決算発表で上がった銘柄・下がった銘柄【2018年3月期:ファナック、スタートトゥデイほか】
扉を開けると、突然「サプラ〜イズ!」の声。みんなが笑顔で出迎えてくれ、主人公は驚きながらも喜びを隠せない……海外ドラマなどでお馴染みのサプライズ・パーティーのワンシーンです。
投資家にとって、企業の決算発表は一大イベント。扉を開けてみなければ、どんなサプライズが待っているのか、株価がどんな値動きをするのか、誰にもわかりません。
2018年3月期の決算発表は前半戦が終了。そのなかから、株価が大きく上がった銘柄、下がった銘柄に注目して、そこにどんなサプライズがあったのかを見てみましょう。
株価が動くサプライズとは?
株価は様々な要因で上がったり下がったりしますが、特に決算シーズンはサプライズで大きく動きます。ここで言う「サプライズ」とは、企業の発表する業績が良いか悪いかではなく、業績予想との比較でサプライズかどうか、です。
つまり、企業の発表する決算の数字が「業績予想の数字よりどれくらい上か? 下か?」ということ。この時期の投資家の関心は、その一点のみに集中します。なぜなら結果次第では、その後の株価が大きく上下するからです。
業績予想との比較で株価は動く
業績予想は一般的に、会社が公表する業績予想、市場コンセンサス予想(数名のアナリストの予想平均値)、四季報予想の3つがあります。市場コンセンサス予想とは、会社の公表する業績予想に、アナリストと呼ばれる企業分析の専門家の意見を加えたものです。
決算発表の前、株価は、市場コンセンサス予想を基準に、投資家の「業績への思惑」で動きます。そして、決算内容が予想より上振れしていれば「ポジティブ・サプライズ」として株価の上昇要因に、下振れしていれば「ネガティブ・サプライズ」として下落要因になります。
アナリストがカバーしていない中小型株の場合は、会社予想や四季報予想との比較がサプライズとなります。
また、本決算では、同時に来期の業績予想も発表されます(非開示の企業もあり)。株価は企業の将来の業績を見越して動きますので、当期の本決算の数字が良くても、来期の業績が悪ければネガティブ・サプライズとして株価の下落要因になります。
以上が決算時の値動きの基本的な見方ですが、実際の相場では、どんなサプライズが待ち受けているかは扉を開けてみなければわかりません。
2018年3月期決算の悲喜こもごも
ここからは、2018年3月期決算で見られた様々なサプライズを紹介します。決算発表後の株価の騰落率が10%以上あったもののなかから、特に話題になったものを並べてみました。
これぞ理想的なポジティブ・サプライズ!
東京エレクトロン<8035>
半導体製造装置で世界第4位の東京エレクトロン<8035>は、4月25日の取引終了後に発表した2018年3月期連結決算で、市場コンセンサスを大きく上振れて着地した決算内容によって、翌日26日の株価は一時前日比11%高の21,610円まで大きく上昇しました。
内容としては、主力の半導体装置の販売が伸び、液晶やサービス部門も好調で、増収増益。また、2019年3月期の営業利益予想も30%増の3660億円と、市場コンセンセンサスの3330億円程度を大きく上回るポジティブ・サプライズとなりました。
悲観的すぎてネガティブ・サプライズ!
ファナック<6954>
「そんなに暗くしちゃったかな……」。目の前で急落していく株価に、稲葉善治会長兼CEOが思わずそうこぼしたほどのネガティブ・サプライズとなったのは、工作機械用NC装置の世界トップで、産業用ロボットも手がけるファナック<6954>です。
4月26日取引終了後、2019年3月期の連結業績会社予想として大幅な減収減益を見込んでいることを発表しました。それを受けて、翌日の同社株は寄り付きから嫌気売りが増加、一時は前日比14%安の22,390円まで急落しました。
会社側は、スマホ関連の需給鈍化や米中貿易摩擦、円高などを想定し、売上高は前年比で13%減の6342億円、経常利益も34%減の1638億円と予想。一方、市場コンセンサスは2579億円の「増益予想」だっただけに、失望感から売りが加速しました。
日経平均株価の構成比で4%を占める巨人のあまりに悲観的すぎる見通しは投資家に嫌気され、「ファナック・ショック」として前引け段階(前場の終値)では日経平均株価を79円も押し下げることとなりました。
優等生がまさかのネガティブ・サプライズ!
エムスリー<2413>
医療従者向け情報サイト「m3.com」を運営しているエムスリー<2413>は、4月25日の取引終了後に決算を発表。2019年3月期の営業利益(国際会計基準)予想が市場コンセンサスを下回ったことが嫌気され、翌日は機関投資家や外国人の売りが膨らみ、前日比12%の大幅安となりました。
エムスリーといえば、これまで2ケタ増益を維持してきた優等生銘柄。しかし2018年3月期の営業利益は、会社計画は上回ったものの市場コンセンサスには達成せず、四半期ごとの増益率にも鈍化がみられたことから、高成長の翳りが意識された模様です。
また、2019年3月期の業績予想は営業利益317億円(前年比6.7%増)の見込みで、市場コンセンサスの370億円程度を大きく下回りました。
ただし、同社は今期から国際会計基準への変更があり(実質の営業利益は前年比で15%増益)、市場コンセンサスは会計基準の変更を考慮していないとみられること、また、単に前年との数字のみを比較して機械的に売買するシステム売買の売りによって膨らんだ、との指摘もあります。
話題性十分でポジティブ・サプライズ!
スタートトゥデイ<3092>
新ZOZOスーツで何かと話題のスタートトゥデイ<3092>。
4月27日に行われた決算説明会は、前澤友作社長自らドット柄の新ZOZOスーツを着用し、実際の計測実演も行いアピールしました。発表された2019年3月期の連結営業利益見通しは、前期比22%増の400億円と、市場コンセンサス予想の387億円を大きく上回る内容でした。
中期事業計画も、2021年3月期にはPB(プライベート・ブランド)展開の販売を本格化することから、営業利益を900億円に引き上げるなど強気の内容でしたが、週明けの株価は一時15%高の3640円まで上昇するなど、投資家にはポジティブに受け止められました。
中小型株はサプライズ決算に素直に反応
インフォコム<4348>
国内最大級の電子コミックサービス「めちゃコミック」を展開するインフォコム<4348>は、システム開発と電子コミック事業が収益の2本柱です。
4月26日の取引終了後に発表された2018年3月期の営業利益は、前期比22%増の58億2900万円、従来の会社予想や四季報予想の56億円から大きく上振れとなるサプライズな決算となりました。
電子コミックとヘルスケア関連の牽引により、2019年3月期の業績予想も営業利益65億円(前期比11.5%増)を見込み、配当も2円増の40円に増配と発表しました。
インフォコムはジャスダック銘柄ですが、このような中小型株の場合、アナリストがカバーしていないこともあってサプライズが多く、株価も素直に反応する傾向にあります。同銘柄も、翌日の株価は一時13%高の2640円となるなど、出来高を伴った大幅上昇となりました。
決算シーズンの注意点
2018年3月期決算の後半戦は、5月9日から15日にかけて、2000社以上が一気に出揃います。どんなサプライズがあるのか注目です。
しかし、どんなにアナリストたちが予想したところで、企業の決算は扉を開けてみないとわからない側面があり、リスクが取りづらい状況となります。そんな決算シーズンにはどのようなポイントを見るべきなのか、また、どんなところに注意すべきなのかは、改めて詳しく解説したいと思います。