4月・5月の相場はどうなる? 新年度相場でトレーダーが意識すること

山下耕太郎
2020年4月13日 8時00分

4月はマーケットが動きやすい?

ゼロから再出発のディーラー勢

4月相場は、新年度入りで動きやすい」という法則があります。その理由のひとつに、証券会社のディーラーの事情があります。証券会社は3月が決算なので、4月はゼロからのスタートになります。ここから9月までの半年間の収益が、12月のボーナスにつながるのです。

また、契約ディーラーは3カ月更新の場合が多く、4~6月期は大切なスタートでもあります。日計りしか認められていないディーラーは、3月末にポジションを持ち越せないことも多いので、毎年4月に利益やポジションがゼロの状態から始まります。

要するに、3月までに億単位の利益を出していても、1円の貯金にもなりません。そこが、個人投資家と大きな違いです。そこで4月は心機一転し、積極的に取引を行う傾向があるのです。

また、国内の機関投資家も3月が決算になっているため、4月から新資金が動くことも相場を活気づける要因のひとつと言われます。また、4月は株式市場だけでなく、外債投資などで円安が進みやすい月でもあります。

・過去3年の4月の日経平均株価とドル円

月半ば以降は決算見極め態勢に

ただ、4月の半ばからアメリカ企業の決算が始まるので、買いの勢いは衰えます。決算内容を見極めようという動きになるからです。2020年も、4月14日から決算が本格化します。

JPモルガンやゴールドマン・サックスなどの金融株、マイクロソフトやアルファベット(グーグル)などのハイテク株は、ニューヨーク市場に大きな影響を与えます。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で企業業績の悪化が予想されており、どの程度マーケットに織り込まれているかが注目です。

さらに、4月下旬からは日本企業の決算発表が本格化します。しかも、5月にかけてゴールデンウィークを控えているので、ポジションを大きく持ち越すことは困難です。日本の長期の連休は、円高に仕かけられることも多く、株価も軟調になる傾向があります。

アメリカ個人投資家の懐事情

アメリカの個人投資家たちは、12月に株式などで損失確定の売りを出し、年間所得を調整します。そして、翌年の1月半ば頃から総合課税の還付を請求。源泉徴収されて払いすぎていた分は2月から5月にかけて還付されます。

また、追加納税が必要な人は、4月15日までに確定申告をする必要があるので、3月までに株を売って資金を用意すると言われています。アメリカの還付金は約30兆円と巨大で、この資金が4月から5月にかけて投資を活発化させると言われています。

5月は「セル・イン・メイ」?

アメリカ市場のアノマリーに「セル・イン・メイ(Sell in May)」という有名なものがあります。「株を5月に売れ」という意味で、たしかに、ダウ平均株価は5月頃に高値をつけ、夏場にかけて下げるという傾向があります。

5月に高値をつけやすい理由のひとつに、ヘッジファンドの「45日ルール」があります。海外の機関投資家は6月と12月末の決算が多く、ヘッジファンドでは、顧客がファンドを解約するには、決算日の45日前までに申し出ないといけないというルールがあるからです。

つまり、6月末決算のファンドの場合、45日前である5月中旬までに解約の申し入れをしないといけないのです。一方でファンド側は、解約に備えて換金しないといけないため、5月中旬までに資金を用意しておかなければいけません。

ただ、これは以前よく言われていたルールで、最近は45日ルールに縛られずに解約できるファンドも増えています。そのため、以前のような影響力は薄まっていると考えられます。

しかし、このようなルールをきっかけに仕掛け的な売りが出てきやすい、という傾向は現在でもあります。5月中頃には決算も一巡するので、手がかり材料が少なくなる時期なので商いも薄くなります。その隙間をついて、投機筋が仕掛けてくる可能性があるのです。

・過去3年の5月の日経平均株価とダウ平均株価

相場のパターンを理解する

4月は新年度相場入りで、証券ディーラーや機関投資家は積極的に新規投資を行います。ただ、半ば頃からはアメリカや日本の決算発表シーズンに入るため、その内容を睨みながらの相場展開になることが予想されます。

4月は比較的相場環境がいいものの、5月には日本で大型連休を控えていることや、アメリカでは「セル・イン・メイ」というアノマリーもあるように、ポジションの持ち越しには注意が必要です。

また、日経225オプションのSQ(特別清算指数)算出日は毎月第2金曜日。ここを通過すると相場の流れが変わることも多いので、きちんとリスク管理する必要があります。

証券会社のディーラーや機関投資家の動きは、個人投資家からはなかなか見えにくい部分ではありますが、相場には少なくない影響を与えます。過度に敏感になるというよりも、こうした動きのパターンがあることを理解しておくことで、相場の流れを理解しやすくなるでしょう。

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[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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