12月の株価はどうなる? 年末株高に向けた注意点と上昇しやすい銘柄
《12月はクリスマス、1月はお正月、2月はバレンタインデー……と、月によって誰もが思い浮かべる共通のイメージがあるように、実は、株式投資にも「◎月といえば▲▲▲株」といったお決まりの銘柄があります。では、師走12月に恒例の上昇しやすい銘柄とは?【今月の株価はどうなる?2024】》
12月に上昇しやすい銘柄は?
12月は月末に向かって株価が上昇しやすい月です。前半は日米ともに節税対策の売りが出やすく、後半は年末高に向けて上昇しやすい、という傾向があります。
そんな12月相場で株価が上昇しやすいのは、どのような銘柄でしょうか?
過去10年で、12月の勝率が高かった銘柄を調べてみました。5勝5敗という互角の成績だった日経平均株価よりもパワフルな成績を出した銘柄を見ると、保険、建設、食料品、小売、電気機器、不動産、など多彩な顔ぶれが並んでいます。
12月のアノマリーで上がる株
12月に強い銘柄として知られているのが、MS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725>です。国内損害保険事業を基軸とする大手の保険持株会社で、「三井住友海上」や「あいおいニッセイ同和損保」などを傘下に持っています。
過去10年の成績は9勝1敗。前月比の騰落率は2020年が+3.5%、2021年が+7.03%、2022年が+3.03%、2023年は0.23%で、いずれも好成績をマークしています。
この株価上昇のポイントとしては、中間決算の決算発表と12月の特有の理由があげられます。
同社は11月下旬に中間決算の決算発表を行いますが、業績好調や増配発表などが高く評価され、株価上昇につながっています。本年も11月19日発表の中間決算で経常利益を3%上方修正するなど、2期連続での過去最高益予想をさらに上乗せしています。
また、2024年は3月に日銀がマイナス金利を解除し、ついに日本も「金利のある世界」へと大転換した年。保険業は銀行業と並んで金利上昇によるメリットが大きい業種でもあります。
同社は主力の国内損保事業が堅調で、成長ドライバーである海外事業も好調。加えて、政策株式の一部持ち合い解消による利益上乗せや増配期待もあります。
さらに、高配当株、連続増配株としての顔も持ち、2013年3月期から2024年3月期までの11年の年間配当伸び率は、1株あたり54円から240円へと4.4倍に増加。2024年4月には1:3の株式分割も行いました。
NISAで持ちたい株としても名前がよく上がるなど、投資家の評価が高い銘柄として知られているMS&ADですが、毎年のように行われる自社株買いやNISAの駆け込み買いなど12月特有の理由からも、株価上昇が期待できそうです。
高配当株のパフォーマンスに注目
年末年始は高配当株(配当利回りの高い株)のパフォーマンスが良いことで広く知られています。ひとつの要因として、年末高で「割高株(利回りが低い)を利益確定して優良な割安株(利回りが高い)を買う」という一連のリバランスの動きがあります。
さらには、NISAの非課税枠を巡る需要もあります。今年の買い付け枠を消化するための駆け込み需要だけでなく、年明けに再設定される非課税枠に高配当株が買われることによる株価上昇を見込んだ「先回り買い」も期待されます。
12月期決算企業で高利回り株でもある日本たばこ産業<2914>や、上方修正&増配を発表した商船三井<9104>や川崎汽船<9107>、武田薬品工業<4502>やアステラス製薬<4503>などは4%以上の高利回りとなっています。
また、11月に増配を発表した三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>など銀行株や、先のMS&ADなど損保・保険株も、増配や自社株買いなど株主還元に積極的な姿勢から選好されそうです。
ちなみに、2024年のNISA口座枠を消化して買い付けたい場合、国内株式の最終買付日は12月26日(木)です。買い付け枠消化を行う場合は気をつけましょう。
IPOラッシュの季節がやってきた
12月はIPO(新規株式公開)ラッシュの季節でもあります。年間の2〜3割のIPO件数が12月に集中します。
現在のところ、今年12月の上場予定は18社。なかでも、ついに上場となった半導体大手のキオクシアホールディングス<285A>のIPOに注目が集まります。
そのほかにも、ブランドバッグのサブスクを展開し業績も好調のラクサス・テクノロジーズ<288A>(13日上場予定)や、IPOでは特に投資家が好む宇宙ベンチャーのシンスペクティブ<290A>(19日上場予定)なども注目されます。
IPOは、業績よりも「需給がすべて」。12月は件数が多い分、資金が分散するため、人気のないIPOは公募割れのリスクが伴います。
また、IPOで儲けた資金で次のIPOに向かう、という流れから前半戦が盛り上がりに欠けると後半戦はさらに厳しい結果が出やすいです。
特に本年は、10月以降に東京地下鉄(東京メトロ)<9023>やリガク・ホールディングス<268A>という大型IPOが続き、その後の株価も冴えない状態が続いています。加えて、超大型IPOとなることが期待されるキオクシアの12月18日上場も伝えられました。
そのため、本来なら12月のIPOに個人マネーが流入するところ、資金不足で内容が良くても公募割れ(もしくは初値が低調)という事態が発生する可能性があります。
ただ、長期目線でいえば「割安で買える」ということですから、将来性の高い企業であれば、セカンダリー投資として安いところを購入し、中長期のスタンスで株価上昇を待つのも有効な手段となるかもしれません。
クリスマス&年末商戦で盛り上がる銘柄は?
12月初旬から年末にかけては「お歳暮商戦」「クリスマス商戦」、さらに、お正月を迎える準備のための「歳末商戦」など、大きなイベントが重なる時期。顧客の購買意欲が高まるため、需要増加が期待できる銘柄に投資家の注目が集まります。
特に2024年冬のボーナスは前年比2.5%の増加が見込まれることや、年末年始に最大9連休となることから、消費の拡大期待が大いに高まっています。
本年の傾向としては、自宅で楽しめる商品や「プチ贅沢」を演出できる商品などが人気で、特にその年の特徴を表す「福袋」では、家計応援や体験型、デジタル化といった特徴が出ています。
関連銘柄としては、以下が挙げられます。
- 百貨店……三越伊勢丹ホールディングス<3099>、高島屋<8233>、J.フロント リテイリング<3086>
- クリスマスプレゼント関連……ソニーグループ<6758>、サンリオ<8136>、タカラトミー<7867>、ハピネット<7552>、ビックカメラ<3048>
- お歳暮&正月準備関連……日本ハム<2282>、オエノン<2533>、サッポロホールディングス<2501>などビール各社
12月の日経平均株価はどう動く?
個別株に投資するには、相場全体の流れもしっかり掴んでおきましょう。過去のチャートを確認すると、12月の日経平均株価は上旬は株価が下落しがちとなるものの、中旬から月末の大納会に向けて上昇しやすい傾向が見て取れます。
これは、上旬は日米ともに節税対策の売りが出やすいことに加えて、クリスマス休暇を控えて大型株の上値が重くなりがちなことが要因のひとつとして考えられます。
しかし、メジャーSQ(本年は12日)を通過した中旬以降は、薄商いの中で個人投資家主導の活発な相場となり、NISAの駆け込み需要などで、大納会に向けて株高の動きが高まります。
ただ本年、特に注意したいのが日米の中央銀行の動きです。米FOMCが12月17日・18日に、日銀金融政策決定会合が12月18日・19日に行われます。
マーケットでは、FOMCの12月会合で0.25ポイントの追加利下げが決定されることはすでに織り込み済みと見られていますが、一方で日銀のほうは、足元の急激な円安などから利上げ観測が一段と高まっています。
もし追加利上げとなれば、日本株へのマイナス影響は避けられないかもしれません。
ここを無事に乗り切って、年明けの米トランプ大統領就任前後に出るであろう政策への期待などで年末株高となるのか、慎重に見守りたいところです。
巳年は株価が上がる年
前半と後半で顔が全く異なる12月相場の傾向と、12月に株価が上昇しやすい銘柄をご紹介しました。もちろん、「恒例」だからといって今年も必ず上がるとは限りません。
ジングルベルの音色が聴こえて来る頃、年末の風物詩である「新年相場の予想レポート」が次々に出てきます。巳年は「辰巳天井」といわれる「辰」に続く「株価が上がる年」。
年末高で懐も心も温まったところで、じっくりとレポートを読んで巳年の戦略を練りたいところですが……運命やいかに。