8月の株価はどうなる? 猛暑か、冷夏か。夏枯れ相場で急騰する銘柄とは
そろそろ夏休みに突入。長雨が続いて涼しい2019年夏ですが、例年、夏の株式市場も参加者が減って冷気が漂いがち。そんな相場で注目すべきはどんな銘柄でしょうか。また、人が少ないからこそ気をつけるべき注意点とは。気になる猛暑で上がる銘柄・冷夏で上がる銘柄もご紹介します。
8月は「夏枯れ相場」
8月の株式市場は、一年のうちで最も株価が下がりやすい月といわれています。
海外の機関投資家がバカンスに入り、国内の機関投資家や個人投資家もお盆休みに入ります。市場参加者が極端に減り、売買が細り、閑散相場となりやすい……というのが、この時期の相場の特徴といえます。
加えて8月は、為替相場が円高の方向に振れることが多くなります。JPX日経400の銘柄入れ替えをもとにした値動きや、天候次第で猛暑関連銘柄もしくは冷夏関連銘柄を物色する動きにも注目が集まります。
真夏の相場が寒くなる理由
8月は、外国人投資家が過去9年連続で日本株を売り越している月です。
欧米の投資家は長い夏季休暇を取るために、休み前に保有株の一部を整理するなど運用もお休みモードとなります。また日本の個人投資家もお盆休み入りとなり、一旦手仕舞い(保有しているポジションを決済して現金化すること)をする傾向にあります。
こうした動きは、休み中に思わぬハプニングが起こって損失が出るのを防ぐためのリスク回避策です。
そして、このようにしてマーケットの参加者が極端に減るため、8月の株式市場は、値動きも取引高も少ない薄商いの状態に陥るのが恒例です。これが「夏枯れ相場」と言われる状態です。
加えて、7月下旬から8月にかけては、3月期決算企業の第1四半期決算ラッシュとなるため、決算の結果待ちの買い控えも起きてしまう傾向にあります。
事件は夏休みに起こる……?
過去を振り返ると、8月は経済的・軍事的な事件が発生しやすい月でもあります。
2017年には北朝鮮のミサイル発射による株安となり、2018年にはトルコリラが急落してアメリカやヨーロッパの株価が急落、日本も一時的に株価が大きく下落しました。
参加者が少ないところに突発的な事件が起こると値動きが荒くなり、急落する可能性もあります。2019年も、日米貿易交渉や米中貿易摩擦、イラン情勢の行方など懸念材料が多く、夏枯れ相場とはいえ、警戒心を持って臨む必要がありそうです。
(Chart by TradingView)
夏枯れゆえの円高にも要注意
円高になりやすいのも8月の特徴です。
8月は例年アメリカ国債の大型償還があり、また、利払いで受け取ったドルを日本の機関投資家が円に替えるため、円買い・ドル売りになりやすいのです(円が買われるので円高になる)。
加えて、日本国内の輸出企業が、お盆休みの前にドル売り・円買いの予約を増やすことが多くあり、カレンダー的に需給面で円高に振れやすく、ドルが上がりにくいという側面があります。バカンス入りで市場参加者が少ないため、ヘッジファンドの仕掛け的なドル売り・円買いが多くある時期でもあります。
輸出企業の多い日本にとって円高は悪材料。そのため資金が大型株に向かいにくく、日経平均株価が急落する可能性もあります。さらに経済的・軍事的な事件が発生すると円高になりやすいため、その際には値動きの荒い展開となるかもしれません。
こうしたことから、夏の個人投資家の関心は中小型株に向けられ、仁義なき〝ゲリラ戦〟が活発化する傾向にあります。為替の動きとともに、短期的な値動きにも注視したいところです。
(Chart by TradingView)
株式市場の「夏フェス」
毎年8月の恒例イベントとして、JPX日経400の銘柄入れ替えがあります。
JPX日経400(JPX日経インデックス400)とは、ROE(自己資本利益率=株主資本に対してどれだけ利益を生み出したか)の高さなどを考慮して選ばれた優良企業400社で構成されている株価指数です。
資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした、「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数を創生します。これにより、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業価値向上を促し、株式市場の活性化を図ります。(日本取引所ホームページより)
構成銘柄の入れ替えに伴い、JPX日経400に連動するファンドは、指数と同じ値動きを実施するために、ファンドに組み入れている銘柄を入れ替える必要が生じます。
そのJPX日経400連動ファンドは複数の年金基金が運用対象としており、また、JPX日経400に連動するETFは日銀の資産購入対象となっています。そのため、これらの銘柄入れ替えが株式市場に与える影響は大きく、投資家の関心が高いイベントなのです。
(Chart by TradingView)
入れ替えで上がる銘柄・下がる銘柄
どの銘柄が新たに採用・除外されるのか、発表前には証券会社などの予想が出され、それをもとに売買する動きが見られます。そして発表後は、新規採用銘柄は利益確定の売りで下落傾向となり、一方で除外銘柄は、悪材料出尽くしで上昇しやすい傾向にあります。
2019年は、8月7日に新規採用・除外銘柄が発表され、29日に入れ替え実施となっています。
新規採用銘柄には、シャープ<6753>や日本マクドナルドホールディングス<2702>など業績の回復が堅調な企業が、除外銘柄には、施工不良問題が露呈したレオパレス21<8848>や、カルロス・ゴーン前会長事件の日産自動車<7201>などが、候補として挙げられています。
猛暑か、冷夏か。それが問題です
8月になると花粉症関連銘柄が意識され始めます。
え? 夏なのに花粉症? と思ったかもしれません。実は、猛暑の翌年は花粉の飛散量が多くなると言われています。夏に存分に日光を浴びたスギはグングンと成長し、翌年春には大量の花粉をつけます。一方、冷夏で日射量が少ない夏を過ごすと雄花が少なくなり、翌年春の花粉量が少なくなるのです。
日本人の2割以上が苦しんでいると言われる花粉症のマーケットは大きく、毎年1〜3月になると、多くの人が、マスクや鼻炎薬、目薬、ヨーグルト……といった花粉対策グッズを手放せなくなります。それらは当然、飛散する花粉の量が多いほど需要が高まります。
つまり、猛暑であればあるほど、「翌年の花粉の量は増える」→「花粉対策グッズが売れる」→「関連銘柄の株価もアップする?」と期待できるわけです。
このことは株式市場では広く知られていますので、常に先読みして売買する投資家は、8月から関連銘柄の物色を始めます。年明けの花粉の季節に購入しても時すでに遅し。高値掴みとなる可能性がありますので、狙うなら猛暑のさなかに仕込んでおくのが得策です。
【代表的な花粉症関連銘柄】
- ユニ・チャーム<8113>……マスク市場で国内シェアトップ
- 森永乳業<2264>……花粉症の症状を抑える効果がある乳酸菌やビフィズス菌の商品を販売
- ロート製薬<4527>……花粉対策目薬
- 鳥居薬品<4551>……スギ花粉症薬
- 小林製薬<4967>……洗眼液や鼻洗浄液など数多くの花粉症対策グッズを手がける
- ウエルシアホールディングス<3141>……ドラッグストア「ウエルシア薬局」を展開
涼しい夏に熱くなる銘柄たち
気象庁が6月25日に発表した3か月予報では、2019年の8月は気温・降水量ともにほぼ平均並みの見込み……となっていますが、なかなか明けない梅雨の影響で、すでに日照不足や低温の影響が心配されています。
冷夏となれば、当然、猛暑とは別の銘柄群が注目を浴びます。記録的な大冷夏となった1993年には、「平成の米騒動」といわれた米不足によってヤマタネ<9305>が急騰しました。この経験則から、ヤマタネや木徳神糧<2700>などの米関連企業が冷夏関連銘柄として脚光を浴びそうです。
(Chart by TradingView)
また、生鮮野菜の価格上昇に伴ってニチレイ<2871>やマルハニチロ<1333>などの冷凍食品メーカーや日清食品ホールディングス<2897>など即席麺メーカー、屋内レジャー関連でラウンドワン<4680>や映画配給大手の東宝<9602>なども物色対象となるかもしれません。
猛暑になるせよ冷夏になるにせよ、あるいは「平年並み」の夏になった場合でも、株式市場には様々な「連想ゲーム」があり、それをいくつ知っているかが、急騰する可能性を秘めた銘柄を見極めるヒントになります。
夏を満喫する秘訣
夏枯れ相場となる8月は、市場参加者が少ないために突発的な株価変動が起こりやすくなります。閑散としているからといって気を抜かず、想定外の急落に見舞われないよう注意したいものです。
それじゃあ夏を満喫できない……と思った方には、こんな相場格言があります。
休むも相場
夏休み明けの新たな相場の流れが来るまで無理な売買を行わないことは、賢い策と言えます。少し距離を置いてみることで、相場を冷静に見つめ直す機会にもなるでしょう。
もちろん、アクティブな夏を過ごす選択肢もあります。第1四半期の業績が良かった銘柄をピックアップしておいて急落時にすかさず買いにいくもよし、腕に自信があるなら中小型株のゲリラ戦に参加するもよし、JPX日経400の入れ替えや夏の連想ゲームに挑戦してみるのもいいでしょう。
いつもと違った夏の過ごし方をすることで、投資家として一皮むけるチャンスになるかもしれません。