怒濤の円安が日本株を押し上げ。不安の残る相場でプロが気にするサプライズとは

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3月相場を振り返って
ロシアとウクライナの争いが長引いています。
3月に入って落ち着くかなと思いきや、まだ続いています。日経平均株価は争いが始まった2月24日の安値も割り込んで、一時24,717円と25,000円も割り込んでしまいました。
しかし、そこから怒濤の円安が進み、結果、日本株は為替に押し上げられて大きく上昇。終わってみれば27,821円と先月末から上昇して終わりました。配当の権利取りや年度末のお化粧買いという感じではなく、円安に押し上げられたという印象の強い後半の上昇でした。
指数 | 2月終値 | 3月終値 | 騰落率 |
日経平均株価 | 26,526円 | 27,821円 | +4.88% |
TOPIX | 1,886ポイント | 1,946ポイント | +3.28% |
マザーズ指数 | 725ポイント | 790ポイント | +8.97% |
3月相場で上がった株・下がった株
そんな2022年3月の相場を売買代金と値上がり率・値下がり率のランキングで振り返ってみたいと思います(太字はピックアップ銘柄/データ提供:CMBトレード塾)。
・2022年3月の売買代金トップ20
・2022年3月の値上がり率トップ20
・2022年3月の値下がり率トップ20
3月相場でプロが気になった銘柄
この中から、私・窪田が気になった銘柄をピックアップしてみます。
・値上がり率ランキング
- 第13位:JTOWER<4485>……+77.8%(4,070円→7,240円)
NTTドコモから鉄塔を取得し、その後の運用契約を発表したことで、月の後半に大きく上昇しました。
今年に入ってからマザーズ銘柄は大きく下落しており、いい情報がほとんどなかった状況での発表がサプライズとなり、大きく上昇しました。今月の底値3,190円からみると倍以上になっており、やはり株価には「サプライズ」が大きなインパクトを与えるということを再確認する出来事となりました。
・売買代金ランキング
- 第1位:日本郵船<9101>……3.39兆円
- 第4位:商船三井<9104>……1.93兆円
- 第5位:川崎汽船<9107>……1.66兆円
「業績がめちゃくちゃ良くて、配当が大きい」ということで大きく買われてきた海運関連銘柄ですが、3月に入っても大きく上昇し、昨年付けた高値を更新しました。
ただ、権利日(権利付き最終日)にかけて下落し、権利落ち日には配当分を大きく上回る下落をしてしまいました。ですが、2日目でどの会社も大きく値を戻し、配当を取ってそのまま保有していた人にとっては、現時点(3月31日引け後時点)では成功だったようです。
よく勘違いしている人がいるので改めて書いておきますが、配当を受けたら翌日はその分だけ株価は下落します。あくまでも理論上(下落するはず)ですが、それをわかってない人が多いので、あなたはもちろん知っていると思いますが、念のため書いておきますね。
- 第14位:INPEX<1605>……6675億円
- 第17位:三菱商事<8058>……5585億円
ロシアが戦争を始めたことで、ロシアに対する経済制裁が始まりました。「ロシアに売らない」「ロシアから買わない」ということで、エネルギー輸出大国であるロシアが経済封鎖になり、世界中でエネルギー価格が高騰しました。WTI原油先物価格は90ドルから130ドルを付けるほど上昇する場面もありました。
そんななか、エネルギー価格の高騰が会社の利益につながりやすい企業が大きく買われることとなりました。さらに、世界情勢不安のなかでもアメリカのウォーレン・バフェットが投資している商社はエネルギーでも儲かるし、安心感もあるし、最高!という感じで、改めて見直されて注目されました。
商社はまだまだアツいですね。
- 第6位:トヨタ自動車<7203>……1.64兆円
3月に入り、為替が大きく動きました。ひと月で一時10円近くの円安となり、円安メリット銘柄としてトヨタに大きな買いが入りました。
とはいえ、ここまで急激な円安になると個別銘柄への業績インパクトというよりも、インフレやスタグフレーション懸念など、別の不安要素が台頭してきてしまい、素直に買いにくい場面もありました。
まだまだ円安は続いており、不安定な情勢も続いていますが、しっかりとマーケットを監視して、通貨の棄損によって資産を減らすのではなく、資産を増加させるために学び、動いていきましょう。
ビッグウェーブを見極めろ
コロナも落ち着かないうちに戦争。原油高に円安……。不安になることばかりが続いています。
株価も暗号資産も大きく値上がりしているように見えますが、日本円が下がっているだけ、という見方もできます。このまま円安が続けば、日本の不動産がどんどん割安になり、海外勢の買いが始まることも予想できます。自国通貨が弱いというのはつらさしかない。
ですが、その流れをしっかりと掴んでいれば、例えば不動産株に資金が入り始めたらどうするか、などと考えておくことができる。そして、実際にその流れが来たときに大きな波に乗ることができるかもしれません。
原油価格や為替、暗号資産の値動きだけにとらわれず、それらが株式マーケットにどう影響を与え、どこに資金が流れ込むのかを見極めれば、大きく動く相場はチャンスにもなります。
個別の事象にとらわれず、大きな流れを見極めて、2022年を生き延びていきましょう。
(株の学校ドットコム講師・窪田 剛)