波乱か、それとも底堅いか。気になる9月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去の例からひもとく9月の株式相場の特徴とは?》
9月の株式相場は人が戻る?
9月の株式相場は、8月の夏休みムードから一転して市場参加者が増え、相場のボリュームが回復する時期でもあります。
アメリカの有名な相場格言「セルインメイ(5月に売り抜けろ)」の後段は「Don’t come back until St Leger day.(ただし、セントレジャーデイに戻ってきなさい)」 と続いています。セントレジャーデイはイギリスで毎年9月の2週目の土曜日に行われる、由緒ある競馬のクラシックレースです。
特に近年では、株式市場に大きな影響のあるアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)など中央銀行のイベントが8月には行われないこともあり、その反動で、9月に入ると相場の動きが出やすくなることも背景となっています。
9月の日経平均株価はどう動く?
そんな9月相場で、株価が「強い日」「弱い日」はいつになりそうでしょうか?
それを知るために、9月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。日経平均株価についての公式データを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率が掲載されています。
このデータを確認してみると、9月に日経平均株価が上昇した確率(勝率)が高いのは「13日」で、騰落率は66.6%でした。
反対に、9月で最も日経平均株価の上昇する確率が低い(=下がる確率が高い)のは、「4日」の33.3%となっています。
過去20年の9月にはリーマンショックも
さらに、日経平均株価の月間の騰落状況(前月末終値と当月末終値の比較)を、2000年から見てみます。8月末比では月間で上昇したのが11回、下落が11回で、上昇・下落がきれいに半々となっています。2000年からの平均騰落率も−0.1%です。
下落率が最も高かったのは2008年9月で、日経平均株価は月間で13.9%下落しました。
この年の9月15日、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦破産法11条の適用を申請しました。低所得者を対象とした高利回りの住宅ローン、サブプライムローンの証券化商品に多額の焦げ付きが発生し、水面下で身売り交渉を行っていたもののまとまらず、あえなく破綻に至りました。
いわゆるリーマンショックです。サブプライムローンの証券化商品は世界中に広まっていたため、信用収縮に発展し、世界同時株安の動きとなりました。
反対に、この20年で上昇率が最も高かったのは2005年9月で、日経平均株価は9.4%上昇しました。
この年は、小泉純一郎首相率いる自民党が郵政民営化を争点として圧勝したことを受け、構造改革や経済政策が進むとの期待で日本株は買われました。
また、この年の2月にはホリエモンこと堀江貴文氏のライブドアがフジテレビの大株主であったニッポン放送に買収を仕掛けるなど、新興企業ブームで小型成長株が買われたことも株式市場を盛り上げました。
直近3年の9月の日経平均株価は?
それでは、最近の9月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2019年9月の日経平均株価
2019年9月の日経平均株価は月間で5%上昇しました。
この年は、米中の貿易摩擦が株式市場の懸念となっていましたが、アメリカが制裁関税の引き上げを一部見送るなどタカ派のトーンが後退したことからアメリカ株が買い戻され、日本株も“連れ高”の展開となりました。
・2020年9月の日経平均株価
2020年9月の日経平均株価は月間で0.1%上昇しました。
アメリカでは上昇していたITグロース株などに利益確定の売りが出て、米中対立の激化といった不透明感で欧米株は売りが目立ちました。これに対して日本株は、安倍晋三首相から菅義偉首相に政権が交代したことから新政権への期待でデジタル庁や地方創生関連の銘柄が買われ、下値を支えました。
・2021年9月の日経平均株価
2021年9月の日経平均株価は月間で4.8%上昇しました。
予定されていた自民党総裁選では、再任が予想されていた菅首相が不出馬を表明。河野太郎、高市早苗、野田聖子、岸田文雄の各氏によって総裁選が争われることとなり、政権刷新への期待や新型コロナの感染状況にピークアウト感が出ていたこともあいまって、日本株は買われる展開となりました。
過去3年間で見ると日経平均株価の9月の勝敗は3勝0敗とすべて上昇しています。2017年からの5年間でも毎年上昇しており近年は上昇しやすい傾向となっています。
株価を動かす9月のイベント
株価にも影響を与える9月のイベントには、どのようなものがあるでしょうか。
- 初旬:日経平均株価構成銘柄の定期入れ替えに伴う採用・除外銘柄の発表
- 上旬:米アップルの新作発表会
- 9月15日~18日:「東京ゲームショウ」
- 9月20日~21日:米FOMC
- 9月28日:3月期決算企業の配当等の権利付き最終日
- 台風の接近に要警戒
まず初旬には、日経平均株価の構成銘柄の定期入れ替えに向けて、採用・除外される銘柄が日本経済新聞社から公表されます。採用されるのは10月1日付ですが、採用されるとインデックス買いなどが期待されるため、毎年、証券各会社が入れ替え候補を予想しています。
アメリカでは、アップル<AAPL>の新作発表会が毎年9月上旬に開催されます。例年、iPhoneやiPad、Apple Watchなどの新作が発表されることもあり、アナリストやガジェットブロガーなど多くの参加者が新製品のスペックなどについて事前の予想を公表します。
村田製作所<6981>やフォスター電機<6794>、アルプスアルパイン<6770>などのいわゆるアップル関連株の動向が注目されやすくなるのも、この時期の特徴です。
ちなみに、今年は景気減速もあってスマートフォンなどの販売が各メーカーともに苦戦していましたが、2022年4~6月期のアップルの決算はiPhoneの販売が思いのほか堅調だったこともあり、過去最高の売上高となっています。
ゲームの国際見本市である「東京ゲームショウ」も、例年9月の中旬~下旬に開催されます。2022年は9月15日~18日の予定。コロナ禍で2020、2021年はオンライン中心での開催(2021年はビジネス関係者向けのみリアル開催)でしたので、3年ぶりに千葉・幕張メッセでのリアル開催となります。
ゲームショウの時期には株式市場でもゲーム関連株が動意づくこともあり、チェックしておきたいところです。また、今年は昨年に続いてVR(仮想現実)による「TOKYO GAME SHOW VR 2022」も同時開催され、メタバースやVR関連にも関心が向かうかもしれません。
権利取りの動きや台風にも要注意
9月末にかけては配当などの権利取りが意識されます。
9月末は、3月期決算企業の中間の権利月となるため、好配当銘柄を中心に中間配当狙いの買いがマーケットでも意識され、相場の下支え要因となります。今年は、権利確定日の2営業日前の「9月28日」の大引けまでに株式を買えば、権利を得ることができます。
9月に限ったことではありませんが、10月にかけては台風など自然災害の多発する時期となります。
特に香港では、天文台の発令するシグナルに応じて学校や企業のほか取引所も休業となります。シグナルの数値は大きいほど台風の強いことを表し、香港証券取引所ではシグナル8以上で休場。中国(香港)株に投資している人は注意しておいたほうがいいでしょう。
波乱か。それとも、底堅いか
日経平均株価の過去データをもとに、9月相場の特徴をいくつかご紹介しました。
今年は特に、アメリカのインフレや金融政策の先行きについて、市場の楽観と悲観が対立している状況となっていることもあり、9月20日~21日に開催される米FOMCまでは、振れ幅の大きい相場になる可能性もありそうです。
ただし、日本株に着目すると、中間配当の権利取りの動きや近年では政治イベントなどを受けて、9月は底堅く推移しています。足元では新型コロナの感染第7波にもピークアウト感が出ており、海外からの入国時の検査簡略化などを受けて、空運株やインバウンド関連株などを物色する動きも出ています。
果たして、今年の9月相場は例年同様の動きとなるのか、それとも予想外の展開が待ち受けているのか……注目していきたいところです。