今年の株式市場はどうなる? 一年を占う1月相場の特徴と傾向とは【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去の例からひもとく1月の株式相場の特徴とは?》
1月相場に1月効果はあるか?
1月の株式相場では、新年度入りすることから新たな資金が流入するとの期待が市場の経験則(アノマリー)として言われています。
ただ近年では、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策の転換やコロナ禍など外部環境の影響があった年が多く、最近の1月相場はやや軟調となる動きが目立ちました。さて、2023年はどうなるでしょうか?
2022年を振りかえってみると、前年末との比較ではナスダック総合株価指数が3割安、アメリカの主要株価指数であるS&P500種株価指数は2割安となり、アメリカのインフレや金融引き締めによる成長株(グロース株)へ逆風が目立った年でした。
これに対して、日経平均株価は前年末から1割安、大型株の寄与度が高いTOPIX(東証株価指数)は約5%安。上値の重さが指摘されながらも、相対的には日本株が底堅さをみせた1年でもありました。
こうした背景を踏まえて、過去のデータや定例イベントなどを確認しながら、1月相場を読み解くヒントを探っていきます。
1月の日経平均株価はどう動く?
1月相場で、株価が「強い日」「弱い日」はいつになりそうでしょうか?
それを知るために、1月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。日経平均株価についての公式データを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の「騰落率」が掲載されています。
このデータを確認してみると、1月に日経平均株価が上昇した確率(勝率)が高いのは「14日」で、騰落率は73.6%と、なんと7割以上が上昇しています。
反対に、1月で最も日経平均株価の上昇する確率が低い(=下がる確率が高い)のは、「23日」の46.6%となっています。
1月は全般的に初旬から中旬にかけて上昇する確率が高く、下旬以降の確率が低い傾向となっており、新年入りの新たな資金の流入の効果が反映されている可能性もありそうです。
過去20年の1月は上昇と下落が五分
続いて、日経平均株価の月間の騰落状況(前月末終値と当月末終値の比較)を、2001年から見てみます。12月末比では月間で上昇したのが11回、下落が11回で、確率はともに50%で引き分けとなりました。ただ、2000年からの平均下落率は1.5%と、やや下落が優勢となっています。
下落率が最も高かったのは2008年1月で、日経平均株価は月間で11.2%下落しました。
この年は、前年に発覚したサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題によって、欧米などの金融機関に巨額の損失が拡大するのではないかとの不安が広がり、株安となりました。この問題は日本の金融機関などにも広がり、この年秋のリーマンショックへと続いていきます。
反対に、この21年で上昇率が最も高かったのは2013年1月で、日経平均株価は7.2%上昇しました。
日銀がインフレ目標を「消費者物価指数の上昇率2%以上(前年比)」とし、リフレ政策に舵を切りました。また、前年末に行われた衆院選で自民・公明の連立政権が勝利し、第2次安倍内閣による「三本の矢」ことアベノミクスがスタートし、海外投資家を中心に資金が日本株に向かいました。
直近3年の1月の日経平均株価は?
最近の1月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2020年1月の日経平均株価
2020年1月の日経平均株価は月間で1.9%下落しました。
中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大で企業の工場などが操業を休止したと伝わり、リスク回避の動きが広がりました。
・2021年1月の日経平均株価
2021年1月の日経平均株価は月間で0.8%上昇しました。
国内では、新型コロナの感染拡大による景気への影響が不安材料となりました。ただ海外では、アメリカでバイデン新政権による追加の経済対策が発表され、コロナワクチンの接種も進んだことから、株価の下支えとなりました。
・2022年1月の日経平均株価
2022年1月の日経平均株価は月間で6.2%下落しました。
アメリカの金融引き締め前倒しへの警戒感で、株価は日米ともに下落しました。月内のFOMC(連邦公開市場委員会)でFRBが3月にも利上げを開始すると発表し、株式市場にとってタカ派姿勢である点が再度、売り材料となりました。
過去3年間で見ると、日経平均株価の1月の勝敗は1勝2敗と負け越しています。
株価を動かす1月のイベント
株価にも影響を与える1月のイベントには、どのようなものがあるでしょうか。
アメリカでは、世界の最新テクノロジーの技術見本市である「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」が毎年ネバダ州ラスベガスで開催されます。2023年は1月5日〜8日。最新の自動運転車やメタバースの体験など、「3年先の未来」を形作るテクノロジーが一堂に会します。
2022年のCESでは、ソニーグループ<6758>がEV(電気自動車)事業への参入を発表して話題となりましたが、今年はどんな企業が注目を集めるでしょうか?
中旬から下旬にかけては、日米企業の決算発表も注目されます。3月期決算の日本企業では10〜12月は第3四半期となり、今期の着地点が大体見えてくることから、来期に向けた経営陣のコメントなども出始めるタイミングとなります。
特にドル円の為替レートは10月21日に151円94銭をつけ、10月末のかけての7~9月決算では、輸出企業を中心に前提レートを円安方向に見直す企業が増えました。
しかしその後はアメリカの金利の先高感も後退し、円安は一服。さらに12月に、日銀が行っている長短の金利操作で10年国債の変動幅を拡大することを容認するとの決定で円の先高感が強まり、ドル円の為替レートは130円台前半まで円高が進みました。
円高や海外の景気減速を踏まえた企業の見通しは慎重になる可能性が高そうです。ただ市場の予想ほど悲観的でないと受け止められた場合には、ポジティブな材料となるかもしれません。
また、原油価格や円安による輸入物価の上昇も一服しており、利益を圧迫する要因のコストの状況がどう変化しているか見ていきたいところです。
今年の相場の方向性を占う1月相場
日経平均株価の過去データをもとに、1月相場の特徴をいくつかご紹介しました。
当面は、2022年に市場の動きを大きく左右したアメリカなどの金融引き締めと、インフレの動向を注視する展開が続きそうです。次回のFOMCは1月31日~2月1日にかけて開催されます。インフレ指標などの経済情勢を受け、先行きの利上げに対する姿勢や金利の見通しなどが重視されます。
17日~18日には、日銀の金融政策決定会合が開催されます。多くの市場参加者にとってサプライズとなった12月の政策修正によって、黒田総裁が退任予定の4月以降にさらに引き締め方向に向かうとのメッセージを出すのではないか? との憶測も広がっています。会合後の黒田総裁の記者会見も注目です。
急速に緩和に舵を切った中国のゼロコロナ政策やコロナ感染拡大のニュースも、相場を左右する材料となりそうです。中国の渡航規制の緩和は日本のインバウンド関連企業にとって大きな福音となりました。
1月相場は、その年の相場の方向性を示すものになります。特にアメリカでは「年初の5営業日がその年の市場の方向を占う」と古くから言われていることもあり、幸先の良いスタートになるかのどうか、期待しながら見ていきたいと思います。