10月の株価はどうなる? 消費税増税とラグビーW杯で急騰する銘柄とは

岡田禎子
2019年9月26日 8時30分

 

さまざまな要因から「株価が大きく動きやすい」と言われる10月。過去3年の日経平均株価の推移を見ても、それは一目瞭然です。今年は消費税が上がることで景気減速も心配されますが、反対に、それが追い風になる銘柄も。また、10月恒例のイベントで急騰が期待される銘柄とは──

10月相場はボラティリティが高くなりやすい

10月はボラティリティ(変動率)が高くなりやすい月と言われています

アメリカの投資信託による売りが出やすく、企業による自社株買いも縮小するため、株価は軟調になりがちです。日本では3月期決算企業の中間決算発表が本格化しますので、その内容次第で株価が大幅に動くこともあります。

初旬に発表されるノーベル賞の結果次第では関連銘柄が注目され、月末に気象庁の冬予報が出されれば前もって厳冬関連銘柄を仕込む、といった収益チャンスが期待できます。

しかしながら、2019年は消費増税が実施されるほか、イギリスが「合意なきEU離脱」に踏み切るリスクも残されており、相場の動向を慎重に見極める必要がありそうです。

株価の振れ幅が大きくなる理由

10月はアメリカのミューチュアルファンドの決算月にあたるため、節税対策の売りや、ヘッジファンドの解約に備えた換金売りが出やすくなります。それに加えて、アメリカ企業の決算発表月でもあり、企業による自社株買いを自主的に控えるブラックアウト期間となって買いも縮小します。

こうした理由から、10月の株価は軟調になりがちです。

一方、日本も3月期決算企業の中間決算発表が本格化するために、上方修正や下方修正などで、株価が大きく動きがちです。2019年は、7月以降に業績予想を修正した96社のうち約7割が下方修正となっていて、中間決算発表では一段と見通しが悪化する可能性もあります。

過去3年間では、2016年は円安・ドル高の影響、2017年は世界的な好景気や衆議院選挙での自民党大勝などで外国人投資家の買い越しとなり、両年とも株価は大きく上昇しました。しかし、2018年は米中貿易摩擦への懸念から2,000円超えの下落となるなど、株価の振れ幅が大きい月となっています。

(Chart by TradingView

地政学的リスクに要警戒

2019年は、米中貿易摩擦の激化や中東情勢、イギリスのEU離脱といった地政学的リスクの脅威が世界中の投資家を脅かしています。

地政学的リスクとは、特定の地域が抱える政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりが、その関連地域の経済や世界経済全体の先行きを不透明にすることを言います

なかでも10月は、イギリスの合意なきEU離脱(ハードブレグジット)のリスクが懸念されます。9月には議会で、合意に達しなければ離脱を延期する法案が可決されましたが、首相は「合意がなくても10月末にはEU離脱」という姿勢を崩しておらず、予断の許さない状況が続いています。

・ハードブレグジットが日本株に与える影響

イギリスの混乱は、日本株にとって決して「対岸の火事」ではありません。というのも、日本株はイギリス国債の金利と相関性が高く、ハードブレグジットのリスクが高まってイギリス国債の金利が低下すれば(価格は上昇)、それが日本株の下落につながる懸念があります。

また、日本株の売買シェアでは、ヨーロッパの外国人投資家が7〜8割と圧倒的な存在感があるため、金融センターであるロンドンやEU全体が混迷することは、日本株へのインパクトも非常に大きいものとなるでしょう。

2016年6月に国民投票によってEU離脱が決定した際には、日経平均株価は1,200円以上を下げる暴落となりました。その衝撃を記憶している方も多いでしょう。10月末の離脱期限まで警戒を怠らないほうがよさそうです。

消費増税で得をするのは誰だ?

いよいよ、2019年10月1日から消費税が8%から10%に増税されます。消費の低迷によって景気を冷やす懸念があり、相場環境によっては警戒が必要となるでしょう。

しかしながら、増税によって恩恵を受ける銘柄もあります。たとえば、酒類・外食を除く飲食料品は8%に据え置かれる「軽減税率」の導入によって、デリバリーやテイクアウトの需要拡大への期待感から、関連銘柄に注目が集まっています。

また、増税にあわせて国によるポイント還元が実施されることから、キャッシュレス決済の関連銘柄にも関心が高まっています。決済サービス企業やシステム開発企業、対応機器を手がける企業、スマホ決済アプリを提供する企業などが物色される可能性があります。

増税後は一時的に、イベント通過による材料出尽くしとなる可能性もありますが、キャッシュレス後進国の日本を変えようとする「国策」でもあるため、息の長いテーマとなりそうです。

消費増税による恩恵が期待されている銘柄

  • わらべや日洋ホールディングス<2918>……中食業界トップで米飯類が主力。セブン-イレブン向けが中心。
  • ライドオンエクスプレスホールディングス<6082>……調理食材の宅配、すしの「銀のさら」運営。
  • 吉野家ホールディングス<9861>……全国展開する牛丼チェーンの老舗。
  • GMO ペイメントゲートウェイ<3769>……GMO系列のカード決済代行会社。
  • LINE<3938>……スマホ決済アプリ「LINE Pay」が注目。

ノーベル賞関連銘柄に注目

10月の恒例イベントとして、初旬に発表される「ノーベル賞」があげられます。

市場が注目しているのは、医学生理学賞(10/7発表)、物理学賞(10/8発表)、化学賞(10/9発表)の自然科学3分野です(いずれも発表日は2019年)。特に医学生理学賞はバイオ関連銘柄との関連性が強く、他の分野に比べて株価の上昇率も高いため、投資家の熱い視線が集まります。

2018年には京都大学特別教授の本庶佑氏がこの医学生理学賞を受賞し、関連銘柄が上昇しました。

・小野薬品工業<4528>

小野薬品工業<4528>は医療用医薬品専業の中堅企業で、先駆的がん免疫阻害剤「オプジーボ」が成長の牽引役となっています。

2018年10月1日、この「オプシーボ」につながる研究をした本庶氏らが選出されたことが発表されると、翌2日は買い気配でのスタートとなり、株価は大幅高となります。しかし、その日をピークに、その後は右肩下がりとなってしまいました。

(Chart by TradingView

このように、9月中頃から受賞の期待が高まるとともに株価も急騰しやすく、受賞発表当日に高値をつける、というのがノーベル賞関連銘柄の特徴です。ニュースを聞いてから慌てて買っても高値づかみに終わる可能性が高い、ということですので注意しましょう。

2019年に注目を集めているノーベル賞関連銘柄

  • タカラバイオ<4974>……遺伝子研究用試薬やiPS細胞などの再生医療を手がけるバイオベンチャー
  • アンジェス<4563>……遺伝子医薬品を手がけるバイオベンチャー
  • ヘリオス<4593>……iPS細胞による難病・治療薬開発を手がけるバイオベンチャー

厳冬対策は早めが肝心

毎年10月25日頃、気象庁の冬予報(3か月予報)が発表されます。ここで厳冬という予想が出された場合は、厳冬関連銘柄に注目が集まります。特に寒さが厳しい時期に需要が増える商品やサービスを提供している銘柄群です。

2017年から2018年にかけての冬は、北陸地方で記録的な大雪になるなど、寒さに大変厳しい冬となりました。そのため、暖房機器や燃料、シャベル、マスク、冬物衣料などを手がけるメーカーや、除雪を行う企業、スタッドレスタイヤを販売する小売企業が、市場の注目を集めました。

こうした、いわゆる「シーズンストック銘柄」は早めに仕込んでおくことが肝要です。つまり、厳冬になってから物色しても手遅れ、ということ。だからこそ、10月後半に出される冬予報が大きな判断材料となるのです。

代表的な厳冬関連銘柄

  • 浅香工業<5962>……ショベル類の大手メーカー。
  • タカキタ<6325>……飼料系農機が主体。厳冬なら除雪機の需要が高まる。
  • オートバックスセブン<9832>……カー用品国内最大手。冬用タイヤの需要拡大に期待。
  • コロナ<5909>……石油暖房機の大手。
  • ファーストリテイリング<9983>……「ユニクロ」を世界展開。ヒートテック需要に注目。

相場は10月に底を打つ?

10月の株式相場は、古くから「ハロウィン効果」とも言われています。10月31日のハロウィンが終わると株が上がり出す、というアノマリーです。また、「10月に買って4月に売れ」という格言もあり、過去を振り返ってみても、日本株は1年を通してこの時期に底を打つことが多くあります。

特に2019年は、消費増税やハードブレグジットといった難題も山積していますが、見方を変えれば、注目銘柄を割安に買えるチャンス到来とも言えます。年末のリバウンド相場に向けて、警戒感は持ちつつも、期待を抱いて相場に臨みたいものです。

【追記】大盛り上がりのラグビーW杯で上がる株 (2019/10/03 09:00)

ラグビーワールドカップ2019」が9月20日から始まり、日本が初戦快勝で好発進するとともに関連銘柄も熱く盛り上がっています。

英国風パブ「HUB」などを展開するハブ<3030>はその代表格。

当初1,100〜1,200円台で予想PER21倍と妥当なラインだった株価は、「ラグビー観戦時のビール消費量はサッカーの6倍」といった記事にも後押しされ、9月16日から20日にかけて4連騰。週が明けた24日には1,445円の年初来高値をつけ、株価は20%以上の上昇となりました。

その後は利益確定の売りに押されますが、28日に日本がアイルランドに勝ったことなどから再び買われ、10月2日現在は一段上がった株価形成となっています。

(Chart by TradingView

株価は「現実(EPS=1株あたりの利益)×期待度(PER=株価収益率)」だとよく言われますが、こうした旬のテーマは期待度が大きくなりやすく、ミニバブル化することも多々あります。ハブはまさに、投資家の「期待度」で株価が上下している好例と言えるでしょう。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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