11月の株価はどうなる? 圧倒的な「勝ち月」に注目したい銘柄と注意すべきニュース

岡田禎子
2023年11月1日 13時00分

《マーケットにはその月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)が存在します。それらを知っておけば、地合いが好転した際にも逃さずチャンスを掴むことができます。年末に向けて上昇しやすい傾向にあるという11月相場の特徴とは?》

11月相場は地合い好転で強い

11月は、地合い好転で株価が上昇しやすい月です。

上旬から中旬にかけては、3月期決算企業の中間決算発表が本格化します。ソニーグループ<6758>や大手商社など投資家大注目の決算発表が続々と行われます。

中旬から下旬にかけては12月末の配当取りの動きが活性化します。特に最終週は年末商戦期待や配当支払い効果で年間を通じて上昇しやすい週となっています。

1日に開催されるFOMCでは追加利上げの有無が焦点となります。また、3日の雇用統計や14日のCPI(消費者物価指数)も、その内容次第では株価に大きな影響を与えるために注視したいところ。15日には、MSCIの定期入れ替えが発表されます。

騰落率は圧勝! 外国人も戻ってくる

11月は、月別の騰落率で12月と1・2位を争う「勝ち月」です。過去10年間の日経平均株価の月別騰落率は9勝1敗と圧勝で、さらに、2012年から2020年かけては9年連続負けなし! アノマリー的に大変上昇しやすい月と言えます。

これは、3月期決算企業の中間決算発表が一巡し、年末へ向けて国内外の機関投資家が運用姿勢を高める傾向があるためです。特に過去10年を見ると、「暗黒の9月相場」を抜けたのちは外国人投資家も戻り、10・11・12月と買い越し姿勢を強める傾向が顕著になっています。

さらに、アメリカ系ミューチュアルファンドの節税売り通過による需給好転や、為替相場的に円安ドル高傾向になりやすいことも、背景として挙げられます。11月に円安傾向になるのは、年越しのドル資金調達圧力が強まりやすいためで、輸出企業が主力である日本株にはプラス要因となります。

特に最終週は、3月期決算企業の中間配当金が支払われる時期で、その配当金が再投資に向かうため(「配当支払い効果」という)、年間を通じても株価が上昇しやすい週となっています。

11月の日経平均株価はどう動く?

では、実際の日経平均株価はどのように動いたのか、過去3年の値動きをチャートで確認してみましょう。

・2020年11月の日経平均株価

注目のアメリカ大統領選は民主党のバイデン氏勝利となったものの、議会選では共和党が善戦。経済政策が続くとの見方が広がったことや、開発中の新型コロナワクチンの有効性が示されたこと、また日米欧の中央銀行が金融緩和の継続姿勢を維持していることなどから、株式相場は日米ともに堅調な展開となりました。

・2021年11月の日経平均株価

前半は、衆院選での自民党圧勝による経済対策への期待や、企業の中間決算の好内容を受けて、堅調に推移しました。しかし、後半から月末にかけては、新型コロナの「オミクロン型」の感染拡大懸念が強まり、経済活動の停滞への不安から日米ともに株価は大きく下落となりました。

・2022年11月の日経平均株価

10日発表の米CPIが市場予想を下回ったことから、FRBの利上げペース減速観測につながり、アメリカ株の上昇に合わせるように日本株も上昇しました。ただ、外国為替相場で円高に振れたことから、輸出企業を中心とした日本の主力株はアメリカに劣後する格好となり、投資家の資金は内需・高配当株に向かいました。

過去3年のチャートを見てみると、2021年はオミクロン株で最後に大きく下落したものの、2020年、2022年ともに月末に向けて右肩上がりの上昇傾向にあります。

これは、需給の好転しやすい季節性に加えて、3月期決算企業の中間決算発表から業績好調の銘柄が買われ、株価が大きく伸長する時期であることも、その理由として挙げられます。

今年の日本株も、円安効果も加わって好決算が予想されています。

ただし外部環境は、アメリカの金利動向やウクライナや中東などの地政学的リスク、原油高など先行き不透明な要因が多々あります。年末高に向けてしっかりとした発射台が築かれるのか? もしくはリスクオフとなってしまうのか? 常にアンテナを張って注視する必要がありそうです。

中間決算でマーケットはここを見る

11月は、3月期本決算企業の中間決算発表が本格化します。

注意したいのは、上方修正が発表された銘柄でも株価はネガティブな反応を示す場合があることです。なぜなら市場は、市場コンセンサスとの比較を重要視するからです。「市場コンセンサス」とは、アナリストなどが発表する企業収益予想の平均を指します。

たとえば、A社が中間決算発表を行い、業績好調のため年間利益予想を100億円から120億円に上方修正したとします。ところが、株価は上昇するどころか、大きく下落してしまいました。

実は、A社の年間利益のコンセンサス予想(市場コンセンサスにおける予想)は130億円でした。実際の上方修正の数字(120億円)が、このコンセンサス予想を上回ることができなかったために、投資家の反応はシビアなものとなり、失望売りや当面の材料出尽くしで売られてしまい、株価が下落したのです。

投資家にとって「上方修正」は大好きなワードですが、市場コンセンサスが高い場合、それに届かないはむしろネガティブな反応を示します。高い期待から事前に急騰していたり、すでに株価に織り込まれていたりしているため、材料出尽くしの利益確定売りや失望売りが出やすくなるのです。

業績が好調であっても市場コンセンサスを下回れば一旦は売りの材料視される、ということを想定しておく必要があります。市場コンセンサスは株情報サイトなどでチェックできます。値動きに大きな影響を与えることがありますので、特に決算期は確認するように努めましょう。

11月相場のイベント投資

11月にある大イベントを2つ、関連銘柄も合わせてご紹介します。

中国の「独身の日」で高騰が期待できる銘柄は?

「11月11日」。1が4つ並ぶこの日は、中国では「独身の日」と呼ばれます。

2009年、EC最大手のアリババが、この日を一大商戦の日にしようと大セールを始めました。2022年の取扱高は前年比103%の9.8兆円。ここ2年は横ばい傾向にはあるものの、流通取引総額を年々更新して話題となる一大イベントに成長しました。

昨年は、大手2社が異例の「売り上げ非公表」としたことでも波紋を広げました。量から質への戦略そのものの変更や、中国政府の共同富裕政策の影響などと言われています。

この「独身の日」関連銘柄といえば、筆頭として挙げられるのが美容機器メーカーのヤーマン<6630>。5年連続で1日の販売実績1億人民元を達成しています。2022年はセール後すぐの16日に上期の予想を上方修正してストップ高となりました。

その他には、「Nintendo Switch」の任天堂<7974>、スキンケア主体の化粧品メーカーであるアクシージア<4936>、資生堂<4911>などが挙げられます。

ブラックフライデー&サイバーマンデーでにぎわう日本株は?

アメリカのブラックフライデーは、祝日であるサンクスギビングデー(感謝祭。11月の第4木曜日)翌日の金曜日。この日を皮切りに、アメリカでは年末商戦が始まります。

さらに、感謝祭の次の月曜日はサイバーマンデーです。金曜日から日曜日までは実売店を見て回っていた買い物客が、月曜日はネットに向かうことから、それを狙ってオンラインショップが一斉に大セールを敢行。小売業者の売上が年間を通じて最も多い日のひとつとなっています。

これらイベントは個人消費の動向を計る指標にもなっており、ここからの年末商戦への期待の高まりとともにマーケットの転機となる可能性もあります。また、何が人気商品となったかで、個別株への影響も与えやすいとされています。

日本でもアメリカに倣い、ブラックフライデーでセールを実施する企業が多くあります。関連銘柄としては、任天堂<7974>やファーストリテイリング<9983>、イオン<8267>や楽天グループ<4755>、エービーシー・マート<2670>、ビックカメラ<3048>など。

気になるのは海の向こう?

アノマリー的には大いに期待できる11月相場。

ただし、FOMC(連邦公開市場委員会)で追加利上げの実施が決定されれば、マーケットが再び揺らぐ可能性もあります。FOMCは年内にあと2回、11月1日の次は12月23日にも予定されていますので、注意して見守りたいところです。

無事に通過すれば、年末高に向けて過去のアノマリーを参考に、投資チャンスを逃さず掴みましょう。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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