まもなく権利確定日! 進化する株主優待の最新事情をチェックしよう

近年より多くの企業が株主優待を導入するようになり、実施企業は過去最高を記録しています。そんななか、優待取得に新たな条件を設ける企業も増えているそうです。株主優待の最新トレンドと、知っておきたい落とし穴、やってしまいがちなミスについても解説します。

楽しさ広がる株主優待

3月末は、株主優待を手にするための権利確定日となる銘柄が最も多くなります。年末からの株価下落で、配当+優待利回りが大幅にアップした銘柄も続出しており、絶好の買い場到来と睨んでいる方も多いのではないでしょうか。

(参考記事)株主優待狙いの裏技&注意点 「1泊2日の甘い夢」は悲劇の始まりかも?

一方で、株主優待自体も「長期保有株主への優遇」「新設&拡充」「選択制」など、株主の幅広いニーズを背景に様々に進化を遂げています。そんな株主優待投資の基本を押さえつつ、最新トレンドを探ってみましょう。

株主優待の最新トレンドとは?

会社に持参する飲み物は、TOKAIホールディングス<3167>優待品のミネラルウォーター、ランチはプレナス<9945>の優待券で「ほっともっと」のお弁当、会社帰りには吉野家ホールディングス<9861>からもらったサービス券で「京樽」の寿司を持ち帰り……

そんなふうに日々お得を楽しんでいる優待アナリストのKさんによると、「最近の株式優待は、優待内容が多様化、選択肢のバリュエーションも広がっており、ますますお楽しみ感が増している」とのこと。

そんな株主優待の最新トレンドは以下の3つ。

[株主優待の最新トレンド①]長期保有株主への優遇

現在、株主優待を実施する上場企業は1400社以上(2018年9月)と過去最高を更新し、全上場企業の3割以上が実施しています。そんな中で、保有期間に応じて優待に差をつける長期優遇型の優待を導入する企業が増えています。2017年では300社を超え、優待実施企業に占める導入率も2割超えとなっています。

たとえば、キユーピー<2809>が3年以上の保有を優待取得の条件としたほか、コーセー<4922>は保有期間に応じて選べる製品がグレードアップ。カゴメ<2811>は半年以上継続して保有した株主を条件として「自社製品詰合わせ」、さらに10年以上継続保有の株主には「オリジナル記念品」が贈呈されます。

このように、同じ100株保有でも、長期で持つことで株主優待の内容がグレードアップするため、投資家にとってはお得感がさらに増幅します。

(参考記事)おいしい株主優待に隠された「思惑」を、企業の視点で考える

また、長期株主への優遇と同様に、創業から何年などの節目で内容を充実させた「記念優待」も増えています。RIZAPグループ<2928>は創業15周年記念優待として、既存の株主優待制度に加えて、保有株数に応じた株主優待ポイントを付与しました。

もともと株主優待は日本独特の制度。コーポレートガバナンス強化により株の持ち合い解消が進み、企業は安定株主を確保するための施策として、自社の〝ご贔屓さま(個人で長期保有してくれる株主)〟を優遇する姿勢を鮮明に打ち出している、というわけです。

[株主優待の最新トレンド②]優待の新設&拡充で株価が急騰

2018年だけでも、新設された優待は100を超えます。株主優待内容を拡充する(より手厚くする)傾向も続いており、発表後翌日には株価が急騰することが多くなっています

一家ダイニングプロジェクト<9266>は食事優待券を新設すると同時に、1株→2株の株式分割の実施を発表し、翌営業日の株価はストップ高となりました。

ファンケル<4921>は1株→2株の株式分割に伴い、従来の必要投資額の半分となる100株以上が新設され、さらに200株以上の優待品の額面も1.2倍に拡充(6か月保有が条件)されました。好決算も後押しして、翌営業日の株価は10%以上も上昇しました。

(参考記事)株式分割は本当にプラス効果? あの“高嶺の花”にも手が届くけれど

こうした優待新設で特に目立つのはクオカードです。現金同様に使えるため個人投資家に人気があり、新設発表後は急騰する銘柄も多く見られます。

[株主優待の最新トレンド③]バリュエーション広がる「選択制」

株主が自ら優待品を選択できる「選択制優待」もバリュエーションが広がっています。様々な商品から好きなものを選べるカタログギフトは人気の優待です。雑貨・名産品が選べる大和証券グループ本社<8601>、オリックス<8591>は全国のご当地グルメが選べます。

また、ポイントに応じた優待が選べるものもあります。バリューHR<6078>は保有株数や保有継続年数に応じてカフェテリアポイントを贈呈、健康診断の受診やディズニーリゾートのパークチケットの補助券の購入に使うことができます。

コメダホールディングス<3543>は「コメダ珈琲」で使える専用電子マネーKOMECAにプラスして、議決権を行使した株主に対しては謝礼として、KOMECAに500円分のチャージを行います。

(参考記事)時代とともに移り変わる、株主優待の“お得”な歴史をひもとく

社会貢献型の株主優待を選択できる企業も増えています。こうした株主優待では、福祉や教育支援、世界遺産の保全などを目的に寄付を選べます。

たとえば、アサヒグループホールディングス<2502>は同社製品または東日本大震災復興支援活動への寄附を選択することができますし、コンタクトレンズのメニコン<7780>はトキ保護基金などへの寄附を選ぶことができます。

銘柄選びは「配当+優待」でチェック

このように多種多様化している株主優待ですが、必ず確認しておきたいのが「配当利回り」と「優待利回り」です。

  • 配当利回り(%)……1株あたりの配当金÷購入株価×100
  • 優待利回り(%)……株主優待の価値÷購入金額×100
  • 実質利回り(%)……配当利回り+優待利回り

配当利回りとは、購入株価に対して1株あたりの配当金の割合を示すもので、優待利回りは受け取る優待品を現金に換算した場合の額を、購入額で割って算出します。この「配当+優待」利回りを合わせた実質利回りが高いほど「お得」な銘柄といえます。

例:優待券で人気のヤマダ電機<9831>の場合
  • 配当利回り=1株当たりの配当金13円÷株価572円(2019年3月15日終値)×100=2.27%
  • 優待利回り=株主優待の価値3,000円÷57,200円(100株購入)×100=5.24%
  • 実質利回り=2.27%+5.24%=7.51%

東証1部に上場する企業の予想配当利回りは2%弱ですが、優待と組み合わせると実質利回りが5%以上の高利回りとなっている銘柄もゴロゴロ出てきており、投資対象として魅力度が増しています。

ただし、業績悪化で株価が下落したことによって利回りが高くなっている場合もあります。さらに業績悪化が続けば優待を改悪・廃止するリスクが高まるので、ファンダメンタルズ分析の要素からも評価する必要があります。

優待投資の新たな注意点

投資する際の注意点も、従来から変わりつつあります。

「保有条件付き」の会社が増加すると、株主優待を受け取る権利を得る「権利付き最終日」に向かって株価が上昇し、「権利落ち日」(権利付き最終日の翌営業日)以降には下落する……という優待独特の株価の動きを狙った手法が必ずしも有効ではなくなる可能性があります。

さらに、もらえると思っていた優待が条件が足りずにもらえなかった! という残念なケースも頻繁に耳にするようになりました。購入する前に、必ず「優待がもらえる条件」をしっかりと把握しておきましょう。

「権利付き最終日」が変更に!

株主優待をもらうには「権利確定日」に株主であることが必要ですが、2019年7月16日から、優待の権利を得る最終取引日が1日遅くなります

というのも、2019年7月16日以降、株の受渡期間が短縮されるのです。これにより、現在は権利確定日を含めて4営業日前が「権利付き最終日」で、その日までに株を買う必要がありますが、2019年7月16日以降は、3営業日前が「権利付き最終日」となります。

ということは、7月31日が権利確定日の場合、例年通り4営業日前(2019年の場合なら26日金曜日)で権利が取れたと勘違いして29日に売却してしまうと、せっかくの優待がもらえなくなりますので、ご注意ください。

優待狙いでもリサーチは入念に

魅力的な優待が増えているため、ついつい優待内容にばかり目を向けてしまいがちですが、企業の業績面を確認するのはもちろんのこと、その優待品が自分のとって本当に「お得」かどうかを検討することも重要です。

食事券をもらっても使える店舗が近くになかったり、自分ではどう考えても使いそうにない製品だったり、もっとお得な別の方法で入手可能だったり……といったことに、優待品が届いたあとになって気づくケースは意外とあるものです。

優待狙いといえども、リスクを取って資金を投じていることに変わりありません。銘柄を入念にリサーチし、様々な角度から検討することで、株本来の楽しさも知ることができるようになるでしょう。

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2019/03/18
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[筆者]岡田 禎子
岡田 禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。 日本証券アナリスト協会検定会員(CMA) ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
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