投資フェア、展示会・見本市、見学会に株主総会… 投資家向けイベントは銘柄選びの役に立つ?

佐々木達也
2023年8月31日 17時00分

コロナが落ち着き、スポーツやコンサートなどのリアルイベント開催が賑わいを見せています。金融業界も例外ではなく、今年は各地で投資家向けフェアや展示会など開催が予定されています。

こうしたイベントは、投資家にとってどのようなメリットをもたらすのでしょうか?

成長企業の生の声を聞く

大手新聞社やイベント企業が開催する個人投資家向けフェアは、成長企業のIR担当者と直接対話もできる絶好の機会となります。

来場登録などによって入場は無料となるイベントも多く、多くの上場企業によるブースやセミナーでは、著名投資家などの生の声を聞くことができるほか、企業の製品の試供品やノベルティーなどのちょっとしたお土産をもらえることもあります。

こうした投資家向けフェアは毎年、定期的に開催されています。今秋では、日本経済新聞社が主催する「日経IR・個人投資家フェア」が9月1日から2日間、東京ビッグサイトで開催されます。

ニデック<6594>、日清食品ホールディングス<2897>、東ソー<4042>、商船三井<9104>など約80社の上場企業が出展します。各企業のブースでIR担当者に直接質問できるほか、企業のトップによる会社説明会なども予定されています。

中長期の投資家であれば、こうした様々な上場企業の生の雰囲気やIRに対する姿勢を、現場で感じ取ることができる点がメリットになるでしょう。多くの企業が一堂に会するため、各社の特色を感じられたり、思わぬ魅力的な上場企業に出会うこともできるかもしれません。

また、専門家・著名投資家などによるセミナーも同時に開催されており、気になるテーマの情報を収集することができます。

関西では、9月1日からの3日間、インテックス大阪において「資産運用EXPO【関西】」が開催されます。

不動産投資や投資信託、フィナンシャルアドバイザーなどテーマに即した6つのフェアが催されます。その中のひとつの「IR・株式投資フェア」では、上場企業による出展ブースで情報を収集することができます。

展示会で最新トレンドを知る

投資家向けとは銘打っていないものの、ゲームやテクノロジー系の各業界の展示会も、上場企業の情報を手に入れる貴重な場です。

ゲームの国際見本市である「東京ゲームショウ」は例年9月の中旬から下旬にかけて、千葉・幕張メッセで開催されています。2023年は9月21日~24日の予定。

各企業のブースでは、新作や開発中のゲームのムービー公開、体験プレイなどを楽しむことができます。特にゲームの体験プレイでは、自身が体験できるだけでなくユーザーの関心度などのリアルな反応も、情報として入手できる機会はなかなかありません。

今年は、上場しているゲーム企業ではカプコン<9697>、ガンホー・オンライン・エンターテイメント <3765>、スクウェア・エニックス(・ホールディングス<9684>)、バンダイナムコエンターテインメント(バンダイナムコホールディングス<7832>)などが出展します。

出展者数は646社となり、海外企業も約260社が出展するなど、過去最大規模となる予定です。

開催期間中、前半の2日間はビジネスデイとなり、商談目的の企業関係者、メディア関係者のみが参加できます。一般公開は23日・24日の2日間ですが、例年ゲームファンはじめ多くの人々で大変に混雑します。会場内も広く移動や待ち時間も長いので、参加する場合はご注意ください。

10月には、 ITとエレクトロニクスのアジア最大の国際技術見本市「CEATEC(シーテック)」が毎年、幕張メッセで開かれます。今年は10月17日から4日間の開催です。国内外の多くの企業による世界中の最先端テクノロジーが展示され、ハイテク業界などの最新トレンドを直接見聞きすることができます。

2022年は約560社(海外250社含む)が出展し、期間中で約8万人が来場するなど盛り上がりを見せました。電機メーカー、電子部品や半導体などの製造業だけでなく、KDDI<9433>やNTTドコモ、地方自治体や大学など参加者の属性も様々です。

展示で株価が動くことも

さらに、展示の内容が株式市場で材料とされ、株価が急騰する場面もしばしばみられました。

たとえば、デジタル写真加工などを手がけるアスカネット<2438>は、 長年にわたり、空間上に映像を投影する「空中ディスプレイ」の技術展示を続けていました。2014年のシーテックでは、開催前に同社が空中ディスプレイを展示すると発表し、短期筋の資金も集まり株価がストップ高となったこともありました。

見学会は企業を深く知るチャンス

特定の企業についてより深く知りたい場合は、株主向け見学会に参加するのも良い方法です。上場企業は株主向けに、より事業の理解を深めてもらう目的で工場や現場などの見学会を実施しています。コロナ禍で中止していた企業も多かったのですが、今年は再開する企業が増えています。

たとえば味の素<2802>は、東海・川崎・九州の3工場で見学会を実施しました。原料、製造工程、品質管理など趣向を凝らした見学コースとなっており、より製品の理解を深める内容となっていました。

建機の小松製作所<6301>は、大阪や栃木の工場で大型の油圧ショベル、ブルドーザーなどの組み立てライン、自動操縦のICT建機のデモンストレーションなど見学会を開催します。

企業ごとに特徴が分かれる内容となっていますが、ほとんどの場合、広報・IR担当者によるガイドがあるので、その場で質問することもできます。ただ、普段はなかなか立ち入ることのできない工場や現場が見られるとあって、こうした見学会は人気で、企業によっては抽選制となっていることもあります。

やっぱり株主総会は面白い

さらに企業を知るためには、株主総会への参加がおすすめです。

毎年開催される定時株主総会に参加するため、1単元(通常100株)以上の株式を決算日に保有していることが必要です。その後、郵送される株主総会の招集通知には、総会の日程などのほか、決算報告や議案などが書かれています。

3月期決算企業であれば、たいてい6月に株主総会が開催されます。

総会では、経営陣による決算報告などが行われ、質疑応答の時間では会社に直接質問することもできます。質疑応答では、他の株主の関心のある事項をうかがい知ることができ、経営陣による回答やプレゼンなどでより深く経営の考え方に触れることができます。

その後は、議案を採決し、閉会となります。ひところよりだいぶ減ってはいますが、企業によっては参加者にお土産が配られる場合もあります。

企業の意外な一面に出会えるかも

企業をよく知るためのイベントについていくつか紹介しました。中長期の投資家であれば、様々な角度から企業をより深く知るための良い機会となります。ホームページや決算短信などで得られるイメージとは違った角度で、企業に対する理解を深めることができるでしょう。

展示会や株主向け見学会などは、投資という観点だけでなくイベントとしても非常に興味深いものが多いです。無料のイベントも多いので、参加したことのない方は試しに足を運んでみてはいかがでしょうか。

[執筆者]佐々木達也
佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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