【株と平成と私】SNSとゲームで一世を風靡した、あの銘柄の思い出

網代奈都子
2019年4月15日 8時00分

 

平成」という時代を語ろうとしたとき、何を思い出すかは人それぞれ。投資家・トレーダーであれば、リーマンショックなどの暴落がどうしても頭をよぎるかと思いきや、あの懐かしの(だけど実は現役の)銘柄で、この時代を振り返ってくれた方もいます。

平成は「SNS」と「ゲーム」の時代だった

もうすぐ幕を下ろす「平成」という時代。

この時代を象徴するものとして欠かせないのはインターネットでしょう。この爆発的普及を牽引した「SNS」と「ゲーム」という2つのコンテンツで、一世を風靡した会社があります。個人的にも思い入れの強いその会社の株価および業績の推移とともに、平成という時代を追いかけてみたいと思います。

「遠い青春」あるいは「バリバリ現役」

「SNS」と「ゲーム」の両方を手がける上場企業というと、今多くの人に思い浮かぶのはLINE<3938>ではないかと思います。しかし、スマホを前提とした今のSNSが流行る「前夜」のSNSとして、主に昭和末期生まれから平成初期生まれの人たちの青春期を彩ったSNSを忘れていませんか?

それはmixiです。

ある特定の世代の人は「あー!」と懐かしく思うはずですが、それ以外の世代の人にはまったくピンと来なさそうな気もします(当記事では、「mixi」とアルファベット表記のときは「ミクシィ社が提供するSNSサービス」を差し、「ミクシィ」とカタカナなら社名を指します)。

ミクシィ<2121>の上場は平成18年(2006)。LINEの上場は平成28年(2016)と10年も後です。ミクシィは平成後期を駆け抜けた銘柄と言えるでしょう。

mixiは、ヤフー掲示板のようなコミュニティサイトと、ブログを合わせたような作りをしていて、当時は画期的でした。こんな風に書くともう終わったサービスのように思えてしまいますが、mixiは現役です。私もこの原稿を書くにあたり、10年以上ぶりに再ログインしたのですが、同窓会に出たような感動がありました。

黒船がやってきた! ~ミクシィの受難~

ここで、ミクシィ社のホームページで「沿革」を見てみましょう。

  • 平成16年(2004)2月 SNS「mixi」の運営を開始
  • 平成18年(2006)9月 東証マザーズ上場

この後は、平成23年(2011)4月の「『Find Job!』事業の分社化」までトピックの記載がありません。そして、以下がミクシィの株価推移です。


(Chart by TradingView

これを見ると、2006年の上場から大きく上がることはなく、2008年には高値3,200円から安値856円と大きく下落しました。もっとも、2008年はリーマンショックの年なので、多くの会社が株価を落とした年でもあるのですが。

しかし、この2008年(平成20年)はミクシィの場合、「全部リーマンショックのせいだ」とも言いにくいのです。というのも、今多くの人が利用しているTwitterFacebookが日本語サービスを開始したのが2008年だからです。mixiから鞍替えした人も多かったはずです。私もですが。

世界景気も嵐が吹き荒れ、アメリカからとんでもない黒船がやってきてと、2008年はミクシィ受難の一年だったのです。株価上では、ミクシィの「冬の時代」は2012年(平成24年)まで続きますが、当然、この頃の業績推移も同じように厳しい状況になっています。

営業利益は非公表の年もあるため経常利益で見てみると、2009年(平成21年)をピークに、その後は超えられない状況が続いているのがわかります。2014(平成26年)3月期には、当期利益が赤字になってしまいます。

「死に体」のミクシィが息を吹き返したゲーム

しかし、最終赤字となった翌年、ミクシィは奇跡のような大躍進を遂げます。業績も株価も一転して絶好調。これを牽引したのは、平成25年(2013)10月にサービスを開始したソーシャルゲーム「モンスターストライク(通称・モンスト)』という一本のゲームでした。

「モンスト」は、ジャンルとしてはアクションRPGです。私は、モンストとはまったく関係のない趣味のアカウントでTwitterをしていたところ、たまたまその趣味に共通した名前を持つ「モンスト」の上級プレイヤーがいたようで、その人は多くのモンスト・プレイヤーから敬意を一身に集めているのが、素人目にもよくわかりました。

「よくわからないけどすごい世界がある」と思ったものです。モンストは4人までの協力プレイができるため、こういった尊敬を集めるスタープレーヤーが生まれるのでしょう。人をハマらせる、うまい仕組みです。

あのソニーも、一本のゲームが牽引している?

「ゲームの課金」は縁のない人にはまったくないでしょうし、「ビジネスとしてそんなことが成り立つのか?」と不思議かもしれません。

『ファミ通モバイルゲーム白書』(Gzブレイン)によれば、2017年のスマホゲームの課金売上トップは「モンスト」で、金額は1041億円(集計期間:2017年1月1日~10月3日)。ミクシィの決算を見ると、2018年3月期の売上高は1890億円。期間のずれはあるものの、年間売上の半分以上を「モンスト」だけで叩き出していると言えます。

ちなみに、売上第2位のゲームは「Fate/Grand Order(FGO)」。このゲームはソニー・ミュージックエンタテインメント傘下のアニプレックス社と、外部DELiGHTWORKSとの協業で提供されています。よって、ミクシィの復活も、天下のソニーの好調も、一本のゲームが支えている……と言えなくもないのです。

平成は「ゲームの時代」と言えるでしょう。一方で、これらキラーコンテンツの陰には、箸にも棒にもかからなかった幾重ものゲームがあるわけですが。

ゲームは水物ではない。でも、黒船はまた来る

流行のゲームと聞くと、ついつい「『水物』なのでは……?」と疑ってしまいがちですが、「モンスト」のリリースは平成25年(2013)10月であり、相当息が長いゲームと言えます。

一方で、ゲームの世界はグローバル化が急速に進んでいます。日本でもヒットしている『荒野行動』は中国、『クラッシュロワイヤル』はフィンランドの会社によるものです。

「モンスト」とはゲームのジャンルが違うため単純には比較できませんが、もしかしたらミクシィは、10年ぶりに再度、黒船との闘いに臨まなくてはならないのかもしれません。

[執筆者]網代奈都子
網代奈都子
[あじろ・なつこ]30代OL。仕事のかたわらトレードを行っており、そのスキルを磨くべく日々勉強中。目下の目標は年間の利益100万円。安定した利益を出し、ペット可物件に引っ越すのが夢。
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