いまさら聞けない「FRB」 その役割と、利上げが日本株に与える影響を知る

佐々木達也
2022年6月16日 7時30分

Philip/Adobe Stock

《アメリカの金利とインフレをめぐって、金融市場は年初から波乱の展開が続いています。そこで今回は初心に帰って、アメリカの金融政策を牛耳るFRBについて、初歩からひもといてみましょう》

FRBとは?

FRBはFederal Reserve Board(連邦準備制度理事会)の略で、アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度の最高意思決定機関です。物価の安定や雇用の最大化を目的として、国の金融政策を運営しています。

中央銀行とは、国や地域の金融機関の中核となる存在です。金融機関から預金を受け入れたり、資金が不足した金融機関に資金を貸し出す番人のような立場で、日本では日本銀行がこれに当たります。

アメリカでは日銀のような単一の中央銀行ではなく、FRBと各地方で金融機関を統括する複数の「地区連銀」による組織体が、中央銀行の役割を担っています。なお、準備制度の「準備」とは前述の預金の準備のことを指しています。

FRB誕生の経緯

アメリカでFRBが誕生したのは1913年です。合衆国の成り立ちが示すように、アメリカは地方分権を重視するお国がら。1776年の建国以来、地方ごとに中央銀行のような組織ができることもありましたが、金融システムの安定に繋がらなかった経緯があります。

しかし1907年に金融機関への取り付け騒ぎによる金融恐慌が発生すると、きちんとした権限によって一元的に貨幣の供給管理を行うことができる中央銀行システムが必要だ、との議論が活発になります。

実はFRB誕生以前の1863年に国立銀行法が制定され、民間の銀行が免許を受けて貨幣を発行できる権限をもつことで、地域ごとの中央銀行のような役割を担っていました。ただ、このとき発行できる貨幣の量は、それぞれの銀行が持っている国債の額に連動していました。

そのため、経済が不安定化して銀行から預金者が一斉に預金を引き出す取り付け騒ぎが発生すると、十分な貨幣の発行・供給ができなくなり、たびたび信用不安が起こっていたのです。

FRBが「中央銀行」ではない理由

FRBの創設をめぐっては、資金を集中させたいニューヨークなど東部の大都市の大手銀行や大企業と、都市部への資金の集中を警戒する地方の農業経営者や中小企業との間で、激しい議論が行われます。

その後、1910年に南部ジョージア州のジキル島でモルガン、ロックフェラーなどの大物銀行家や議員が集まり、極秘の会議を開いた内容が創設のもとになった、とされています。このときも「中央銀行」という名称は使わないとされるなど、独立の精神を尊重した議論がなされていたようです。

これらの経緯を経て、1913年、アメリカ全土で12のエリアを統括する地区連銀が民間の出資で誕生しました。そして、これを統括する公的な理事会としてFRBの前身である連邦準備局が発足し、1935年に現在の連邦準備制度理事会に改称しています。

日銀の誕生は1882年(明治15年)なのでFRBのほうが30年ほど後に生まれているのですが、背景を見ると、さまざまな紆余曲折があった経緯によることがわかります。

ちなみに混同されがちですが、地区連銀も含めた連邦準備制度のシステムそのものはFRS(Federal Reserve System)またはFed(フェド)と呼ばれます。

FRBの組織

FRBは、議長1人、副議長1人を含めたメンバー7人で構成されます。メンバーである理事は、大統領が任命して上院での承認を経たのちに就任となります。政治からの独立性を担保するため任期は14年と長く、2年ごとに1人ずつが交代となるように設定されています。

議長と副議長の任期は4年で、理事と同じく大統領の任命と上院の承認が必要です。

現在の議長はジェーロム・パウエル氏で2018年に就任し、2022年2月で任期切れとなりましたが、バイデン大統領によって2期目の任命を受けました。なかなか上院での承認が完了せず、暫定的な議長として職務を遂行していましたが、5月12日にようやく再任が承認されました。

副議長は、2022年1月にリチャード・クラリダ氏が任期満了前に退任したのち空席となっていましたが、4月に理事のラエル・ブレイナード氏が任命され、5月8日に上院の承認を得て昇格しました。

FRBの役割とFOMC

FRBはアメリカの金融政策を決定するとともに、金融機関を監督・規制し、金融システムの安全性を維持する重要な役割を担っています。

金融政策の決定とは、公定歩合の決定、預金準備率の決定、公開市場操作の主に3つです。このうち公開市場操作は、短期金利の指標であるFFレート(Federal Funds Rate)の政策金利の誘導目標の設定となります。

民間の金融機関は預金者からの預金残高の一定率を連銀に無利息で預ける義務があり、この際に余った預金のやりとりに用いられる金利がFFレートです。

FFレートの決定や景気の判断など重要な金融政策の方向性は、年8回行われるFOMC(Federal Open Market Committee=連邦公開市場委員会)と呼ばれる金融政策を決定する会合で決められます。

このFOMCの会合では、話し合われた金融政策についてFRBのメンバー(通常は7人)に加えて、12の地区連銀の総裁から選出された5名の計12名によって、1人1票の多数決で決定されます。

このためFRBメンバーのほか、選出予定の地区連銀総裁(持ち回り)の金融政策への姿勢、とくに利上げに積極的なタカ派なのか、それとも利上げに消極的なハト派なのか、それとも中立かなど、各人のスタンスがしばしば株式市場でも注目材料となります。

FRBが利上げすると日本株はどうなる?

2022年5月4日のFOMC会合でFRBは、事前の市場の予想通り、政策金利を0.5%引き上げると決定しました。6月からは、これまで金融緩和で積み上げた保有資産を圧縮する「量的引き締め」を開始。そして15日のFOMC会合で、0.75%の利上げに踏み切ることになりました。

FRBが利上げすると日本株にはどのような影響があるのでしょうか?

一般的に、金利が引き上がると株価の理論値の根拠となる割引率が高くなるため、利上げは株価の算定にはマイナス影響となります。また、量的引き締めによって市中に出回るマネーの量が減少すると、リスク資産である株式、特に成長株(グロース株)には逆風になると言われています。

実際に、2021年末からの日本株相場では、インフレの進行によるアメリカなど各国の利上げ観測が相場の上値を抑える要因のひとつとなっていました。

世界的なインフレの進行で、FRBは従来のハト派からタカ派へと政策のスタンスを変化させており、今後もさらなる利上げが見込まれています。そうすると日本株は今後も下がり続けるのでは……という連想が働きます。

一方では、アメリカの金利が上がる反面、日本の金利は多少上昇しているものの日銀が大規模な緩和を継続するとの姿勢を続けているため、アメリカと日本の金利差による円安は当面続きそうです。

かつてよりも海外生産が多くなってはいるものの、日本の輸出企業にとっては売上を円換算したときのプラス効果は大きく、円安は企業業績を押し上げることにつながります。

また今後、海外からの渡航規制が緩和されれば、海外旅行者にとっては消費や宿泊、観光の割安感が高まることになり、内需にとってもプラスとなる側面があります。

今後の注目は利上げのペース

そもそもFRBが金利を上げるということは物価の上昇を抑える必要があるということですが、その背景には、資源価格の上昇によるコスト高と経済が加速しているという2つの要因があります。

そのため、経済を冷やしてしまうほどの市場の予想を上回るスピードでの急速な利上げが行われれば、株式にはマイナスとなりますが、経済の回復を冷やさない程度の適切な利上げであれば、企業業績の成長や経済の回復が株価を下支えしそうです。

前回2018年12月からのアメリカの利上げ局面では、利上げ発表後に日経平均株価は下落したものの、その後は緩やかな上昇となりました。今回についても、経済回復とアメリカの利上げペースに関するニュースを意識しながらの展開となるでしょう。

利上げ局面では金利上昇により恩恵のある金融株や、資源高やインフレの恩恵を受ける資源株や商社株、円安メリットのある株などが有利と言われています。ただ、それ以外の業種でも企業ごとの明暗が分かれやすいため、個別での選別が進みそうです。

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[執筆者]佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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