新年度と決算発表でにぎわう4月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去からひもとく4月の株式相場の特徴とは?》
4月は新規資金が入りやすい?
新年度入りとなる4月は、国内の機関投資家などの買いが入りやすいと言われています。
機関投資家は3月末などの年度末や四半期ごとの運用成績を顧客に細かく開示する必要があるため、3月末でいったんポジションを手仕舞った後、4月に入ってから再度買いを入れるという形をとることから、新たな資金が流入しやすいというわけで。
参考までに、東証が開示している月間の投資部門別売買状況を見てみると、2020年4月は、東証1部(当時)全体では975億円の買い越しとなっていました。内訳を見ると、海外投資家が7612億円の売り越し、個人は14億円の売り越しであったのに対して、法人は5760億円の買い越しでした。
この「法人」には事業法人や金融機関、投資信託などが含まれており、特に事業法人や金融機関などが買いを入れていたようです。
また、アメリカでは年明けから4月ごろまでが確定申告シーズンとなり、申告による還付金が個人に順次振り込まれるため、4月から5月にかけては還付金の流入が期待される、というアノマリーも伝わっています。
4月の日経平均株価は上がりやすい?
次に、4月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。ここでは日経平均株価に関するさまざまなデータを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。
戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率を確認してみると、4月で最も上昇する確率(=勝率)が高いのは「18日」で63.64%。反対に、4月で最も日経平均株価が上昇する確率が低かったのは、「20日」の42.86%となっています。
2000年からの月間の騰落状況を見てみると、3月末比で上昇したのは13回、下落が9回で、上昇した年のほうが多い結果となりました。月間の上昇率が最も高かったのは2013年の4月で、月間で11.8%も上昇しました。
この背景には、2013年4月4日に日銀が決定した、俗に「異次元緩和」と呼ばれる量的・質的緩和の導入があります。これにより株高・円安が加速しました。
前年の2012年の秋には民主党政権から自民党・安倍政権へと移行し、「アベノミクス相場」がスタートしていましたが、日銀の決定によってさらに上昇に拍車がかかった時期でもありました。
もっとも、2000年からの月間騰落率(上昇率)を平均してみると1.5%です。したがって、過去のデータから見ると、4月相場は上昇する確率(勝率)が高いものの、それは緩やかな上昇となる可能性が高い、という見方ができるかもしれません。
直近の4月の日経平均株価は?
それでは、最近の4月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2019年4月の日経平均株価
2019年4月の日経平均株価は月間で5.0%上昇しました。
この年は、30年続いた「平成」の時代が4月で幕を閉じ、5月から新たに「令和」の時代が始まった年でもあります。株式相場では、2018年にかけて激化したアメリカと中国の貿易摩擦への懸念が後退し、年初からの上昇基調が続いていました。
・2020年4月の日経平均株価
2020年4月の日経平均株価は月間で6.7%上昇しました。
この年は、年初から海外で新型コロナウイルスの感染が本格化し、世界的な株安基調が続きました。国内でも、2月に横浜でクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の集団感染が確認され、感染が拡大。日経平均株価も、3月にこの年の安値となる16,652円を付けるなど売りが広がる展開でした。
4月7日には史上初となる緊急事態宣言が発令されて、一層の警戒感が広がりましたが、株式市場では割安感から買い戻しが優勢となり、結局、2020年4月の日経平均株価は上昇して終わりました。
・2021年4月の日経平均株価
2021年4月の日経平均株価は月間で1.3%下落しました。
この年は、コロナ禍からの回復期待が先行し、2月には31年ぶりに日経平均株価が3万円の大台を回復して節目を突破しましたが、その後は上値を抜けきれず、3万円を手前に一進一退の展開となりました。もっとも、下値では増配や自社株買い、後述する企業決算への期待が相場を下支えしました。
過去3年間で見ると、日経平均株価の勝敗は2勝1敗とまずまずの成績です。2020年はコロナによる株安局面という特殊要因もありましたが、総じて、年初からの堅調な相場展開が続きやすいと言えるのかもしれません。
ただ、今年はまたウクライナ情勢という波乱要因が台頭していることもあり、市場参加者の心理は例年よりも慎重になっている点は考慮すべきでしょう。
決算発表で株価はどうなる?
4月は、下旬にかけて3月期決算企業の本決算が相次ぎます。
3月期決算企業の場合、前年4月から当年3月末までが決算対象期間となるため、3月末で締めた本決算が4月中旬あたりから続々と発表され、決算発表の一大シーズンを迎えます。
上で紹介した日別の騰落率でも、4月で日経平均株価が上昇した確率が最も低い(=最も株価が下がりやすい)日である「20日」は、決算発表シーズンを目前に控えた時期であることから、決算発表前で積極的な買いを控える動きが反映されているのかもしれません。
そんな決算発表で注目されるのは、前期の決算の着地もさることながら、会社が出す今期の業績見通しです。
年明けくらいからアナリストたちによる業績予想が発表され、市場予想(コンセンサス)が形成されていきます。そして、この決算発表時に、会社の業績見通しとアナリストコンセンサスとの「答え合わせ」が行われ、それによって株価が大きく反応するケースもあります。
決算発表シーズンに注目を集める2銘柄
・安川電機<6506>
3月期決算企業の決算発表ラッシュが始まる半月ほど前、日本の製造業の先行指標として毎年注目される企業の決算発表があります。
それが安川電機<6506>の決算発表です(同社は2月期決算)。安川電機は、半導体や自動車、精密機械の生産工程に使われる回転動作を精細にコントロールできるサーボモーターやロボットなどを手がけています。
ハイテク製品の生産に必要不可欠な製品を手がけていることから、この安川電機の決算で開示される四半期ごとの受注動向が重要視されるのです。また、中国などアジア向けの売上高比率が高いこともあり、中国などの景気動向を占う先行指標としても用いられています。
今年の安川電機の決算発表は、4月8日(金)に予定されています。
・日本電産<6594>
いよいよ3月期決算企業の決算発表シーズンを迎えると、例年、序盤で決算を発表するのが、小型モーターで世界最大手の日本電産<6594>です。
自動車やハードディスクドライブなど向けの小型モーターを世界各国で手がける日本電産の業績見通しは非常に精度が高いとして、安川電機と同じく製造業などの業績の方向性を確認する上で参考にされています。
今年の日本電産の決算発表は、4月21日(木)15時15分に予定されています。
日米の決算発表で個別物色が強まる
海の向こうのアメリカでも、4月中旬から四半期決算の発表が始まります。これらの動向も、日本株市場の投資家心理に影響を与えることが多くあります。
こうしたことから、4月中旬から5月のゴールデンウィーク明けにかけては、日米で決算を材料とした個別物色の動きが強まりやすい時期となっています。
傾向を知れば対策がわかる?
日経平均株価のデータを軸に、4月相場の特徴をいくつかご紹介しました。
ちなみに今年(2022年)に4月に限っていえば、4日に東京証券取引所の市場区分の変更が行われました。東証1部やマザーズなど4つの市場が新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編されましたが、このことが直接的に株価に影響することはないと考えられます。
近年のコロナ禍に引き続き、今年はウクライナ情勢によって先行き不透明な部分もありますが、4月がどんな季節なのか、4月の株式市場では例年どんなことが起こっているのかといった傾向を理解しておけば、今年の相場展開の予測や対策にも一役買ってくれるでしょう。
もちろん、これらのデータやアノマリーは、あくまでも過去の事例や経験則に過ぎません。とはいえ、市場参加者の投資心理に一定の影響を与えていることは確かですので、ぜひともご自身の投資判断の参考にしてみてください。