先物の祝日取引がスタート。個人投資家に人気の理由と、株式市場への影響は?
先物取引の祝日取引がスタート
日本取引所グループ(JPX)は、先物取引やオプション取引などのデリバティブ(金融派生商品)の祝日取引を開始することを決めました。
国内でデリバティブ取引を行う大阪取引所は、これまで、土日と祝祭日、12月31日〜1月3日を休業日としていました。土日以外の休日は、たとえば2020年では19日あり、アメリカ(完全休日3日、半休日8日)やドイツ(7日)に比べて圧倒的に多いという問題がありました。
さらに、5月のゴールデンウィークや年末年始など大型連休も多く、取引できないリスクから連休前には取引を控える投資家が多いという傾向もありました。
そこで、海外市場でも取引がない1月1日(元日)と、システム保守のために3連休の確保が必要と判断されるその他の休日(年間3~4日程度)を除いて、祝日取引を可能としたのです。休日数は年によって異なりますが、元日と土日を除く概ね5〜7日とし、欧米並みの水準に近づく見通しです。
すでに2022年9月23日から運用が開始され、投資家の利便性が向上し、市場がより活発になることが期待されています。
祝日取引ができる商品
祝日取引の対象商品および対象外の商品は、以下のとおりです。日経平均先物など海外市場との連動性が高い株価指数先物や、金などの商品先物が対象で、国債証券先物などは除外されます。
【祝日取引の対象となる商品】
- 指数先物取引
- 指数オプション取引
- 商品先物取引
- 商品先物オプション取引
【祝日取引の対象とならない商品】
- 国債証券先物取引
- 国債証券先物オプション取引
- 有価証券オプション取引
祝日取引ができる時間と日程
祝日取引でも、取引時間は一部を除き平日と同じです。
- デイ・セッション………8:45~15:15
- ナイト・セッション……16:30~翌6:00
直近から年度末までの祝日取引の日程は次のとおり。
- 9月23日(金)秋分の日……………実施
- 10月10日(月)スポーツの日………実施
- 11月3日(木)文化の日……………実施
- 11月23日(水)勤労感謝の日………実施
- 1月2日(月)年末年始休業日……実施しない
- 1月3日(火)年末年始休業日……実施
- 1月9日(月)成人の日……………実施しない
- 2月23日(木)天皇誕生日…………実際
- 3月21日(火)春分の日……………実施
2022年4月以降の日程は、日本取引所グループのホームページで確認できます。
先物取引をする個人投資家が増加中
先物取引に対する個人投資家のニーズが高まっています。
新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカ株式市場が急落した2020年3月には、大阪取引所で個人を中心とした夜間取引の割合が初めて5割を超えました。株価下落に対するヘッジ取引として、先物取引を利用した投資家が多かったと考えられます。
2022年7月の月間取引を見ても、委託取引における個人投資家の割合は23.2%と、海外投資家の76.2%に次いで2番目の大きさとなっています。
日経225先物取引とは
先物取引の中でも取引が多いのが「日経225先物取引」です。
日経225先物取引は、日経平均株価を原資産とする株価指数先物取引で、大阪取引所等に上場しています。TOPIX先物や日経225オプションと並んで、日本を代表する株価指数を原資産とするデリバティブ取引で、「日経225先物」「日経平均先物」とも呼ばれています。
日経225先物取引は日経平均株価の1000倍が取引単位ですが、その10分の1単位で取引できる「日経225先物ミニ」もあります。そして今年6月、さらに取引単位を10分の1に縮小した「日経225マイクロ先物」の取り扱いが始まることも発表されました。
個人投資家の先物によるヘッジ需要を取り込むのが狙いで、2023年4~6月期のサービス開始が予定されています。
- 日経225マイクロ先物……日経平均株価の10倍
- 日経225ミニ……………… 〃 100倍
- 日経225先物……………… 〃 1000倍
日経225先物のメリット・デメリット
個人投資家も多く参戦するようになった日経225先物には、どんなメリットがあるのでしょうか。デメリットと合わせて確認しておきましょう。
日経225先物のメリット
- 少ない資金で大きな利益が狙える
- 売りからも利益を狙える
- 値動きがわかりやすい
「日経225先物」は日経平均株価の1000倍、「日経225先物(ミニ)」は日経平均株価の100倍の取引ができ、いずれも少額証拠金で取引できます。SBI証券の場合、日経225先物の証拠金は1,320,000円、日経225先物(ミニ)なら132,000円です(2022年9月5日~)。
また先物取引は、買いだけでなく売りからも取引できます。買いでも売りでも利益が狙えるのです。また、現物株のヘッジ取引として先物取引を利用するのも有効です。
日経平均株価はテレビ、ラジオ、新聞などでその動きを確認でき、情報の入手や把握が容易な株価指数です。株式分割や合併、株主優待、配当など、株価に影響を与える項目が多数ある個別銘柄に対し、日経平均株価は主要銘柄の平均値として算出される指数のため、主に株式市場全体の動向を反映します。
そうしたことから、日経平均株価を対象にした日経225先物は、値動きがわかりやすいというメリットがあるのです。
日経225先物のデメリット
- 大きな損失が出る可能性がある
- 強制決済のリスク
先物取引のデメリットは、損失額が自己資金を上回る可能性があることです。日経225先物はレバレッジをかけた取引が可能ですが、そのため、値動きによっては思わぬ大損をする可能性があることを認識しておく必要があります。
たとえば、100万円の証拠金でレバレッジ10倍の1000万円の取引をしていたとします。仮に、値動きによって資産が700万円まで下落した場合、損失額は300万円となり、証拠金の額より多くなってしまうのです。その場合は、追加の証拠金(追証)を入れる必要があります。
このように、先物投資では大きな利益を狙える反面、損失額が証拠金の額を超えてしまう可能性があることに十分な注意が必要です。
日経225先物では「強制決済」にも注意しなければいけません。追加証拠金を請求されても期日までに入金しなかった場合、現在保有している先物取引のポジションが強制決済されることがあります。
強制決済が行われた場合、現在の運用状況に関わらず、保有する先物取引は清算されるので、損失が確定されることになります。
先物の祝日取引で株式市場はどうなる?
デリバティブの祝日取引によって新たなヘッジ手段ができることから、3連休や大型連休前の様子見ムードは減る可能性があります。もちろん現物株の取引はできないので、積極的に取引をする投資家は限られるでしょうが、取引を手控える投資家が減るという点は期待されます。
また、取引日数が増えるので、レバレッジ型やインバース型の日経平均ETFを取引している投資家が先物取引に参加する可能性もあり、日経225先物を取引する個人投資家も増えるでしょう。
祝日取引の開始やマイクロ先物取引で、日経225先物はより取引しやすくなります。
これまで、レバレッジの手段としてETFの「NEXT日経平均レバレッジ<1570>」や「(NEXT FUNDS)日経平均インバース上場投信<1571>」を取引していた投資家の中には、より高いレバレッジが期待できるものとして日経225先物を検討する人も増えるでしょう。
ただし、先物取引はハイリスク・ハイリターンの金融商品です。レバレッジのつもりが大きな損失を生むことになっては元も子もありません。現物株を手がけるとき以上に、しっかりとしたリスク管理が必要である点は肝に銘じておいてください。