社会課題と向き合って成長 2024年相場で投資家の目を引いた銘柄たち
《日経平均株価が史上初めて4万円の大台を突破し、新たな領域に足を踏み入れた2024年。夏の急落はあったものの、今年も多くの銘柄が相場をにぎわせました。2024年相場を振り返って、かぶまど執筆陣の注目銘柄を紹介する【今年の銘柄2024】》
人手不足に悩む企業を支えて成長
2024年を代表するベンチャーIPO
・タイミー<215A>
2024年のIPO組で最もベンチャーらしい銘柄と言えば、タイミー<215A>でしょう。スキマ時間のバイトサービスという、それまでニーズはありながらも実現していなかったサービスを展開して急成長を遂げ、7月に時価総額1700億円超で上場しました。
その後、9月初旬までは初値(1450円)を超える水準で取引されていましたが、9月半ばから株価は下落し、11月半ばには1000円割れ。ただ、12月半ばに好決算を発表して一時1500円台まで上昇するなど、時価総額1300億円台を維持しています。
その一方で、いわゆる「闇バイト」の入り口としてサービスが利用されているとの報道があり、タイミーは対策を迫られました。また、メルカリやパーソルなども同様のサービスに参入し、競争が進んでいます。
IPO後に逆風が吹いた形のタイミーですが、依然として続く人手不足に頭を悩ませる企業と、空き時間に気軽にアルバイトをしたい人々とのマッチングニーズは依然として健在で、業績の伸びは続いています。
2024年を代表するベンチャーIPOとしてこの先も成長が続き、2025年に改めて株価上昇を見せてくれるのかに注目です。
積極的な投資で高まる存在感
・コプロ・ホールディングス<7059>
広範な産業分野で「2025年問題」が指摘されている。建設業界しかり。3K(きつい・汚い・危険)という従来からの指摘に加え、労働力の減退に加速度的に直面している。
経済産業省の試算では、業界の労働者に占める65歳以上の割合は42.4%。「10年後には大半が引退してしまう」としている。一方、20歳から24歳の若手層は12.9%に留まり、人材の確保と育成が喫緊の課題だ。
そんな現状で注目されるのが、建設現場向けの人材派遣業企業で実績を積んでいる存在。求められる業態であり競争の激しい環境にあるが、コプロ・ホールディングス<7059>は、人材確保投資と向き合いながら着実にその存在感を高めている。
人材こそ命の業態。過去の決算資料には「旺盛な人材需要に継続に対応するため、前年度比3倍近い採用コストを積極的に投入」「採用人数は過去最高を記録」などの文言があり、コストを惜しまない体質が見て取れる。
収益動向も顕著だ。2023年3月期は、20.5%増収の18.5%営業減益。2024年3月期は、28.2%増収、62.0%営業増益。そして今期は、24.5%の増収、26.1%の営業増益という計画で立ち上がり、すでに連続の過去最高益更新を確実視させている。
好調な需要に対し、コストを投じて盤石なスタッフ構造を確立したことが好収益を呼び込み、それがまた採用増という好循環を生み出している。
もっと多様な社会の実現に向けて
連続増益は求められている証し
・ココルポート<9346>
障害者の数が増加傾向にある。内閣府の「障害者白書(2023年版)」によると1160万2000人。いまや障害者の雇用機会の積極的な創出は、大きな社会的課題である。
民間企業が雇用する障害者の数は約61万人で、雇用率は2.25%(厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果(2022年)」より)。ともに過去最高を更新しており、「着実に進んでいる」としたい。が、法定雇用率の2.3%(2022年時点)には達していない。
その法定雇用率は今年4月に2.5%に引き上げられ、2026年7月には2.7%まで上がる計画だ。それだけに企業には一段の積極姿勢が求められるが、これを実現するには、障害者雇用を後押しする存在が求められる。
ココルポート<9346>は、その一翼を担う1社。障害者の就労移行や技術支援などの障害者福祉事業を1都3県(神奈川・千葉・埼玉)を中心に展開し、支援拠点は2020年6月末の48から今年6月末で94と倍近くに増加している。
利用者の定着率は2020年以降およそ9割を維持し、就労支援・自立支援に対して適宜な施策が執られていることが見て取れる。
状況は収益動向にも反映されてもいる。上場直後の2023年6月期は、21.7%増収、61.0%営業増益。2024年6月期は、13.1%増収、15.0%営業増益。そして今期は、14.6%増収、11.9%営業増益に加え、配当を開始する計画で立ち上がった。
世の中から求められている企業の証し、と言えよう。
大手企業の範となることに期待
・ソラスト<6197>
先日、医療事務の受託事業や介護・保育園事業を展開するソラスト<6197>から『介護施設や保育園で活躍する「ソラストフォルテ」の仲間たち』と題するプレスリリースが送られてきた。
ソラストフォルテはソラストが創設した特例子会社で、約90人の社員は全員、障害者だ。特定子会社とは、一定の条件を満たして厚労相に認可されると設立が可能となり、その社員は親会社(グループ)の障害者実雇用数(率)として計算される。
ソラストフォルテの社員は、外部企業から委託された社員証・名刺作成やデータ入力・PDF化、社内清掃などの業務を手がけてきたが、最近では、デイサービスやグループホームなどの介護施設のほか保育園の現場でも活躍しているという。
具体的には、利用者の風呂・トイレ掃除、食器洗い、送迎車の洗車、おやつの準備、おもちゃの消毒、花壇の手入れ、園内外の清掃・整理整頓……などなど。
大手企業などは、ソラストのように特例子会社方式を活用し、もっと積極的に障害者雇用と向き合うべきではないだろうか。
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