自社株買いで株価はどうなる? 上がる株・下がる株の命運を分けるものとは

山本 勧 2020/01/24

自社株買いのメリットを考える

自社株買いとは?

自社株買い」とは文字通り、「自社が発行した株式を自社で取得する」ことをいいます。基本的に株式は、投資家から資金調達をするために発行するものなので、自社株買いをすることは、発行した株式を買い戻す行為ともいえるでしょう。

個人投資家の立場から、自社株買いされた銘柄を購入するメリットとしては、買い戻された株式が消却されれば、その会社の発行済み株式総数が減り、利益配分の増加が期待できることがあります。

株式数が減っても会社の利益総額が変わらなければ、1株当たりの利益は引き上がるはずです。たとえるなら、1個のスイカを10人で分けるより7人で分けたほうが、1人が食べられる量は多くなる、という場合に近いイメージです。

また、自社株買いは通常、会社の業績が安定していなければできません。株式数を減らすということは、株主を減らす行為だからです。したがって、自社株買いをするということ自体が、経営の安定性や今後の業績アップといった前向きな要素を外部に示すことにもなります。

自社株買いが株価に与える影響

では実際のところ、自社株買いが実施された銘柄の株価はどうなっているでしょうか。最近、自社株買いを実施した銘柄の株価チャートから、その値動きを探ってみましょう。

・山一電機<6941>

半導体の検査用ソケットを手がける山一電機<6941>は、2019年5月31日に自社株買いを発表しました。その結果、5月に入って底を打っていた株価は持ち直し、6月5日には5%上昇。その後も順調に上がり続け、12月9日には、自社株買い発表前からプラス98%の1,763円で年初来高値をつけました。

自社株買いが株主に歓迎されたことが、株価上昇の大きな要因になったと考えられます。

・ソニー<6758>

2019年5月16日に自社株買いを発表したソニー<6758>の場合、株価は5,369円から翌17日には5,900円まで上昇、12月には7,500円を超えるまで上昇しました。自社株買い発表後、順調に株価が上昇した例と言えます。自社株買いによって、安定性があると株主に判断されたためではないでしょうか。

・日本電信電話<9432>

NTT日本電信電話<9432>)は2019年5月10日に自社株買いを発表。2,372.5円だった株価は、翌営業日に2,387.5円に微増、1か月後には2,500円を超える水準まで上昇しました。12月には2,806.5円の年初来安値をつけました(株価は2019年12月の株式分割後の調整済み株価)。

・大黒天物産<2791>

ディスカウントストアや100円ショップなどを展開する大黒天物産<2791>は、2019年4月12日に自社株買いを発表したものの、直後に3,895円だった株価は、5月22日には3,630円まで下がりました。7月に入って一時急上昇したものの、その後に急落。株価はさらに下落を続け、8月6日には3,080円まで下がっています。

大黒天物産の自社株買いが株価上昇につながらなかったのは、同時に発表された第3四半期の決算発表で、通期の減益予想が維持されたことが要因になったと考えられます。その後、7月に発表された本決算で前期比47.7%減という大幅減益となり、株価上昇の糸口をつかめませんでした。

自社株買い銘柄の見極めは慎重に

自社株買いが行われると、たしかに短期的には株価の上昇につながる傾向があるようです。しかし、企業に何らかの不安材料がある場合などは、一時的には上がっても、結局は元の株価に戻ったり、最悪の場合はそれ以下まで下落する可能性もあります。

いずれにせよ、長期にわたって保有するにふさわしい企業なのかどうかを株主が判断した結果が、株価となって表れているのではないでしょうか。自社株買いによって株式の希少価値が高まったとしても、今後会社として成長するかどうかは、また別の問題だからです。

自社株買いで株価が上昇した銘柄についても同じことが言えます。自社株買いだけで成長する銘柄を見分けられるなら悩まなくて済むのですが、残念ながらそうはいきません。安易に飛びつくのではなく、企業価値をしっかりと見極めて判断することが、長期投資において重要な視点です。

スイカでいえば、どんなに食べられる量が多くなろうとも、おいしくない可能性があるなら、実際に手を出すかどうか躊躇する人もいるでしょう。結果として、お得に思えるスイカが売れ残るかもしれません。みんなが買いたくなるスイカには、取り分だけではない魅力があるものです。

最後に、自社株買いに関する落とし穴をお知らせしておきます。それは、自社株買いが発表されても、必ずしも実施されるとは限らないことです。なかには、株価を上げるために自社株買いの姿勢を見せるだけで、実際には行われないケースもあるので注意しましょう。

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[執筆者]山本 勧
山本 勧
[やまもと・すすむ]不動産投資会社、会計事務所を経て独立。ファイナンシャル・プランナーとして、単にプランを作るだけでなく、具体的にどう生活すればいいかといったアドバイスを積極的に行う。個人投資家としては、生活を豊かにするため投資を実践。「お金がお金を生むシステム」をいかに早く作るかが生活を楽にする一番の近道と考え、余剰資金は基本的に投資に回している。ファイナンシャル・プランナー(AFP)、宅地建物取引主任士。ホームページ:てんせんまる
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