金利低下で上がる銘柄・下がる銘柄 長期戦に勝つための心得とは

星野 涼太 2019/07/16 8:00
株式市場には様々な理論があるものの、それどおりに動いてくれないのが株価というもの。本来は金利低下によって恩恵を受けるはずが、下落してしまう銘柄があります。それはなぜか。そして、長期的な利益の目指す投資家が身につけておきたいコツとは。

金利低下が相場に与える影響

米中貿易摩擦の影響などを受け、各国の中央銀行は金利引き下げの検討を進めている。

アメリカでは、中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が経済への悪影響を踏まえた上で利下げを行うと表明。欧州中央銀行(ECB)も、物価の伸びを考慮し、目標を達成できない状況が続いた場合には利下げ等を行うことを明言した。

こうした動向のほか、アメリカとイランとの間の地政学リスクの高まりなども重なり、世界的に金利は低水準となっている。米10年債利回りは6月中旬に約2年半ぶりの低い数値を付け、ドイツ10年債利回りは過去最低を更新した。

こうした金利低下局面では、債券の魅力が下がることで株式に資金が向かうことが多い。その勢いは、時価総額の小さい小型株(主にマザーズやジャスダック)と比べて、時価総額の大きい大型株(主に東証1部)の方が大きくなる

つまり、大型株の方が、金利低下局面では上昇しやすいということだ。場合によっては、保有する小型株を売って捻出した資金で大型株を買う、というケースもよく見られる。

実際、アメリカの利下げの可能性が初めて示唆された際には、TOPIX、日経平均株価が上昇した一方で、マザーズ指数は大きく下落した。

金利が下がると大型株の株価が上がる理由

株式市場における投資家の構造を考えれば、こうした局面で大型株の方が上昇しやすいのは当然と言える。

投資家には大きく分けて機関投資家と個人投資家がいる。一般的な特徴として、機関投資家は専門知識が豊富で情報収集能力に長けていることから洗練された投資を行い、運用額も大きい。一方で、個人投資家は知識や経験、情報収集面での制限、運用額において機関投資家ほど恵まれていない。

視野に入れる銘柄にも違いがある。個人投資家は小型、大型を問わず幅広く投資するが、機関投資家は大型株への投資が主となる。

こうした背景が重なり合うことで、金利が低下する場面では、多額の運用資産を持つ機関投資家が俊敏に金利低下に反応することで、大型株の方が相対的に上昇しやすくなる

そして、そのことを把握している一部の個人投資家が、保有する小型株を売って大型株へとシフトすることで、さらに大型株の上昇しやすさが増幅するのだ。

恩恵を受けるはずなのに下がる小型グロース株

小型株の中でも、将来的に大きな利益成長が期待されている小型株を「小型グロース株」という。金利低下局面では多くの小型株と同様に売られることが多いが、本来この小型グロース株こそ、金利低下の恩恵を大きく受ける株なのだ。

ファイナンスの理論では、株価は「将来的な株主利益の現在価値合計」として計算される。噛み砕いていえば、株価とは、株主が将来得る利益をぎゅーっと圧縮したものだ。

この圧縮する力(専門用語では「割引率」という)は、金利が上昇すれば強まり、低下すれば弱まる。つまり、金利が上昇すれば株価は下がりやすくなり、低下すれば株価は上がりやすくなる。

さらに、株主が利益を得るタイミングが現在から先であればあるほど、よりこの圧縮の影響を受けることになる。要は、来年100億円稼ぐ会社と10年後に100億円稼ぐ会社では、金利が低下した時の株価の上昇率は後者の方が大きくなる、ということだ。

グロース株とは将来的に大きな利益成長が期待されている株だ。となれば、株主が得るであろう利益は将来になればなるほど大きくなる。こういった理由から、金利低下局面では本来、小型グロース株の方が受ける恩恵は大きいのだ

もし小型グロース株を保有している時に、現在のような金利低下局面での株価下落に不安を抱くことがあれば、このような仕組みを理解し、足元の株価下落に動揺しないよう心がけたい。

アナリストのひとり言

株式市場では、理論的に正しいとされる方向とは逆のことが頻繁に起こる。そして、アナリスト含め市場関係者はみな、理屈と現実の乖離にジレンマを感じ、悩まされる。これは、株価を決める要因が短期と長期で異なるからだ。

株価というのは、短期的には需給で決まるが、長期的には業績などのファンダメンタルズを主とした理論的な要素で決まる可能性が高い。

金利低下局面における小型グロース株の下落は、「大型株を買う資金を捻出するために売られた」という需給要因が背景にある。本来は長期的な株価上昇を期待しているはずが、短期的な材料に気をとられて手放してしまう投資家が多くいるのだ

長期投資のコツをつかむには

もちろん、株式市場では日々様々なイベントが起こるため、小型グロース株が長期的に上昇に転じると断言することはできない。しかし、上で説明したファイナンス理論に基づけば、金利低下が小型グロース株の大きな押し上げ要因になることに対する異論は少ないはずだ。

株式投資で長期的な利益を目指すならば、こうしたチャンスを拾っていけるかどうかがパフォーマンスを左右する。それを見つけるコツは、「株価の短期的な動きを『正解』としない」姿勢だろう。

  • 「金利低下で株価が下がった……ということは金利低下は小型グロース株にとってマイナスなんだ」
  • 「自社株買いの発表で株価が上がった……ということは自社株買いは株価にとってプラスなんだ」
  • 「M&Aの発表を受けて株価が下がった……ということはM&Aは株価にとってマイナスなんだ」

といったように短期的な株価の反応を「正解」として扱うのは、長期投資には適さない。好奇心を持てる範囲からでも、各種の材料と株価の背景となる仕組みを知ろうとする癖を身につけることが大切だ。

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2019/07/16
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[執筆者]星野 涼太
星野 涼太
[ほしの・りょうた]外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤めておりました。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することで、読者の皆様がより堅実・効率的な株式投資を実践できるよう貢献したいと思っております。

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