苦戦するIPO市場 でも意外な高評価を得た銘柄と、厳しい目が向けられた銘柄

石井僚一
2022年4月11日 7時30分

Yulia/Adobe Stock

《3銘柄が公募割れ、期待された目玉銘柄もまさかの上場中止……。全体として低迷した2022年3月のIPO市場で、善戦を見せたのはどんな銘柄だったのか。ランキングで振り返ります》

2022年3月のIPO市場

年間を通して見ると、例年3月はIPO(新規株式公開)の数が多くなります。しかし、2022年3月のIPOは8銘柄に留まり、昨年の13銘柄に比べ5銘柄も減少しました。

昨年12月の32銘柄というIPOラッシュからの出尽くし感もまだ残るなかで、住信SBIネット銀行など、上場承認を得ながらIPOを見送る企業も4社ありました。

まずは、新興市場全体の温度感を測るため、3月のマザーズ指数の確認しておきます。

3月のマザーズ指数は+55.49ポイントとなり、月足は陽線を形成しました。昨年9月から今年2月まで6か月連続で陰線となっていましたが、昨年8月以来の反発です。しかし、マザーズ指数は反発したものの、IPO市場は盛り上がりに欠ける1か月となりました。

2022年3月のIPOランキング

そんな3月相場では、8銘柄が新規上場を果たしました公募価格に対して初値がどれだけ上昇(あるいは下落)したかを表す「初値騰落率」のランキングで見てみましょう。

8銘柄のうち3銘柄が、初値が公募価格を下回る「公募割れ」となり、3月のIPO株投資の勝率は62.5%でした。8銘柄の平均騰落率は16%で、IPO株投資という観点では、勝率と平均騰落率のいずれもプラスを維持しています。

しかし、かつてのIPO株投資の「常勝神話」は見る影もありません。騰落率は−12%~+60%の間にあり、大勝ちも大負けもない、そんな静かな月だったと言えます。

時価総額100億円超えでも公募割れ

初値ベースで時価総額100億円を超えた銘柄は3銘柄ありました(2月はゼロ)。

  • ビーウィズ<9216>……パソナ子会社のコールセンター
  • 守谷輸送機工業<6226>……1950年設立。荷物用エレベーターの老舗メーカー
  • ノバック<5079>……1965年設立。姫路市に本社を置くゼネコン

いずれも、事業が確立している手堅い銘柄です。ただし、このうち2銘柄(ビーウィズ、ノバック)は公募割れとなっており、時価総額100億円超えの銘柄は出たものの、株式市場からの評価は芳しくありません。

また、上場を取り下げた4銘柄のうちのひとつである住信SBIネット銀行が、公募時点で時価総額が約3,000億円という大型IPOであったため、3月のIPO市場は本来の「目玉」が登場せずに終わってしまった、とも言えます。

[2022年3月の上場中止・延期企業]
  • AnyMind Group
  • 住信SBIネット銀行
  • Repertoire Genesis
  • トリプルアイズ

2022年3月の気になるIPO銘柄

2022年3月のIPOの中から、投資家の評価が分かれた2銘柄を紹介します。

・イメージ・マジック<7793>──業績の伸びと広義のネット関連銘柄として評価

オンデマンドプリントサービスなどを提供する企業です。

自社のプリントサービスに加え、GMOペパボ<3633>が提供するオリジナルグッズ作成・販売サービス「SUZURI」のプリント加工などを手掛けており、インターネットでグッズ販売を始めるクリエイターなどの増加を背景に業績を伸ばしています。

公募価格1,740円(予想PER8.97倍)に対し、初値2,800円(予想PER14.44倍)で騰落率60.9%となり、3月の騰落率1位です。オンデマンドプリントというネットサービスの裏方企業ですが、広義のネット関連銘柄として業績の伸びが評価された形となりました。

・ビーウィズ<9216>──子会社上場は評価されず、売出の多さも重しに

人材派遣等のパソナグループ<2168>が株式の9割以上を保有する、コールセンターの運営などを手がける企業です。

公募価格1,400円(予想PER10.8倍)に対し、初値1,320円(予想PER10.2倍)で公募割れに(騰落率−5.7%)。子会社上場に厳しい視線が向けられるなかで、公募90万株に対して売出が500万株超と多く、株式市場から評価を得ることはできませんでした。

あの不祥事でIPO市場はどうなる?

前年比で5銘柄減、3銘柄が公募割れで、4社が上場中止……と、逆風の吹いた2022年3月のIPO市場。そんな中で、SMBC日興証券の不祥事が明るみになり、IPO市場への影響が懸念されています。

2021年には全IPOの約2割で主幹事を務めたSMBC日興証券は、今回の不祥事で役員に逮捕者が出る事態となっています。不祥事の中心は直接IPOに関係する部門ではありませんが、営業自粛などでIPO関連部門にも影響が生じる可能性があります。

近年のSMBC日興証券は主幹事数を大きく伸ばしており、今後、IPO市場全体へどの程度の影響を及ぼすのか、その有無が注目されます。

IPO市場は例年5月のGW以降に閑散期を迎えます。好調とは言いがたい2022年のIPO市場ですが、マザーズ指数の反転を契機に盛り返すことができるのか、閑散期入り直前となる4月のIPO市場の行方を見守りましょう。

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[執筆者]石井僚一
[いしい・りょういち]ベンチャーキャピタル勤務を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析などを得意とし、複数の媒体に寄稿中。なかでもIPO関連の執筆を数多く手がけており、IPO企業の目論見書のほとんどに目を通している。
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