ソフトバンクの悲劇は想定内 公募割れ銘柄に共通する5つの条件とは

岡田 禎子 2019/01/25 8:00

ソフトバンクのIPOに1億6000万を投じた男性の話がニュースになっていました。結果は約500万円の損失。それを聞いて「IPOは怖い」と思った方もいるかもしれませんが、実はソフトバンクの公募割れは、とてもわかりやすい共通点によって予期されていたそうです。

公募割れの悲劇は他人事じゃない

IPOは「初心者でも簡単に儲かる!」と人気の投資法です。前回の記事で詳しく見たように、2018年も全体を通して〝勝率〟は高く、初の「初値テンバガー」も誕生しました。

しかし、IPO銘柄だからといって必ずしも利益が出るわけではありません。大きな話題となったソフトバンク<9434>のように、せっかく当選したのに「まさかの公募割れ!?」という事態もあり得るのです。

そもそも「公募割れ」とは?

新規上場後に初めて売買が成立した値段=「初値」が公募価格売り出し価格)を下回ることを「公募割れ」と言います。

前回ご説明したように、公募価格は比較的割安に設定されるため、本来ならば初値は公募価格よりも値上がりするはず……なのですが、実際には毎年のように公募割れの悲劇は起きています。

公募割れ残念ランキング2018

2018年のIPOは90社、そのうち公募割れ銘柄は1割の9社でした。以下は、公募価格と初値の差額(=初値で売却した場合の損失額)順に並べたランキングです。

2018年に投資家に最も損失を与えてしまったのは自立制御システム研究所<6232>。100株あたりの損失額は57,000円で、騰落率はマイナス16.8%でした。

No. 上場日 社名 市場 公募価格 100株購入時の損失 初値下落率
初値
1 12/21 自律制限システム研究所 マザーズ 3,400 -57,000 -16.8%
2,830
2 12/21 ポート マザーズ 1,480 -55,000 -37.2%
930
3 10/12 Delta-Fly Pharma マザーズ 4,770 -38,500 -8.1%
4,385
4 9/28 ワールド 東証1部 2,900 -14,500 -5.0%
2,755
5 3/23 キュービーネットホールディングス 東証1部 2,250 -13,500 -6.0%
2,115
6 12/12 アルテリア・ネットワークス 東証1部 1,250 -6,000 -4.8%
1,190
7 9/6 ナルミヤ・インターナショナル 東証2部 1,560 -5,900 -3.8%
1,501
8 3/20 信和 東証2部 1,150 -4,400 -3.8%
1,106
9 12/19 ソフトバンク 東証1部 1,500 -3,700 -2.5%
1,463

公募割れしたのはこんな銘柄

【第1位】自律制御システム研究所<6232>

商業用ドローンの製造販売及び自立制御技術を用いた無人化・IoT化に係わるソリューションサービスの提供を行う会社。

●どうして割れた?

ドローンというテーマ性の高さから評価されていた銘柄でしたが、相場環境の悪さや、マザーズで公募規模100億円前後の大型案件、業績面では赤字推移……とあって、初値は公募割れ。初値で売った場合には57,000円のマイナスとなりました。

【第2位】ポート<7047>

就活サイト「キャリアパーク!」など、キャリア系、ファイナンス系、メディカル系のインターネットメディアを運営している会社。

●どうして割れた?

厳しい相場環境の中、マザーズ案件としては公開規模が大きいこと、バリュエーション面(企業価値評価。具体的にはPERなど)も割安感がないことから、気配値下限で売り気配(=値がつかない)のまま、初日の取引を終了。翌営業日に公募割れで初値がつくという残念な結果でした。初値売りでは55,000円のマイナスです。

【第3位】Delta-Fly Pharma<4598>

抗がん剤を開発するバイオベンチャー企業で、医薬品等の研究開発から製造、販売まで手がけます。

●どうして割れた?

IPOの人気が低下している中、しかもIPOでは不人気の赤字の創薬ベンチャーであることや、マザーズへの上場としては公開規模が大きいこと、また、ソフトウェア開発会社のイーソル<4420>と同日上場だったことから需給環境が悪く、初値売りで38,500円のマイナスとなりました。

ちなみにイーソルは、1,680円の公募価格に対して約2.4倍となる4,000円で初値をつけています。初値上昇率は138.1%です。

【第4位】ワールド<3612>

アパレル大手で、婦人・紳士・子供服等の企画販売等を手がける会社。2005年11月にMBO(経営陣による買収)で上場廃止しており、今回は再上場でした。

●どうして割れた?

知名度は高いものの、東証1部の超大型規模の再上場案件で、投資ファンドが筆頭株主であることから売り圧力が意識され、初値売りで14,500円のマイナスでした。

【第5位】キュービーネットホールディングス<6571>

10分1000円ヘアカット専門店チェーン「QB HOUSE」等を運営するキュービーネットをはじめとしたグループ会社の経営管理全般を行う持株会社です。

●どうして割れた?

米中貿易戦争の懸念が増して急激に相場環境が悪化したことや、東証1部上場の大型案件であったこと、投資ファンドの出口案件であったこと、さらに同日にファイバーゲート<9450>の上場も重なり、初値売りでは13,500円のマイナスに。

ファイバーゲートは、公募価格1,050円からついた初値は2,388円で、127.4%の上昇率でした。

【第6位】アルテリア・ネットワークス<4423>

丸紅系のインターネットサービス(光インターネット接続サービス)、ネットワークサービス(専用線サービス、VPN接続サービス等)などを手がける会社。

●どうして割れた?

12月はIPOラッシュの月。その中、東証1部上場の大型案件で、投資ファンドによる売出案件でもあり、仮条件1,150〜1,500円のところ公募価格は1,250円と人気のなさが露呈してしまい、初値売りでは6,000円のマイナスでした。

【第7位】ナルミヤ・インターナショナル<9275>

百貨店向けに「mezzo piano」など、ベビー・子供服の企画販売を手がける会社。業績悪化から2009年11月にSBIキャピタルによるTOB(株式公開買い付け)で上場を廃止しており、これが再上場。

●どうして割れた?

IPOでは不人気市場である東証2部上場の大型案件で、子供服販売という業種に新鮮さがないこと、投資ファンドが大株主であること、また同日にand factory<7035>の上場も重なって、初値売りは5,900円のマイナスとなりました。

and factoryのほうは、公募価格2,570円に対して初値は4,010円、56.0%の上昇率でした。

【第8位】信和<3447>

仮設資材、物流機器を中心とした金属製品の製造販売を手がける会社。

●どうして割れた?

IPOでは不人気の東証2部案件で、公開規模が大きく、公募株なしの売出株のみ、全株投資ファンドによる放出と内容的にも厳しく、初値売りは4,400円のマイナスとなりました。

【第9位】ソフトバンク<9434>

ソフトバンクグループ<9984>傘下の国内通信子会社で、いわゆる親子上場です。

●どうして割れた?

過去最高規模の超大型IPOで注目されましたが、公募価格の1,500円を2.5%下回る初値は1,463円となり、初値売りは3,700円のマイナスとなりました。

6月のメルカリ<4385>(初値は公募価格を66%上回った)の先例など、過去実施の超大型IPOの勝率は高いことや、CMでの大々的な宣伝、証券会社のポジティブ予想、高配当利回りなどからも、個人投資家からは高い人気となりました。

その一方で、親子上場であること、超大型案件であること、全て売出株であること、バリュエーションが割高であることから、当初から公募割れのリスクも指摘されていました。

蓋を開けてみれば、相場環境の悪さや、上場直前に起こった大規模な通信障害、ファーウェイ・ショック、PayPayのクレジットカード不正問題といった個別の悪材料も重なり、厳しい船出となりました。

公募割れ銘柄の5つの共通点

一体どんな銘柄が公募割れするのでしょうか? 実は、公募割れする銘柄にはいくつかの共通点があります。

その共通点とは以下の5つです。もちろん、これらに当てはまったからと言って「必ず」公募割れするわけではありませんが、公募割れ銘柄を見極める重要なヒントになります。

  • 上場市場が東証1部または東証2部
  • 公開規模が大きい
  • 公募価格が仮条件の上限で決まらない
  • 公募株より売出株のほうが多い
  • 再上場銘柄である

まず、老舗企業や成熟した企業というイメージのある東証1部と2部への上場は、一部の例外を除き、なかなか人気化することはありません。

次に、IPOによって市場に資金が流入しますが、その額(公開規模)が大きすぎると需給悪化が懸念されるため、初値にはマイナス要因となりやすくなります。

IPOでは「X,XXX円〜X,XXX円」という公募の仮条件が投資家に提示され、それをもとに需要状況を把握することで、市場に即した公募価格が決定されます。公募価格が仮条件の上限でない場合、人気のない銘柄と判断できるのです。

さらに、企業が資金調達のために新規株式を発行する「公募株」に対して、創業者や投資ファンドなど既存の株主が保有株を売り出す「売出株」のほうが多いということは、企業に資金が入らないことを意味します。

そして、過去に上場廃止となった企業の再上場は新鮮さに乏しく、よほどの成長性がない限り人気化するのは難しいと言えます。

条件を満たしていたソフトバンク

大々的な宣伝や証券会社の強気姿勢から、普段はIPOに無関心な投資家や株未経験の人たちにも注目されたソフトバンク<9434>ですが、実は、これら5つの「公募割れの条件」を見事に満たしていました。

  • 上場市場……東証1部
  • 公開規模……2兆6461億円(過去最大)
  • 公募株数:0株/売出株数:1,764,063,100株(OA含む)

公募価格については、今回、日本で初めて仮条件に幅が設けられず、仮条件の1,500円がそのまま公募価格になりました。また、再上場ではありませんでしたが、巨大企業の親子上場という点がそれに代わる懸念点になったと言えるでしょう。

当たっても判断は慎重に

こうして見てみると、ソフトバンク<9434>の公募割れは残念ながら予期されたものであり、それによる損失は避けられたはずです。なぜなら、これら5つのポイントは、IPOの情報をちゃんと見れば誰にでもわかることだからです。

幸いなことに、IPOは辞退が可能です。当たった喜びに浸る前に、その銘柄が上記の5つに当てはまらないかどうか確認しましょう。そのうえで、どうぞ判断は慎重に。

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2019/01/25
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[執筆者]岡田 禎子
岡田 禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。 日本証券アナリスト協会検定会員(CMA) ファイナンシャル・プランナー(CFP®)

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