華々しいデビューを飾ったIPO銘柄の「その後」を追いかけてみたら……
「当選すれば儲かる!」といわれるIPO銘柄(新規公開株式)は、欲しがる人も多いために人気が高く、当選することは稀です。残念ながら抽選に外れた場合は、上場後に買い付けるしかありません。初値が公募価格から大きく上昇して〝爆上げ〟した銘柄なら、その分、高値で買う必要があります。
しかし、そもそも公募価格(売り出し価格)は企業の実力や将来性、同業種銘柄の株価などを参考にして設定されているはず。ということは、初値がその何倍にもなるのは、やはり「IPOバブル」と言えるのかもしれません。
華々しくデビューしたものの、あっという間に人気は凋落……なんていう悲劇は、実は株の世界にもあるのです。
昨年デビューした「新人」はいま
2017年も、IPO銘柄は相変わらず好調でした。新規上場90社のうち、初値が公募価格を上回ったのは82社。実に、91%以上です。そのうち43社は、初値が公募価格の2倍以上という高いパフォーマンスを見せました。
そんな「2017年デビュー組」の中でも、特に成績の良かった「初値上昇額トップ10銘柄」の、その後の株価を追いかけてみました。
トレードワークス<3997>
2017年11月29日・ジャスダック上場
上場初日には値がつかず、3日目の12月1日に公募価格2,200円の約6.2倍相当の1万3,600円で初値をつけました。さらに1万4,690円の高値をつけましたが、翌日から急落、12月18日には7,730円まで下がりました。
初値で買った場合、わずか半月で40%以上の含み損を抱える結果です。年末には、季節要因で値動きの軽い直近IPO銘柄が買われた結果、1万550円まで戻しましたが、その後は出来高も伸びず、株価はパッとしません。なお、3月末に1株→3株の株式分割が行われています。
ヴィスコ・テクノロジーズ<6698>
2017年12月13日・ジャスダック上場
上場初日は値がつかず、翌日に公募価格4,920円に対して約3倍となる1万5,000円の初値をつけました。その後も、成長性の高いハイテク系メーカーとして注目度が大きく、人気化して連日急騰、28日には公募価格の約8.9倍となる4万3,900円まで上昇しました。
初値で買った投資家は、約半月で株価が2.9倍以上となったわけです。同銘柄も3月末に1株→8株の株式分割を行っています。
ユーザーローカル<3984>
2017年3月30日・東証マザーズ上場
「ビックデータ」「AI」というテーマ性のある銘柄で人気が膨らみ、上場翌日に公募価格2,940円の4.3倍に当たる1万2,500円の初値。4月3日には1万4,090円の高値をつけましたが、これが天井となり、その後はジリ安。11月16日に5,200円まで下げました。初値から60%近くの下落です。
サインポスト<3996>
2017年11月21日・東証マザーズ上場
やはり初日には値がつかず、翌日22日に公募価格2,200円の4倍近く、8,530円の初値をつけます。その後も「AI」関連株として注目されて、12月28日に公募価格の約9倍、初値で買った投資家にとっては2.3倍となる1万9,950円まで値上がりしました。2月末に1株→4株で株式分割。
ビーブレイクシステムズ<3986>
2017年6月15日・東証マザーズ上場
上場初日は値がつかず、翌日16日に公募価格1,670円の4.6倍となる7,700円で初値をつけました。しかし、同日高値の8,300円が天井となり、その後は過熱感もあって利益確定の売りが続き下げ止まらず、9月6日には3,685円と50%近く調整しました。
テモナ<3985>
2017年4月6日・東証マザーズ上場
上場初日は値をつけず、翌日7日に公募価格2,550円に対して3.2倍の8,050円の初値。5月1日に1万100円の高値をつけましたが、ここが天井で、その後は調整局面入りします。9月に初値から40%近くの下落となる5,000円をつけた後は、業績の好調から6,000円に戻して推移しました。
SKIYAKI<3995>
2017年10月26日・東証マザーズ上場
初日は値がつかず、翌日27日に公募価格3,400円を2.5倍上回る8,400円で初値をつけました。30日には高値9,560円をつけましたが、その後はジリ安。12月には好決算であったにもかかわらず材料出尽くし感から初値から30%以上の下落となる5,510円をつけました。
シャノン<3976>
2017年1月27日・東証マザーズ上場
2017年最初のIPOとして好需給となり、上場初日は値がつきませんでした。翌営業日に公募価格1,500円を約4.2倍上回る6,310円で初値、2月3日に7,370円の高値をつけます。ところが6月に業績を下方修正し、11月には2,060円まで売られました。上場時にはクラウド関連株として人気化した銘柄でしたが、初値で買った投資家は60%以上も含み損を抱えたことになります。
UUUM<3990>
2017年8月30日・東証マザーズ上場
上場初日は値がつかず、翌日31日に公募価格2,050円に対して、約3.3倍上回る6,700円で初値がつきました。同日6,800円の高値をつけた後は相場全体の地合も悪く急落、9月8日には4,400円となるなど、初値で買った投資家は約1週間で30%以上含み損を抱える結果となりました。
ディーエムソリューションズ<6549>
2017年6月20日・ジャスダック上場
上場初日は値がつかず、翌日21日に公募価格である2,500円の2.8倍となる7,100円で初値がつきました。22日には8,500の高値となりましたが、その後急落。7月頭に、9月末に1株→2株の株式分割を実施することを発表した際には一時反発したものの、その後は軟調に推移しています。
本当の勝負は〝2曲目〟から
2017年デビュー組のトップ10銘柄のうち、年末の12月29日終値で初値を上回っていたのは、ヴィスコ・テクノロジーズ<6698>とサインポスト<3996>の2社のみ。このことから、IPO銘柄では、初値近辺が天井となりやすいことがわかります。
そのため、上場後に買い付ける場合には、デビュー時の数字だけに気を取られず、個々の銘柄を見極めて判断することが重要です。そのような投資手法を「セカンダリー投資」といい、初値売りを狙う場合とは違ったIPOの面白さがありますので、そちらもどうぞご参考に。