侍ジャパンの活躍で株価は上がる? 新年度へ気になる3月相場の特徴と傾向【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去の例からひもとく3月の株式相場の特徴とは?》
3月相場を読み解くヒントは?
本決算の企業が多い3月は、月末にかけて権利取りの動きが見られ、好配当や株主優待の魅力的な企業に注目が集まりやすくなります。一方で、金融機関など機関投資家は、決算のため株式を売却することが多いシーズンでもあります。
過去の株価データや定例イベントなどを見ながら3月相場を読み解くヒントを探っていきます。
3月の日経平均株価はどう動く?
3月相場で、株価が「強い日」「弱い日」はいつになりそうでしょうか?
それを知るために、3月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。日経平均株価についての公式データを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率が掲載されています。
このデータを確認してみると、3月に日経平均株価が上昇した確率(勝率)が高いのは「15日」で、67.8%の確率で上昇しています。反対に、3月で最も日経平均株価の上昇する確率が低い(=下がる確率が高い)のは、「16日」と「27日」の45.6%です。
3月は勝率の高い日と低い日が月中に分布しており、前半や後半では際立った勝率の偏りはあまり見られませんでした。
2月と3月の相場格言に「節分天井・彼岸底」というものがあり、市場の経験則(アノマリー)として知られています。相場は節分の頃(2月上旬)に天井を付け、お彼岸(3月中旬)に向けて下落していく、というものです。
ただ、最新の日経平均株価の騰落状況を見る限り、近年の3月相場には「彼岸底」という言葉にはあまり当てはまっていないようです。
過去20年の3月は半分強が上昇
続いて、日経平均株価の月間の騰落状況(前月末終値と当月末終値の比較)を、2001年から見てみます。2月末比では月間で上昇したのが12回、下落が10回で、上昇した確率は54%と上昇が優勢でした。2001年からの平均上昇率は+0.6%となり、わずかに上昇率が優勢となっています。
下落率が最も高かったのは2020年3月で、日経平均株価は月間で10.5%下落しました。
この年は新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界同時株安の動きとなりました。中国やアジア諸国から欧米にも急速に感染者が広がり、WHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言して、パニック売りが広がりました。
その後は、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)による緊急利下げ、米政府による大規模な経済政策などが打ち出され、下げ渋りの動きを見せましたが、日経平均は月間で約1割の下落となりました。
反対に、上昇率が最も高かったのは2010年3月で、日経平均株価は9.5%上昇しました。
債務問題が懸念されていたギリシャのデフォルトが回避されるとの期待が高まり、これが株高の要因となりました。2月にEUがギリシャの支援を表明するとリスク回避の円高・株安の流れが反転し、日本株に資金が流入しました。
直近3年の3月の日経平均株価は?
最近の3月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2020年3月の日経平均株価
2020年3月の日経平均株価は前述のとおり、コロナ感染拡大でリスク回避の動きが広がり、月間で10.5%下落しました。
・2021年3月の日経平均株価
2021年3月の日経平均株価は月間で0.7%上昇しました。
各国の金融緩和や経済対策の効果、海外でのコロナワクチン接種開始の報道などもあり、株高の流れとなりました。しかし、日銀によるETF(上場投資信託)の買い入れ方針の変更もあり、結局、月間では小動きとなりました。
・2022年3月の日経平均株価
2022年3月の日経平均株価は月間で4.8%上昇しました。
前月にロシアがウクライナへの進行を開始し、株安となっていたこともあり、反動高となりました。また、米FRBによる急速な利上げの懸念が遠のいたこともサポート材料となりました。
過去3年間で見ると日経平均株価の3月の勝敗は2勝1敗と勝ち越しています。
株価を動かす3月のイベント
株価にも影響を与える3月のイベントには、どのようなものがあるでしょうか。
- 上旬:全人代(全国人民代表大会)
- 中旬:WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)
- 下旬:3月期決算
まず上旬には、中国・北京で日本の国会に相当する全人代(全国人民代表大会)が、毎年2週間ほど開催されます。前年の政治・経済の報告に加えて、今後1年間の計画や方針などが策定されます。
国内外の株式相場では中国の経済回復が支援材料となっていることから、今年の経済成長率の目標が何%に設定されるかが注目となります。2021年はコロナ禍からのV字回復で8.1%増という高成長だったものの、2022年はゼロコロナ政策の影響などもあり3%前後の成長に低迷していたと見られています。
また今年は、野球の世界一決定戦であるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が8日から21日まで、台湾・日本・アメリカで開催されます。プロ野球のシーズン開幕前の3月に実施され、基本的に4年に1度の開催です(本来は2021年開催の予定でしたが、コロナで延期となっていました)。
今年は米メジャーリーグ(MLB)からパドレスのダルビッシュ有投手やエンゼルスの大谷翔平投手、国内勢ではヤクルトの村上宗隆内野手、オリックスの山本由伸投手などスタープレイヤーが選出されており、注目度も高まっています。
彼ら侍ジャパンの活躍次第では、ゼット<8135>、ミズノ<8022>、アシックス<7936>といったスポーツ関連株などが物色される可能性もありそうです。
そして、月末にかけては3月期決算企業の権利取りが意識されます。配当や株主優待を得られる権利付き最終日は、月末最終営業日から3営業日前ですので、今年は29日がこれに該当します。30日が権利落ちとなります。
日銀の次期総裁と次回会合にも注目集まる
今年は9〜10日に予定されている日銀の金融政策決定会合も重要度の高いイベントとなります。日銀は黒田総裁の任期満了を4月に控える中で、現在の大規模金融緩和を縮小し、出口に向かうのではないか、との期待が市場関係者の間で広がっています。
2月24日の衆議院では、次期総裁候補の植田和男氏が所信聴取に臨みました。その発言が注目されましたが、「当面は現在の金融緩和を継続する」として踏み込んだ発言は控え、急速な金融引き締めの可能性が後退したことから株式市場で好感される動きとなりました。
そのため、次回の日銀会合でも金融政策の現状維持の可能性が高まりましたが、昨年末の政策変更がサプライズだったこともあり、会合前には警戒ムードも広がりそうです。
新年度に向けた下値固めとなるか
日経平均株価の過去データをもとに、3月相場の特徴をご紹介しました。
日本株相場では、3月の権利取りや株主還元強化への期待、世界経済の回復予想などもあり、高配当利回り株が買われる地合いが続いています。
三菱UFJフィナンシャルグループ<8306>、日本たばこ産業(JT)<2914>、武田薬品工業<4502>といった日本を代表する高配当利回りの大型株50銘柄で構成されるETF(上場投資信託)、「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信」<1489>のチャートを見てみると、昨年10月以降、右肩上がりのきれいな上昇トレンドが続いており、2月21日には昨年来高値を更新しました。
日経平均株価は年初以降、アメリカの金融引き締めのスピードが想定よりも緩めになるかもしれないという期待もあり、売られていたハイテク・グロース株なども買い戻されていました。
ただ最近では、FRBのタカ派姿勢や強めの経済指標を受けて利益確定売りの動きが広がっており、日経平均株価も27,800円の手前で上値が重くなっています。
一方で、景気敏感のバリュー株や高配当利回り株などが下支えとなって下値固めが続けば、4月以降の上昇に向けた足がかりとなるかもしれません。