PERを見るときの特別な落とし穴? 注目すべきは過去か未来か
特別なPERに要注意
割安株・割高株を判断する際の指標となるPER(株価収益率)。日々の銘柄選びに活用している人も多いでしょう。たしかに便利な指標ではありますが、状況によっては、必ずしも参考数値として役立つとは限らないのです。
PERは「現在株価÷1株当たりの純利益(EPS)」で算出することができます。つまり、株価が1株当たり純利益の何倍かを示す指標で、一般に、15倍が適正、これより低ければ割安で、高ければ割高、とされています。
ただし、「特別利益」や「特別損失」が計上された場合には注意が必要です。
特別利益/特別損失とは、企業の通常の経営活動とは直接関わりのない、特別な要因で発生した臨時的な利益/損益のことです。例えば、保有していた不動産や株式を売却したことによる利益、台風などの災害によって被った損失などが、特別利益/特別損失という科目で計上されます。
言ってみれば、数年に一度しかないような特別な利益や損失ということです。
特別利益・特別損失はEPSに影響する
PERを算出するにはEPS(1株当たりの純利益)を用いますが、特別利益/特別損失が計上された場合、このEPSが異常値を示すことが多くなります。
EPSは「当期純利益÷発行済株式数」で算出され、この「当期純利益」は、経常利益に特別利益/特別損失をあわせた額から法人税等を差し引いた金額です。そのため、特別利益が計上されると原則としてEPSは増え、それを使って算出したPERは下がることになり、一見、割安株になったように見えるのです。
反対に、大きな特別損失が計上されるとEPSは大幅に下がり、その結果、PERは大きく上がります。いきなり株価が割高になったように見えますが、いずれの場合も、これは特別利益/特別損失による一時的な状態であることも多いのです。
EPSやPERを見る際には、その大本となる「当期純利益」がどのように構成されているかにも注意を向けたほうがいいでしょう。数年に一度しかない特別利益/特別損失が計上されていれば、そこから弾き出されたEPSやPERもまた、数年に一度しかない数値となっている可能性もあり得るのです。
特別利益/特別損失は「損益計算書」に記載されており、決算短信や有価証券報告書で確認することができます。
過去を見るか、未来を見るか
もうひとつ、PERを見る際に気をつけたいのが、それが前年度の実際の純利益をもとに算出した「実績PER」なのか、それとも今年度の会社予想純利益から算出された「予想PER」なのか、という点です。
投資家的には「これからどうなるか」を見るために、予想PERをチェックするほうが参考になる、と思うかもしれません。しかし、予想はあくまで予想であり、鵜呑みにすることはできません。かといって、過去の数値だけを見ても、それが今年も継続する保証はないのです。
あくまで参考数値だが…
PERは銘柄を選ぶ際の便利な指標ですが、そもそも「割安か、割高か」を正確な数値で表すことは難しいのではないでしょうか。数値はあくまで数値と割り切って、惑わされないようにする必要があるでしょう。
とはいえ、PERやEPSはまったく参考にならない、というわけでもありません。大切なのは、その数値が何を表すのか、何が影響してその数値になったのかを理解した上で活用すること。過去の実績と将来の予想の両方をチェックしたり、同業他社と比較したりすることで、より深い分析につながるでしょう。