指数は上昇したけれど… 注目の宇宙関連IPOに残る不安と、夏への期待【5月・6月のIPOランキング】

石井僚一
2024年7月5日 17時00分

《「確実に儲かる」として個人投資家に人気のIPO株投資。しかし近年、そんな「夢の時代」にも陰りが……? IPOで上がる株と下がる株は何が違うのか。データから読み解く【IPO通信簿】》

6月は東証グロース市場250指数が2月以来の上昇を見せ、新興市場に活気が戻りました。ただ、それとは裏腹に、IPO市場は盛り上がりに欠ける状態に。5〜6月にIPOをした12銘柄のうち、公開価格近くでの初値着地が5銘柄り、初値騰落率トップでも66.7%の上昇に留まりました。

一定数のIPOが行われながらも、グロース指数上昇の波に乗りきれなかった……そんな5月・6月のIPO市場を振り返ります。

2024年5月・6月のIPO市場

ゴールデンウィークから始まる5月は、例年、IPO市場は開店休業となります。2024年も1件のIPOに留まりました。一転して6月には、11件のIPOが行われました。昨年6月の18件に比べると件数は減りましたが、6月から再スタートという例年どおりの流れにはなりました(昨年5月は0件)。

6月は、アメリカではナスダック指数などが高値を更新しましたが、国内株式市場は方向感のない取引が続きました。その中で、新興市場の動向を示す東証グロース市場250指数は今年2月以来の上昇を見せ、月足でも陽線の形成しています。

5月には2022年来の安値を一時下回るなど、先行き不安のあったグロース指数ですが、ここに来てようやく回復に兆しが見えてきたのかもしれません。ただし、依然として安値圏に位置していることは確かです。

2024年5月・6月のIPO市場

そんな2024年5月・6月には、あわせて12銘柄がIPOを行いました。その12銘柄について、公募価格に対して初値がどれだけ上昇(あるいは下落)したかを表す「初値騰落率ランキング」を見てみましょう。

1位はバイオ銘柄のChordia Therapeutics<190A>がつけた66.7%です。4月同様に、初値騰落率が100%(=公開価格の2倍)を超える銘柄はなく、値上がり銘柄についても、全体として大人しい上昇となりました。

昨年6月も、新興市場全体が上昇したタイミングで10銘柄が初値騰落率100%超えとなりました。そのため、今年も6月に入ってグロース指数の上昇が見られたことから、その勢いがIPO市場にも及ぶことがが期待されましたが、残念ながら、追い風は限定的でした。

初値が公開価格を下回る公募割れとなってしまったのは、タウンズ<197A>(初値騰落率▲7%)と、MFS<196A>(同▲8%)。また、公開価格がそのまま初値となった騰落率0%の銘柄が2件、騰落率1%も1銘柄ありました。

公募割れこそ2銘柄のみで踏みとどまりましたが、初値騰落率100%超えがゼロに終わったことに加え、公開価格近くの初値に留まったケースも5銘柄と多く、6月のIPO市場は盛り上がりに欠けたと言わざるを得ません。

2024年5月・6月の気になるIPO銘柄

5月・6月にIPOした12銘柄から、宇宙ベンチャーのIPOとして注目されたアストロスケールホールディングス<186A>と、初値騰落率は0%ながらネットなどで大きな話題を集めたPostPrime<198A>について、詳しく見ていきましょう。

宇宙関連3例目のIPOで人気者の仲間入り

・アストロスケールホールディングス<186A>

宇宙ベンチャーでは3社目のIPOとなったアストロスケールホールディングス<186A>。使用済みの人工衛星など宇宙空間に漂う宇宙ゴミ(スペースデブリ)を除去するサービスの展開を目指す企業です。すでに世界的な拠点を持ち、宇宙ベンチャーとしては著名な企業のIPOとなりました。

過去の業績と今期の業績予想(いずれもIFRS基準)は、以下のとおりです。

売上収益が拡大を続ける一方で赤字も続いており、2023年4月期は▲90億円超の赤字を計上しました。2024年4月期も増収とともに赤字の継続を見込んでおり、赤字幅は▲80~▲115億円と拡大の可能性もあります。

日本、アメリカ、イギリスの各国政府プロジェクトとの契約が順次決定しているものの、会社として黒字に至るには、まだまだ時間がかかると予想されます。

そうした状況で、公開価格850円・公開価格ベースの時価総額960億円でIPOを行い、ついた初値は1281円、初値騰落率は50.7%となりました。初値ベースの時価総額は1447億円で、見事に時価総額1000億円のラインを超えてIPOに成功しています。

ただし、株価はIPO当日に1581円まで上昇したものの、その後は下落が進み、6月は986円で終わりました。現時点では、初値天井に近い株価推移を見せています。

赤字ながら話題性のある業界で3例目となったIPO。株価は無事に上昇し、これで、宇宙関連銘柄はIPO市場における人気業種の仲間入りを果たしたと確認できた事例となりました。IPO後の株価推移は若干不安の残る状態ですが、今後も宇宙関連には注目です。

インフルエンサー設立企業、初値後に株価急騰

・PostPrime<198A>

PostPrime<198A>は、投資インフルエンサーとして知られる高橋ダン(高橋ダニエル圭)氏が設立した、金融・経済特化型SNSサービスを提供する企業です。

過去の業績と今期の業績予想は以下のとおり。

着実な増収が続いており、2021年5月期の段階で3億円を超える経常利益でした。2023年5月期は前期比で減益となったものの、2億円を超える経常利益が維持されています。2024年5月期は売上高10億円目前の水準で、経常利益も3億円を突破する見込みです。

投資インフルエンサーとして知られる高橋ダン氏ですが、相場解説者としては、ネット上で「曲がり屋的存在」として知られています(その人の予想と反対方向に相場が進む、ということ)。ただし、会社経営のほうは極めて順調に推移しているようです。

450円の公開価格に対して初値も450円となり、初値騰落率0%のIPOとなりました。時価総額は45億円のデビューです。公開価格時点での予想PERは18倍(2024年5月期予想EPS:24.02円)で、グロース市場のIPO銘柄としては抑制的な株価設定でしたが、初値は思うように伸びませんでした。

しかしその後、株価は急伸しており、6月の終値は1017円で、時価総額は100億円を突破しています。IPO後に投資家の注目を集め、大きく上昇する結果となりました。この株価上昇がどこまで進むか、そして、上昇後の水準を維持できるかどうかが、今後は注目されます。

7月は有名企業タイミーがIPO予定

グロース指数が久々の上昇を見せつつも、IPO市場はその波に乗れなかった6月でした。なかでもPostPrimeは、そうした状況が如実に現れた初値形成、そして公開後の値動きとなりました。

7月は7銘柄がIPOする予定です。その中には、スキマバイトサービス「タイミー」の運営などで知られるタイミーも入っています。7月こそはIPO市場にもグロース指数の盛り上がりが波及するのか、有名企業のIPOの行方とともに、指数の動向も注目されます。

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[執筆者]石井僚一
石井僚一
[いしい・りょういち]ベンチャーキャピタル勤務を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析などを得意とし、複数の媒体に寄稿中。なかでもIPO関連の執筆を数多く手がけており、IPO企業の目論見書のほとんどに目を通している。
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