【相場の舞台裏】サンバイオ暴落の陰で、プロが見たもの・気づいたこと

4連続ストップ安のさなか

「また、バイオベンチャーがやりやがった……!」

東証マザーズで時価総額トップだったサンバイオ<4592>が、開発中の新薬の臨床試験において主要項目未達を発表(つまり開発は頓挫)。そこからの4営業日連続の地獄のようなストップ安に、2016年に多くの投資家を泣かせたアキュセラ・インク<4589>の悪夢を思い出した人も多いだろう。

その大暴落のさなか、気になるデータがあった。

サンバイオ株は1月30日から4営業日連続のストップ安のあと、2月5日にようやく2,440円で寄り付いたのだが(1月29日の終値は11,710円)、ストップ安初日の30日に売買板を見ると、なぜか8,710円で買い注文を入れている素っ頓狂な人がいたのだ。

一体この人は何を考えているのか? 相場は様々な思惑を持った人が入り乱れている戦場だとは言え、なぜこのタイミングで買おうと思うのか? そこには、どんな思惑があるのか? また、その人とは一体どんな立場の人なのか?

このモヤモヤとした疑問を解消すべく、プロの知恵を借りることにした。60万人を超える会員数を誇る「株の学校ドットコム」の講師にして、億を稼ぐプロトレーダーでもある窪田剛氏にこの疑問をぶつけてみたところ、意外な答えが返ってきた。

大暴落まっただ中の株を「買う」理由

ひとたび暴落が起きれば「空売りして儲けたい」と思う人もいるだろうだが、そもそも大暴落の最中に空売りなど不可能なことはアキュセラ・インクの例を見てもわかる。

大暴落中というのは、「うまく乗っかりたい」と思う人以上に、大多数の「今すぐ手放したい!」人たちが並んでいる。だからこそ、株価が寄り付かない。誰も買わない「ストップ安」が続くのだ。

しかしその中で、なぜ、あえて、8,710円という値で「買い」を入れるのか(これは、その後2,440円で寄り付いたことを考えれば、とんでもない高値だと言える)。

窪田氏にその理由を尋ねると、開口一番「まったくわからないです」と言って微笑んだ。百戦錬磨のプロとて理解できない奇怪な行動だったのだ。わからないことを断ったうえで、窪田氏はその奇怪な行動の「可能性」について触れた。

可能性① 寄り付いた後の「反発」を狙った?

「暴落中は、いつ寄り付くかわかりませんよね。なので、寄り付いた後の反発を狙って朝から成行、もしくはストップ安の指値で買い注文を入れておいて、15時前に取り消す人は、ある一定数います」(窪田氏)

相場には「デッド・キャット・バウンス」という言葉がある。大幅下落後の一時的な株価の小幅回復のことで、死んだ猫でも叩き落とせば跳ね返る、というとんでもない表現だ。

サンバイオも2月5日に2,440円でようやく寄り付き、同日に2,401円まで下げたものの、そこから現在(3月15日)に至るまで、その安値は一度も下回っていない。これが果たして、死んだ猫がバウンドしただけなのか、それとも猫が息を吹き返したのかは、現時点では何とも言えないが、この「跳ね返り」で儲けた人もいただろう。

しかし、そうは言っても8,710円での買い注文は大胆すぎる。今になってみれば、まだ猫が真っ逆さまに落ちている最中なのだ。しかも、実際この日は21,100株の出来高が記録されている。

「ひょっとすると、注文を取り消すのを忘れてしまい、不運にも買ってしまう場合はあるかもしれません……」(窪田氏)

同じ株をやる者として、この注文を入れた人がそうでないことを切に願いたい。

可能性② 何か「材料」が出ると期待した?

「タイミング(ストップ安の何日目か)によりますが、引け後に何かしらの材料が出ることを期待して、買う場合もあるかもしれません」(窪田氏)

良心的な上場企業は通常、株価に影響を与える情報は、いいものも悪いものも、その日の取引終了後(=引け後)に出すものだ。場中に情報を公開したら、その情報を見られるかどうかで投資家の初動に差が出てしまい、不平等となるからだ。

実際、アキュセラ・インクの場合には、情報を場中に発表するというタイミングの悪さも批判を浴びた。

可能性③ 喫緊のお金ほしさに……

「さらに、この場合ではあまりないでしょうが、空売りをしていて、ストップ安で買い戻したいという人もいます。現金化して支払いにあてたい、という場合もあるかもしれませんね」(窪田氏)

暴落前のサンバイオの株価は11,710円(1月29日の終値)。仮にこの金額で空売りしていたら、8,710円で買い戻していたとしても、それなりの利益になっただろう。しかし、3,000円前後でふらつく現在の株価を見ると、あと数日も待てなかったのかと他人事ながらもどかしい。

しかしこの人は、「喫緊のお金」が必要な、のっぴきならない事態にあったのかもしれない。くれぐれも資金管理を怠ってはならない、と肝に銘じずにはいられない。

株価は人の心理で動く

「いずれにせよ、『絶対損するじゃん!』というような場合でも、人によっては『これでいい』という場合もあれば、『くそー! 今日買い戻さないといけないのもったいねぇ!』という場合もあるかなと思います」(窪田氏)

株価は人の心理で動くものだ。その心理に傾向はあれど、当然例外もある。そして、まさかだとは思うが「売りと買いを間違えた」という凡ミスでないことを願わずにはいられない。

サンバイオは「バブル」だったのか?

バブルは弾けてみないとわからない。サンバイオとて、暴落の引き金となった臨床試験の結果が、もしも「つつがなく達成」であったなら、株価は2万円を超えていたのかもしれない。暴落後の今になって「あれはバブルだった」と切り捨てるのは簡単だ。

(Chart by TradingView

では、こうした動きをプロトレーダーはどう考えるのだろう?

「私は、基本的にチャートを見て短期のトレードをすることが多いのですが、流動性や値動きで判断すれば、サンバイオはとてもよいトレード対象だったと思います。ただ、かつて私自身もアキュセラという銘柄で痛い目を見ていて、バイオ関連は大きく持ち越さないようにしていたため、今回は回避できました。ですが、基本的には、こういう〝バブルっぽい値動き〟はトレード向きなんじゃないかなと思っています」(窪田氏)

サンバイオでもアキュセラ・インクでも、限りなく億レベルの借金を背負い、おそらくトレーダーとしては再起不能になってしまったであろう人のブログを見つけることができる。

たしかに「バブルっぽい値動き」はトレード向きだが、窪田氏のようなプロトレーダーは、そもそも一発退場とならない資金管理の術を知っているからこそ、ずっと現役で稼ぎ続けられているのだということを改めて実感した。

プロトレーダーの資金管理の極意は、窪田氏が講師を務める「株の学校ドットコム」で学ぶことができる。

「3日休む」という至言

最後に、窪田氏がサンバイオ騒動のさなか(2月4日)に「株の学校ドットコム」の会員向けに発信したメッセージを紹介したい。窪田氏のこの言葉に慰められた会員の方は、ずいぶん多くいただろう。

【号外。サンバイオの保有に関して】

株の学校ドットコムの窪田です。

色々なメールが行っているかもしれませんが、このメールでは、話題のサンバイオ株について非常に大事だと思ったので、あえて、号外という形でメールをしました。これは、現在保有しているかどうかに関わらず、とても大事なことです。ですから、しっかり読んでくださいね。

サンバイオ株に関して、あなたがどういう状況で関わっているかは私には分かりません。ですが、このメールで私が言いたいことは以下の3つです。

1.保有している場合は損切をして、休む
2.保有していない場合は、他人事とせず、ここから最大限学ぶ
3.資金管理はしっかりと行う

まず、

1.保有している場合は損切をして、休む

もし現在、あなたがサンバイオを保有している場合、明日(2019.2.5)もしくは明後日(2.6)(もしかしたら3日以上後かも)には完全一致で寄り付くと思いますので、その時にかならず決済してください。

寄り付いた後、少しでも高いところで売りたい。寄り付いた後の反発を取りたい。こう思う気持ちは痛いほど理解できます。ですが、現在保有しているのであれば、まず、決済すること。

損切りしたくてもできないという精神状態はとてもつらいです。そんな中、たとえ寄り付いたとしても、その直後から冷静にトレードはできません。ですから、繰り返しますが、もし現在保有していたら、すぐに成り行きで売り注文を出してください。

そして、寄り付いたらしばらく3日以上は休むようにして下さい。

その後、冷静になって、今回のことをしっかり振り返るようにしてください。それから、少しずつ復帰していけばよいのです。しっかりと損切をして、冷静になること。そして、しっかりと次につなげるために振り返りをすること。これが、非常に大切です。

私自身も、今回の件とよく比較されるアキュセラという銘柄で数千万円ほど損を出しました。数千万円あった含み益が6日連続ストップ安になり、結果として数千万円損失を出しました。

そして、寄り付いた日にすべて損切をし、反発狙いもしませんでした。きちんと振り返りをし、「もしもう一度同じ場面だったら回避できるか?」を考えました。

結果、同じことは起こりえませんが、「もし」があったとしても、やはり私はあの株を、あの時買って持ち越していたと振り返りました。

なぜなら、やり直せたとしても、あの場面では「買い」が自分のルールだからです。自分のルールに沿って売買する限り「買い」という判断は間違っていませんでした。その上で、損をしたのは仕方のないことだと考えました。

でも、そんな反省や振り返りがあったからこそ、今回は無傷ですし、反発狙いのトレードも準備万端です。

ですから、必ず今回の内容を振り返るという前提のもと、今保有しているのであれば、明日(2019.2.5)もしくは明後日(2.6)(もしかしたら3日以上後かも)には完全一致で寄り付くと思いますので、その時にかならず決済してください。

そして、寄り付いたらしばらく3日以上は休むようにして下さい。

続いて

2.保有していない場合は、他人事とせず、ここから最大限学ぶ

今回巻き込まれていない場合でも、関係ないと思わないでください。たまたま保有していなかったとしても明日は我が身です。

相場に長くいれば、多かれ少なかれ、どうにもならないといった状況に、必ず巻き込まれます。そうなった時にどう対応するかで、今後積み重ねていく利益が一瞬で消えるのか、きちんと残していけるのかが決まります。

保有していなかったとしても、今回のケースをそれぞれノートにまとめたり「もし保有していたらどんな気持ちだろう」と考えてみてください。こういったケースは、経験として蓄積していくための大きなチャンスでもあります。

3.資金管理はしっかりと行う

最後に言いたいのは、やはりトレードにおいては資金管理がとても大事ということです。

これは、私が身をもってお話しできることですが、アキュセラの時に大きく損失を出しましたが、総資金に対しては大きなダメージはありませんでした。もちろん、出してはいけない損ではあったのですが、それでもすべてを失うというところからは遠いところにありました。

これは、資金管理のルールを守ってトレードをしていたからこそ。

だからこそ、その後も、トレードで稼ぐことができています。これまでも、資金管理に関しては何度も口を酸っぱくして言っていることですが、自分でも実行してきて本当に大事だと考えています。ですから、ぜひこの機会に、くどいようですが、お伝えしておきます。

今回のサンバイオは、歴史に残るほどの値動きになってきています。でも、少しすると人は忘れてしまいます。せっかくの機会、というと誤解がありますが、今後も似たようなことは必ず起きます。その時のための材料として、しっかりとこの出来事から学べるだけ学んでほしいと思います。

株の学校ドットコム
窪田

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2019/03/22
株の窓口 編集部
「こうすれば絶対に勝てる」「これを買えば儲かる」といった、ひとりの個人の独断や成功体験よりも「普遍的な事実」こそが重要だと考え、小手先のテクニックではない、投資・トレードの本質をお伝えします。多くの個人投資家が無防備なまま株式市場に参加し、大切なお金をなくしています。そうした負の流れを変えるべく、株初心者の方や、これから株を本気で始めようとしている方にもわかりやすい解説を心がけています。
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