2月の株価はどうなる? 閑散相場で恋のように急騰する銘柄とは
一年のうちでも相場が閑散になると言われる2月。過去にはいくつかの〝ショック〟も起きていますが、2月の株式市場にはどんなパターンや傾向があるのでしょうか。そして気になるバレンタインデーのアノマリーとは──
閑散月でも要警戒の2月相場
「ニッパチ」と言われるように、2月は8月とともに株式相場が閑散となる月です。そんな低商いの中、2016年の「チャイナショック」や2018年にはアメリカ発の「VIXショック」が起こったように、株価が大きく変動することもあり、警戒が必要な月でもあります。
また2月は、3月期決算企業の第3四半期決算の発表が本格化し、上方修正や下方修正が出た銘柄に注目が集まります。その一方、小売・サービス・外食などの業種では2月期決算の企業が多いため、配当・株主優待の権利取りのチャンスでもあります。
IPOも本格的に始まり、投機マネーが集中しやすい時期。バレンタインデー関連銘柄にも注目が集まりそうです。
あの人の言動が鍵を握る?
2月相場の特徴として、前半は日経平均株価は下落しやすいものの後半は上昇しやすい、という傾向があります。さらに近年は、低商いの中、外的要因によって株価が大きく変動しています。
2017年は、前半は米トランプ大統領が大型減税策に関する発言をしたことによる期待感から、株価は大きく上昇しました。しかし、その後は狭いレンジ(値幅)での推移となりました。
2018年は、前半にアメリカの長期金利が急上昇したことで、ダウ平均株価が急落。日経平均株価も下げ幅が1,000円以上となるなど大波乱の展開に。中旬から月末にかけては落ち着きを取り戻し、緩やかに回復していきました。
2019年もトランプ大統領。3月に予定されていた中国製品の関税引き上げを延期することを表明するなど、米中貿易摩擦の緩和に対する期待感が生まれ、また、アメリカの金融引き締め政策が終了するとの観測が高まったことから、中旬以降は上昇相場となりました。
2020年も、中東情勢や米中貿易交渉などに注視が必要でしょう。
新興株から大型株主導へ
1月の「新興株祭り」から「大型株主導」へと株式市場の主役が入れ替わる2月。
上旬は、3月期決算企業の第3四半期(10〜12月)の決算発表が本格化します。本決算の行方も左右する内容となりますので、ここで上方修正や下方修正が出された銘柄には注目が集まります。中間決算で利益の進捗率が高い銘柄に着目しておくと、上方修正の期待が持てるでしょう。
第3四半期決算が一段落すると、2月末から3月末に向けて、配当や株主優待の権利取りに向けた動きが本格的に始まります。第3四半期決算の内容が良く、本決算も期待できる銘柄に人気が集中するほか、2月期決算企業では2月末が権利付き最終日となるからです(後で詳しく解説します)。
中旬は、ヘッジファンドの「45日ルール」による換金売りが出やすくなりますので注意が必要です。
投資家がヘッジファンドを解約したい場合、45日前にその旨を通告する必要があり、3月末で解約するなら2月15日近辺が期日となります。通告を受けたヘッジファンド側は、現金を得るために保有株を売りに出すため、株価を押し下げる要因となることがあります。
配当・優待、IPO、バレンタイン!
権利取りの動きが活発化
2月から3月にかけては、配当・株主優待を狙った動きが活発になります。
株主優待で個人投資家に人気の小売・サービス・外食などの業種では2月期決算の企業が多く、2月末は、それら個人消費関連銘柄の決算期末となります。さらに、東証1部上場企業の約7割が3月期決算とあって、3月末の権利取りに向けた動きも出やすくなります。
特に権利付き最終日(2020年は2月26日)の直前になると配当・優待を狙った買いが入り、株価が上昇する傾向にあります。これを利用して、数週間前に株を購入しておき、権利付き最終日直前で売却して利益を確定する、もしくは一部を売却して配当・優待と利益の両方をゲットする、という手法もあります。
個人投資家は優待狙いが多い一方、機関投資家は配当利回りを重視しており、いずれも株価の下支え要因となります。ただし、権利確定日の直後には、配当・優待だけが目的だった投資家が売りに出すため、株価は下落しがちです。こうした値動きが一時的なものかどうか、よく検討したほうがいいでしょう。
・イオン<8267>
大手スーパーのイオン<8267>は、権利取りの動きがチャート上にはっきりと出ている、まさに「株主優待の王様」。2019年も、月初から2月25日の権利付き最終日に向けて株価は約8%上昇しました。当日は、出来高が前日と比べて約倍増しているものの、すでに株価は下落していることがわかります。
今期は、第3四半期があまり良くない点が気がかりですが、その分、権利取りでどれくらい株価が動くかがわかる絶好のサンプルになるかもしれません。
IPOが本格的にスタート
2月になると、その年のIPO(新規公開株式)が本格的に始まります。特に、新しい年の最初の上場銘柄には、否が応でも、投資家の熱い注目が集まります。そのため第1号案件は注目度が高く、例年、初値が高騰しやすい傾向にあります。
直近3年の第1号案件を見てみると、初値上昇率(公募価格から初値までの上昇率)、2017年のシャノン<3976>は+320.67%、2018年のMマート<4380>は+333.87%、そして2019年は識学<7049>が+152.78%と、いずれも高成績をあげています。
このように初値が大きく跳ねた理由としては、前年最後のIPOから新年第1号まで期間が空いていることが挙げられます。加えて抽選に漏れた資金や投機的な資金が流れ込み、初値を押し上げる要因となっています。投機マネーは第1号以降にも集中しやすく、IPO市場が活況になりやすい時期です。
2020年の第1号案件は、2月7日上場予定のジモティー<7082>とコーユーレンティア<7081>。2社同時の第1号となるため、資金が分散する可能性があることを念頭に置いておいたほうがいいでしょう。
IPOの初値は、マーケット環境やその銘柄の成長性、公開規模や需給など複合的な要因で決まります。新年第1号だからといって安易に飛び付かず、総合的に判断する必要があることは言うまでもありません。
バレンタインに燃え上がる銘柄
2月のイベントと言えば、2月14日のバレンタインデー。かつては女性から男性へチョコレートを贈り、想いを告白する特別な日でしたが、近年では、自分のためにチョコを買って楽しむ人が増えているようです。
百貨店の松屋<8237>が行った調査によると、自分への「ご褒美チョコ」が61.8%と最も多く、家族へのチョコ56.7%、会社関係へ義理チョコ35.2%、本命チョコは36%。その平均予算は、「ご褒美チョコ」の4,204円が、本命チョコの3,808円を400円も上回っています。
バレンタインデーの市場規模は1260億円と言われ、株式市場でも、個人消費を刺激する大イベントとして注目が集まります。関連銘柄としては、チョコレートを製造・販売している企業のほか、百貨店などが挙げられます。
・森永製菓<2201>
総合菓子メーカー大手の森永製菓<2201>は、バレンタインデー関連銘柄の代表格。2019年は1月31日終値から2月13日に付けた高値4,885円まで株価は9%以上も上昇しました。この期間の日経平均株価はわずか2%程度の伸びでしたので、まさにバレンタイン効果の高パフォーマンスと言えるでしょう。
加えて、2月8日に発表された第3四半期決算で、経常利益が16%の増益だったことも影響しているでしょう。今期も、昨年11月発表の中間決算では、経常利益の通期計画に対する進捗率が63.2%と5年平均を上回る好内容となっており、2月に発表される第3四半期決算にも注目が集まります。
[その他のバレンタイン関連銘柄]
- モロゾフ<2217>……チョコ・洋菓子大手。百貨店に多店舗。
- 森永製菓<2201>……総合菓子メーカー大手。
- 明治ホールディングス<2269>……菓子・乳業業界最大手。
- 不二製油グループ本社<2607>……菓子メーカー向け油脂などを製造。
- 高島屋<8233>……老舗百貨店。バレンタイン商戦の売上げ増に期待。
- 不二家<2211>……山崎製パン傘下の菓子大手。製菓・洋菓子販売主体。
わずか1週間程度で1000億以上の消費が動く大イベント。短期的なリターンが期待できるかもしれないという視点で注目しておくといいでしょう。
今年の節分は、天井か、底か
実はバレンタインデーには「2月14日のバレンタインデーは株価(日経平均株価)が上がりやすい」というアノマリーがあります。中国の春節明けの影響など諸説ありますが、確度が高いことで有名。チョコレート・アノマリーの甘い恩恵は本当に訪れるのか、意識しておくと面白そうです。
比較的新しいこのアノマリーに対して、日本の株式相場には古くからこんな格言があります。
節分天井・彼岸底
節分の時期(2月上旬)に高値天井をつけて、彼岸の時期(3月中旬)に安値をつける、という意味です。かつての米相場で用いられていた格言ですが、現在のマーケットでは当てはまらず、むしろ節分が底で2月初旬から3月末にかけては上昇する傾向に強いようです。
2020年の節分は、鬼(底)が来るのか、それとも福の神か──。どちらがやって来ても慌てないために必要なのは、日頃からの備えと心構えです。「節分が天井のはず」「バレンタインデーには上がるはず」と盲信することなく、日々の動きをしっかり見極めるようにしましょう。