グロース株の逆襲が始まった! 円安に引っ張られて株価はどこまで伸びる?

山下耕太郎
2023年5月30日 12時00分

Celt Studio / Adobe Stock

ナスダック指数が絶賛上昇中

米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻をきっかけに欧米で金融不安が高まり、アメリカの株式市場は下落しました。しかしその後、ナスダック100指数やSOX指数は大幅に上場しています。 

ナスダック100指数は、ナスダック市場に上場している金融業を除く時価総額上位100社の株価を集計した指数です。この指数には、世界的に有名なハイテク企業やバイオテクノロジー企業などのグロース株成長株)が多く含まれており、最先端技術を持つ企業も多くなっています。

銘柄数は少ないものの、時価総額においてはナスダック市場全体の70%以上を占めているため、ナスダック100指数は市場の動向を知る上で重要な指標となっているのです。

一方のSOX指数は、アメリカの主な半導体関連株で構成された指数で、日本では「フィラデルフィア半導体株指数」と呼ばれています。30銘柄で構成され、算出は米フィラデルフィア証券取引所によって行われ、時価総額加重平均で算出されます。

バリュー株➡グロース株の流れ

今年上旬のアメリカ株で上昇が目立ったのが、グロース株の代表格である電気自動車(EV)のテスラ<TSLA>です。

3月には一時200ドルを突破し、1月上旬の安値(101ドル台)から約2倍になりました。2023年になってアメリカや中国で主力車種を値下げしたことから、販売台数の巻き返しを期待した買いが入ったのです。

昨年2022年は、FRBがインフレ抑制のため積極的に利上げを実施し、市場環境が一変しました。

利上げによって、株式、債券、金などあらゆる市場が影響を受け、特にグロース株指数は30%急落。そして、安定したキャッシュフローを生み出すことが期待できる銘柄に投資家の買いが集まったため、バリュー株指数は小幅の10%下落にとどまったのです。

しかし、2023年になってグロース株が高騰した一方で、バリュー株の代表的な業種である銀行株は急落しました。3月には米中堅銀行のシリコンバレーバンクが急激な預金流出に見舞われ、経営破綻。

この銀行不安は欧州に飛び火し、スイスの銀行最大手UBSが同2位のクレディ・スイス・グループを救済買収する事態に発展したのです。資本コストが膨らむ懸念が浮上し、日本のメガバンクを含めた金融株は世界的に売られる状況となりました。

グロース株にも影響する利下げの行方

パウエルFRB議長は、年内の利下げは想定していないことを強調していますが、金融市場は、銀行不安の発生とそれが経済に与える悪影響を踏まえて、年後半の利下げ観測を強めています。そして、アメリカで利下げが行われると、ハイテク株などのグロース株にとっては追い風となります。

金融市場は、金利が5月にピークを付け、年末までに0.50.75%の利下げが実施されることを織り込みつつあります。月のFOMC後に長期金利は低下しましたが、これは、銀行不安の拡大が経済に悪影響を与え、それが結局は早期の利下げにつながるとの金融市場の観測を反映していると考えられます。

もしくは、インフレへの警戒を緩めないFRBは、銀行不安がこの先さらに拡大しても、金融緩和の実施を躊躇し、それが経済の一段の悪化につながるとの懸念を長期金利の低下は反映している……という可能性もあります。

インフレへの警戒を緩めないFRBに対し、経済・金融面でのショックが生じた場合に、かつてのように迅速に大幅緩和で対応しないのではないか、との懸念が金融市場の先行きの大きな懸念となっているのです。

パウエル議長は柔軟な政策対応を示唆する反面、年内の利下げを強く否定したことが、このような市場の懸念を増幅していると考えています。

日本株でもグロース株が高値更新

そんななか、日本株でもグロース株は堅調です。TOPIXグロース指数は、5月22日に2891.04ポイントをつけ、昨年1月以来の高値を更新しました。TOPIXグロース指数は、基本的に連結PBRが高い銘柄で構成されています。

4月28日に行われた日銀の金融政策決定会合では、金融緩和の現状維持が発表されました。事前に緩和修正の思惑もあったので、発表直後に円安・株高に振れました。米ドル円は136円台となり、ユーロ円が約15年ぶりに1ユーロ150円台になったことも話題になりました。

日銀の植田新総裁は金融緩和を続ける姿勢を明示しているので、円安の流れは継続しそうです。さらに、アメリカのナスダック総合指数は4月28日に年初来高値を更新。恐怖指数と呼ばれるVIX15台に低下し、リスクマネーが株式市場に戻っています。

アメリカ株の好調と為替の円安傾向が続けば、グロース株を中心に日本株も上値追いの展開が期待できそうです。

[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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