3月の株価はどうなる? 人気の高配当株に最後の買いチャンスがやってくる

岡田禎子
2025年2月28日 12時00分

《3月はひな祭り、4月はお花見……と、月によって誰もが思い浮かべる共通のイメージがあるように、株式投資にも「◎月といえば▲▲▲株」といったお決まりの銘柄があります。では、3月に恒例の上昇しやすい銘柄とは?【今月の株価はどうなる?2025】》

〈参考〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは

3月に上昇しやすい銘柄は?

3月は期末に向けて盛り上がる月です。

上旬から中旬はアメリカ株が下落しやすい季節性があるため、日本株も〝連れ安〟となりやすいのですが、中旬以降は配当・優待取りの動きや権利落ち分を再投資する買いなども入って、月末に向けて上昇しやすくなります。

そんな3月相場で株価が上昇しやすいのは、どのような銘柄でしょうか?

過去10年(2015~2024年)で3月の勝率が高かった銘柄を調べてみました。6勝4敗というまずまずの成績の日経平均株価よりも勢いのある成績の銘柄の顔ぶれを見ると、食料品、卸売、内装、建設、住宅、ブライダル、外食、電機機器など様々な業種が並びます。

もちろん、過去に上昇したからといって今年も上がるとは限りませんが、相場の季節性(アノマリー)からその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。

3月のアノマリーで上がる株

3月に強い銘柄として知られるのが積水ハウス<1928>です。

過去10年は9勝1敗。前月比の騰落率は2021年が+18.88%で、2022年は+1.07%、2023年は+4.59%、2024年は+5.24%となっており、好成績を維持しています。

この株価上昇のポイントとしては、成長性と3月に発表される本決算が要因として挙げられます。

「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョンに掲げるハウスメーカー大手の積水ハウスですが、国内外での不動産開発も手がけています。国内市場の縮小に伴って事業のポートフォリオ化を押し進め、近年は特に海外事業の好調で高成長を遂げてきました。

なかでも社運を賭けた大勝負に出たのは、2024年1月のこと。米ハウスビルダーのM.D.Cホールディングスへ7000億円もの巨額投資を行い、完全子会社したのです。これによりアメリカでの住宅供給戸数は全米5位、日本勢ではトップに躍り出ることになりました。

そんな積水ハウスは1月期決算企業で、本決算の発表は3月の上旬に行われます。ここ数年は決算内容も良好ですが、加えて、連続増配銘柄としても知られていることから、決算発表において増配が発表されることも3月の株価上昇につながっていると考えられます。

今年の決算発表は3月6日に予定されています。会社予想では念願の売上高4兆円を達成し、営業利益でも3200億円(前期比18.1%)の増益見込みとなっています。

さらに今期(2026年1月期)も、アメリカの金利引き下げや減税は住宅需要にはプラスであり、買収したMDC社も通期での寄与となることから(2025年1月期は8か月のみだった)、2ケタ増益が続くと予想されています。

好調な決算で、今年の3月も株価は再び上昇となるか? 連続増配や自社株買いの復活が発表されるかどうかとあわせて注目したいところです。

3月は外食・飲食関連が上がりやすい

3月は外食・飲食関連で業績の良い銘柄の株価が上がりやすい時期です。3月期より一足早い2月期決算企業で好調なところは安心感があり、また、2月の春節の結果が次々に発表されることから春の行楽シーズンへの期待感なども加わります。

2025年の春節の移動は延べ90億人に達し、過去最高を記録したもようです。日本政府がビザ要件を緩和したことなどから、中国人観光客の再度の日本ラッシュ、その第一弾となった可能性が高いと見られています。

  • ハブ<3030>……2月期決算。第3四半期に上方修正し、本決算での着地も大幅な増益見込み。多くの日本人選手が出場予定のMLB東京シリーズ(3月)での盛り上がりにも期待。
  • 北海道コカコーラ<2573>……上掲「3月相場に強い銘柄」にも登場。2月7日の本決算発表は27.9%の大幅な経常増益で着地。今期も10.9%の増益の見通し。
  • FOOD & LIFE COMPANIES<3563>……訪日客にも大人気の「スシロー」を展開。2月に発表した第1四半期発表で早くも大幅増益を出し、株価は新高値圏に突入中。
  • 東和フードサービス<3329>……同じく訪日客に人気の高級喫茶「椿屋」を展開。1月の既存店売上高は月次で105.6%となり、連続100%超えで好調推移中。

高配当株に最後の買いチャンス

3月は、3月末に待ち受ける3月期決算企業の権利取りに向かって、最後の買いチャンスです。

日本の上場企業の2025年3月期の配当総額は約18兆円にのぼるとされ、4年連続で過去最高となる見通しです。

従来は、権利取りの動きが活発化するのは2月でしたが、昨年から始まった新NISA組の参入も目立つことから、今年は権利付き最終日(3月27日)が近づくほどに注目を集める可能性もありそうです。

高配当利回りを狙うなら、期末一括配当の銘柄にも注目したいところ。たとえば公共事業関連は、季節性から1〜3月の収益ウエイトが高いため、中間配当なしの期末一括配当が多く、所有期間利回りが高くなります。

期末一括配当銘柄で人気といえば、配当利回りが5%以上のグランディハウス<8999>、3%以上の熊谷組<1861>、大豊建設<1822>、雪印メグミルク<2270>などが挙げられるでしょうか。

ただし。これらの銘柄に投資する際は、その後の配当落ち(権利落ち)による株価下落までを視野に入れて、しっかりと計画を立てることが肝要です。

3月の日経平均株価はどう動く?

過去のチャートを確認すると、3月の日経平均株価は前半が下落しやすく、後半は上昇しやすいという特徴があります。

前半は、アメリカ株が下落しやすい季節性があることや、金融機関や企業による持ち合いの解消などで売りが出やすく、日本株は調整になりやすい傾向にあります。

しかし後半は、配当・株主優待を狙った動きに加えて、配当再投資の先物買い流入などで需給が好転し、期末に向かって上昇しやすくなるのです。

株価に影響を与える重要イベントが続々

さらに、今年は日銀の金融政策にも影響する春闘に注目が集まっているほか、中国の全人代、日米の中央銀行会合など、マーケットの波乱要因となりうる重要イベントが3月に控えています。

日銀は、春闘に向けた賃上げ関連の動きを見て、利上げ時期を判断する方針です。

ちなみに足元では、基本給と定期昇給を合わせた賃上げ率を全体で5%以上とする連合(日本労働組合総連合会)に対し、中小企業では6%以上とする方針を掲げており、2024年(5.1%)と同一水準での賃上げ継続となるのでは、と見られています。

5日から開催される予定の全人代(全国人民代表大会)では、2025年の経済成長率の目標が5%前後に設定される見通しです。消費拡大に向けた景気対策などにより、中国株の本格的な上昇となるのか? 注目が集まります。

そして、気になる中央銀行の動きでは、18・19日に日銀金融決定会合と米FOMC(現地時間)が開かれます。米FRBは当分利下げしない姿勢を明確にしていますが、日銀は追加利上げの可能性も指摘されています。

マーケットでは今のところ7月の追加利上げが優勢となっていますが、春闘の動向次第では3月に早まる可能性もないとは言えません。利上げとなれば日本株や為替に大きな影響を与えますので、注意を持って見守りたいところです。

MLB開幕戦であの銘柄が再び沸く?

前半と後半で雰囲気が異なる3月相場。その傾向と株価が上昇しやすい銘柄をご紹介しましたが、もちろん「恒例」だからといって今年も必ず上がるとは限りません。

重要イベントも目白押しで気の抜けない日本市場ですが、期末に向けて上昇し、例年強いことで知られる4月相場に続く……? という期待も膨らみます。

期待が膨らむといえば、米メジャーリーグ(MLB)のロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブスの開幕戦が、3月18日・19日に東京ドームで行われます。ドジャースは山本由伸投手、カブスは今永昇太投手が先発を務めることがすでに発表されており、大いに盛り上がりそうです。

かつてWBC優勝に日本が沸いたとき、大谷選手と名前が同じというだけで株価が上がった大谷工業<5939>は、今回もまた急騰するのでしょうか?

そんな個人投資家ならではの楽しみもある3月相場。ちょうど桜の開花も始まる頃です。新年度相場への期待とともに賑やかな春を酔いたいですね。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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