンショックの2年前

  • 年始の始値=16,294.65円
  • 年末の終値=17,225.83円(+931.18円

5月からのゆるやかな下落には明確な理由はなく、中東情勢に対する危機感が強まったことで、日本に限らず多くの国で株安が進んでいました。年間を通して931円(+5.7%)の値上がりなので、投資家としてはまずまず笑顔の一年というところでしょうか。

国内では、第3次小泉内閣が終わって第1次安倍内閣が誕生。有効求人倍率では、リーマンショック(発端は2008年9月)の前の、ちょっといい時期でした。

【2006年の新語・流行語大賞】

  • イナバウアー
  • 品格

藤原正彦氏の『国家の品格』が爆発的に売れたことで、「品格」という言葉が広まった年でした。流行語大賞に選ばれた背景として、公式サイトでは「『儲かれば何でもよい』というマネーゲーム全盛の世の中に一石を投じ」たと紹介されています。

1994年(平成6年)──失われた20年の始まり

  • 年始の始値=17,421.64円
  • 年末の終値=19,752.98円(+2,331.23円

いわゆる「バブル景気」は一般的に1986~1991年の間を指し、そこから1993年10月までが「バブル崩壊」とされています。つまり、この1994年はバブル崩壊の混乱が収束し、のちに「失われた20年」と言われる時代がスタートした年です(他の区切り方をする場合もあります)。

日経平均株価も、バブル崩壊に伴う暴落から戻し始め、前年に続いて、年始から値上がりして年を終えています。後半は下がり基調になったものの、年始と比べれば+2,331円(+13.4%)で終わり、投資家たちもようやく笑って過ごすことができたのではないでしょうか。

政界では細川内閣→羽田内閣→村山内閣と首相が3人も変わった、慌ただしい一年でもありました。

【1994年の新語・流行語大賞】

  • すったもんだがありました
  • イチロー
  • 同情するならカネをくれ

バブルの象徴である「ジュリアナ東京」もこの年に閉鎖。一転、「同情するならカネをくれ」な時代になっていくのです。ちなみに「すったもんだがありました」は、女優・宮沢りえが貴乃花との破局後、焼酎のコマーシャルでつぶやいたセリフ。

1982年(昭和57年)──バブルが始まる4年前

  • 年始の始値=7,675.26円
  • 年末の終値=8,016.67円(+341.41円

株価は2月から下がり始め、戻ってはまた下がる……を繰り返した一年。しかし、10月に入ってからは上がり基調に転じ、この年の最高値に近づく勢いで終わりました。安堵の笑みとともに年越しを迎えられた投資家も多かったかもしれません。

一年を通した値上がり額は341円ですが、株価が1万円未満の時代なので、値上がり率としては2006年と近い+4.4%です。

【1982年の流行語】

この年に流行った言葉は「ネクラ」。また、東北新幹線、上越新幹線が開通した年でもあります。ちなみに『現代用語の基礎知識』が発表する新語・流行語大賞は、2年後の1984年にスタート。

1970年(昭和45年)──いざなぎ景気の終焉

  • 年始の始値=2402.85円
  • 年末の終値=1987.14円(−415.71円

東京オリンピック開催の1965年から続いた高度経済成長時代、いわゆる「いざなぎ景気」の最終年度となった年です。4月後半に大きく下げて以降は小幅な値動きに留まり、年末にかけてはさらに下がっていきました。

最終的には、年始と比べて−415円。株価がまだまだ低いため、率にすると−17.3%の下げとなりました。さすがにこの年は、多くの投資家から笑顔が消えたことでしょう。

【1970年の流行語】

女性開放を求める「ウーマンリブ」が流行語になる一方、学園紛争などが沈静化し、「シラける」という言葉が流行った時期でもありました。また3月から9月にかけては、アジア初(もちろん日本初)で当時史上最大規模の国際博覧会(大阪万博)が開催されています。

笑う人あれば泣く人あり

一部の人がマネーゲームに熱狂し始めた2006年、バブルの残り香がいよいよ消えた1994年、数年後にバブルが訪れる1982年、いざなぎ景気の終焉を見届けた1970年と、年によって経済の動向は当然異なり、日経平均株価の値動きもそれぞれ異なっています。

とはいえ、4回のうち3回で年始よりも高値で終わったことからすると、アノマリーとしての「戌笑う」は成立している?と言ってもいいのかもしれません。もちろん、もっと多くの戌年を調べてみれば、また違った結果になる可能性はあります。

笑った人がいれば、その反対側には必ず泣いている人が存在するのが株の世界。戌年にかぎらず「笑う側」になるためには、“法則らしきもの”に頼らない投資判断を身につけましょう。

[執筆者]網代奈都子
網代奈都子
[あじろ・なつこ]30代OL。仕事のかたわらトレードを行っており、そのスキルを磨くべく日々勉強中。目下の目標は年間の利益100万円。安定した利益を出し、ペット可物件に引っ越すのが夢。
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