あの人も使っている「バイ・アンド・ホールド戦略」 落とし穴にはご用心

榊原佳子
2024年10月8日 10時00分

初心者からベテランにも愛される投資戦略

バイ・アンド・ホールド」という投資戦略をご存じでしょうか。とてもシンプルながら、さまざまな投資法と組み合わせることができる戦略として、初心者からベテランにまで実践されています。

バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)とは、簡単に言ってしまえば、株式や投資信託などの金融商品を一度購入したら、長期間にわたりそのまま保有し続ける投資戦略です。日本語では「買い持ち」とも呼ばれます。

この戦略では、株価や基準価格の変動に一喜一憂することなく、株式市場や企業が長い期間をかけて成長していく流れにのって含み益を増やすことを目指します。

銘柄の入れ替えや各金融商品の組入比率の見直しなど、中級者向けのリバランスをする必要がないことから、初心者も実践できるシンプルな戦略といえるでしょう。

バイ・アンド・ホールドのメリットとデメリット

バイ・アンド・ホールドの最大のメリットは、投資判断の頻度が少なく、手間がかからないことです。長期にわたって金融商品を保有するので、市場成長の恩恵を受けやすく、複利の力を活かすことができます。配当を再投資に回せば、利益がより大きくなることも期待できます

一方で、デメリットもあります。最も大きな点としては、市場の急激な変動に対応できないため、一時的に資産が大きく減少するリスクがあります。

また、これから成長が見込める、長期保有するのにふさわしい株式や投資信託を選ぶ必要があるため、慎重なリサーチが必要となります。最初の銘柄選びが、バイ・アンド・ホールドが成功するか、それとも含み損になってしまうの分かれ目だといっても過言ではありません。

バイ・アンド・ホールドのはじめ方

バイ・アンド・ホールドの成功には、長期にわたり安定した成長が見込める銘柄選定が必須です。

よく選ばれるのは、大企業や成長性の高い業界です。反対に、バイ・アンド・ホールドに適さないといわれているのは、業績のよくない企業はもちろんですが、そのほかにも鉄鋼、化学、紙パルプといった素材産業や工作機械の設備投資に関する産業など、いわゆる「景気敏感株」の業界です。

「株式市場は、長い目で見れば成長していく」というバイ・アンド・ホールドの考えに従うなら、基本的に、購入タイミングを気にする必要はありません。とはいえ、なるべく割安な時期に狙った銘柄を購入できれば、より利益を出せる可能性が高まるでしょう。

バイ・アンド・ホールドの心構え

とてもシンプルな投資戦略であるバイ・アンド・ホールドですが、その成功には、一時的な株式市場の変動に左右されない〝強いメンタル〟が必要です。

たとえば、今年8月2日から6日にかけて記録的な大暴落と大暴騰がありました。このとき、暴落に耐えられず売却してしまった人もいれば、含み益の大幅減少で不安になった人もいるでしょう。しかし、長期保有を大前提とするバイ・アンド・ホールドでは、こうした場面で慌てて動いてはいけません。

急落や急騰が起きても冷静でいることがバイ・アンド・ホールドの鍵となります。

バイ・アンド・ホールドを活かした投資法

バイ・アンド・ホールドは、バリュー投資やグロース投資と組み合わせることができ、それぞれ異なるメリットがあります。

バリュー投資は、市場価格が企業の実際の価値よりも低く評価されている銘柄に投資する手法です。割安な時期に購入しておき、時間と共に株式市場がその企業の真の価値を認識し、株価が上昇するまで、保有し続けます。

グロース投資は、企業の売上や利益が高い成長率を示している銘柄に投資する手法です。テクノロジーや医療などの成長産業の株式が多く、短期的には大きな株価変動があっても、長期的には大きな利益を目指して、保有し続けます。

こうして見てみると、バリュー投資もグロース投資も、ほかの投資家よりも早い段階で優良銘柄を見つけ購入しておき、十分な利益が出るまで株式を保有し続ける、バイ・アンド・ホールドに基づいた投資法だということがわかるのではないでしょうか。

ほかにも、初心者によくおすすめされる投資法、インデックス投資やドルコスト平均法(積み立て投資)もバイ・アンド・ホールドの投資戦略を活かしています。

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あの人もバイ・アンド・ホールドを愛用

世界的に有名な投資家、ウォーレン・バフェット氏の投資スタイルにもバイ・アンド・ホールドが含まれています。

成長が見込める企業の株を厳選し、一度購入したら長期間にわたって保有し続けることで、時間を味方につけて資産を増やすのが、バフェット氏の投資スタイルです。また、バリュー投資とグロース投資も、バフェット氏が得意とする投資法です。

初心者にとって始めやすいバイ・アンド・ホールドは、ベテラン投資家から「投資の神様」にまで親しまれている投資戦略なのです。

ほったらかし投資は最初が肝心

バイ・アンド・ホールドはとてもシンプルです。長期的な視点に立って、短期的な価格変動に惑わされることなく、金融商品を保有し続ける戦略です。「買ったあとはほったらかし」と考えれば、手間要らずで、誰でも始めやすい投資スタイルだといえるでしょう。

ただし、銘柄選定が適切かどうかで成功と失敗に大きく分かれる点は注意しなければいけません。要するに、最初が肝心。銘柄を間違ってしまえば、いつまで経っても食べ頃にならない〝塩漬け株〟となってしまう危険性をはらんでいます。しっかりとリサーチして、慎重に銘柄を選ぶようにしましょう。

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[執筆者]榊原佳子
榊原佳子
[さかきばら・よしこ]ライター、個人投資家。名古屋大学大学院修了後、大手出版社とIT企業で編集者として勤務したのち、フリーランスに。社会人1年目から株式投資を始め、投資歴は10年以上。株を通して経済や国際などの時事・歴史に関心が広がり、さらに株の世界にのめり込む。
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