2023年の株式市場はどうなる? バリュー株の優位はいつまで続くのか

山下耕太郎
2022年12月30日 12時00分

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世界的な景気懸念を背景に、2022年はグロース株よりバリュー株のほうが優位な展開になりました。2023年も、これまでの円安傾向が落ち着いていることや、日本の金利上昇によって、引き続きバリュー株優位の展開になる可能性があります。

2022年はバリュー株優位

バリュー株とは、株価が企業の価値(その会社の利益や資産など)に対して低いと思われる銘柄のことを指します。バリュー株は、さまざまな投資尺度から見て、株式市場の平均値や同業他社と比べて割安と判断される場合や、過去の株価水準から見て、現在の価格が低いと判断される銘柄です。

また、バリュー株は、企業規模や知名度が低い、あるいは突発的なネガティブ報道などの理由で過小評価されることがあり、「割安株」とも呼ばれています。

一方のグロース株(成長株)とは、今後も持続的に大きく成長することが期待される株式のことを指します。グロース株は、企業の経営戦略や事業展開、ターゲット市場の成長性などを考慮して、市場平均よりも価格が高いと判断される銘柄です。

一般的には、売上高や経常利益の成長率が高く、業績の伸びが期待される企業の銘柄がグロース株にあたります。しかし、グロース株は大きなキャピタルゲインを得られる可能性がある一方で、配当を出さない場合が多いことや、価格が急変動する可能性があるため、リスクも伴います。

バリュー株指数が5年弱ぶり高値

2022年の日本株は、グロース株よりもバリュー株が買われました。世界的に景気減速が強まっている中、底堅い業績が期待できるバリュー株に買いが集まったからです。

PBR(株価純資産倍率)が低い銘柄で構成される「TOPIXバリュー指数」は、11月25日に2,145.22ポイントまで上昇。2018年1月23日の2178.08ポイント以来、約4年10カ月ぶりの高値をつけました。

国内のグロース株は世界展開する製造業が多く、アメリカを中心に各国の景気減速懸念が高まっている中、資金を傾けにくい状況は続きそうです。言い方を換えれば、引き続き、バリュー株に資金が集まる流れがあるということです。

NT倍率でわかる、バリュー株優位への転換

日本の株式市場全体の動向を把握するために使われる指標として、NT倍率があります。日経平均株価(日経225)を東証株価指数(TOPIX)で割って算出される数値で、日経平均株価とTOPIXの両者の頭文字をとってNT倍率と呼ばれます。

日経平均株価は株価の高い値がさ株(主にグロース株)に影響を受け、TOPIXは時価総額の大きい銀行などのバリュー株の影響を受けるという特徴があります。つまり、グロース株がバリュー株に優位だとNT倍率が上昇し、バリュー株がグロース株に優位になるとNT倍率は低下するのです。

2008年のリーマンショック以降、グロース株がバリュー株に対して優位な展開が続き、NT倍率は上昇してきました。しかし、2021年に15.66ポイントの高値をつけた後は下落に転じています。グロース株よりもバリュー株優位の展開が2023年も続けば、NT倍率はさらに低下することになるでしょう。

高配当株に買いが集まる

バリュー株の中でも特に買いが集まっているのが、高配当株です。

高配当株とは、株価に対する1株当たりの年間配当金の割合=配当利回りが高い銘柄のことです。一般的に、配当利回りが3%以上の銘柄を「高配当株」と呼びますが、日本株でも配当利回りが5%以上の銘柄も多く存在します。

そんな高配当株の動向を表す「日経平均高配当株50指数」が高値を更新しています。

日経平均高配当株50指数は、日経平均株価の構成銘柄(225銘柄)から、配当利回りの高い50銘柄で構成される株価指数です。流動性(売買高)を考慮し、配当利回りで加重平均して、各構成銘柄の指数計算の比重を決定しています。

日経高配当株50指数は、ETF(上場投資信託)を利用して購入することができます。

ETF(Exchange Traded Fund)は、取引所に上場していて、日経平均株価やTOPIXなど特定の指数の値動きに連動する投資信託です。対象指数の動きに連動した投資成果を得ることを目的としていて、手軽に分散投資ができる金融商品として注目されています。

たとえば、「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信<1489>」の12月22日時点の組入上位銘柄は、以下の通りです。

  1. 三井住友フィナンシャルグループ<8316>……4.44%
  2. 日本たばこ産業(JT)<2914>………………4.01%
  3. みずほフィナンシャルグループ<8411>………3.97%
  4. 日本郵政<6178>…………………………………3.79%
  5. 武田薬品工業<4502>……………………………3.55%

他にも、「日経平均高配当利回り株ファンド」(三菱UFJ国際投信)のような投資信託でも高配当株に投資できます。日経平均株価に採用されている225銘柄のうち、予想配当利回り上位30銘柄を抽出して投資するアクティブファンドで、11月末時点における組入上位銘柄は、以下の通り。

  1. 日本たばこ産業(JT)<2914>……予想配当利回り6.7%
  2. 三井住友フィナンシャルグループ<8316>……………6.1%
  3. 武田薬品工業<4502>……………………………………4.4%
  4. みずほフィナンシャルグループ<8411>………………5.0%
  5. 日本郵政<6178>…………………………………………4.6%

2023年もバリュー株に注目

アメリカをはじめとする先進国・地域の金融引き締めが続く中、2023年はアメリカ、ユーロ圏、イギリスが景気後退に陥り、世界の成長率は極めて低くなる可能性が高いと考えられます。世界経済の不透明感が強まる中、企業の高成長を期待することは難しくなるでしょう。

そうした状況を考慮すれば、当面は、日本株でもバリュー株優位の展開が続くと見ることができます。あわせて、今後の日本市場の動向を占う意味においても、NT倍率の低下が続くかどうかにも注目です。

[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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