つみたて投資じゃ物足りない? だったら「スマートベータ」もいいかもしれません

榊原佳子
2024年11月7日 12時00分

スマートベータ」という言葉をご存じでしょうか。スマートベータは、インデックス運用やアクティブ運用とは異なる新しい投資手法として注目されています。

インデックス運用は低コストが魅力ですが、大きなリターンは期待できません。一方のアクティブ運用は、大きなリターンを得られる可能性がありますが、コストが高いです。

スマートベータは、そんなインデックス運用とアクティブ運用のデメリットをなくした投資手法だと期待されています。

新NISAで積み立て投資を始めたものの、もう少し利益が出てほしいな……と感じている方は、スマートベータを検討してみてもいいかもしれません。

スマートベータとは

「スマート」は賢い、「ベータ」は市場平均連動性を意味します。そして「スマートベータ」とは、伝統的な時価総額加重型インデックスとは異なる方法で構成されたインデックスのことを指します。

時価総額加重型インデックスとは、各企業の時価総額(市場での株価に発行済み株式数を掛けたもの)に基づいて、インデックス(指数)内の銘柄の割合を決定する方式のことです。

つまり、時価総額が大きい企業ほどインデックス内での比重が大きくなり、反対に時価総額が小さい企業の比重は小さくなります。S&P500種株価指数やTOPIX(東証株価指数)はこの方式を採用しています。

スマートベータは、こうした伝統的なインデックス運用とアクティブ運用の中間に位置する投資戦略です。

通常のインデックス運用では、時価総額加重型インデックスのように、企業の時価総額に基づいて株式の比重が決まりますが、スマートベータはそれとは異なる特定のルールや基準に基づいてインデックスを構成します。

スマートベータ登場の背景

なぜスマートベータという手法が登場したのでしょうか? 背景には、従来のインデックス運用とアクティブ運用の間に存在するジレンマが関係しています。

インデックス運用は、手数料が低く、市場全体の成長を反映することでリスクを分散できるというメリットがありますが、リターンの面では限界があるとされています。

一方、アクティブ運用は、運用者が市場を上回るリターンを目指して銘柄を選定しますが、手数料が高く、リスクも高くなりがちです。

スマートベータは、これらの運用手法の「いいとこ取り」をする形で登場し、投資家にとって運用の新たな選択肢となっています。

スマートベータの仕組み

スマートベータの仕組みは、特定のファクターに基づいてインデックスを構築するという点に特徴があります。

ファクターとは、リターンやリスクの要因を説明する「共通の要因」のことで、一般的には「高配当型」「低ボラティリティ型」「バリュー型」「グロース型」などが挙げられます。

  • 高配当型……配当利回りが高い銘柄に投資する戦略。高配当の銘柄は通常、割安と見なされることが多く、バリュー投資の一部として捉えられます。
  • 低ボラティリティ型……値動きが安定していてリスクが低い銘柄に投資する戦略。市場全体が不安定なときにも比較的安定したパフォーマンスを期待できます。
  • バリュー型……割安と見なされる銘柄に投資する戦略。企業のファンダメンタルズ(PERやPBRなど)に基づき、現在の価格が低いと判断される銘柄を選びます。
  • グロース型……高い成長が見込まれる企業に投資する戦略。売上や利益の成長率が高い企業が選ばれ、将来的な株価の上昇を期待します。

例えば、「低ボラティリティ型」のスマートベータでは、価格変動の少ない安定した銘柄を中心にインデックスを組みます。これにより、株式市場の急激な変動に対して影響を受けにくい可能性の高いポートフォリオを構築できます。

スマートベータ戦略のことをファクター投資ともいいます。特定のファクターをもとに銘柄を選定し、インデックスを構成することで、リスクを抑えながらも市場平均を上回るリターンを目指すのがスマートベータなのです。

スマートベータ運用のメリットとリスク

スマートベータの最大のメリットは、アクティブ運用よりも低コストで、インデックス運用を上回るパフォーマンスを期待できることです。

従来のインデックス運用が市場全体に連動した平均的なパフォーマンスであるのに対し、スマートベータは特定のファクターに基づいて銘柄を選ぶため、インデックス運用よりリターンが増える可能性が高まります。

そして、アクティブ運用と比べて運用コストが低く、管理も簡単です。

ただし、当然ながらリスクも存在します。特定のファクターに偏ったポートフォリオを組むため、市場環境によってはリターンが著しく変動する可能性があります。

また、ファクターに基づいた銘柄選定に問題があった場合、期待していたリターンが得られない可能性もあります。

さらに、インデックス運用よりも内容が複雑になるため、完全に理解して購入することは、初心者にとって少しハードルが高くなります。

初心者におすすめ! スマートベータ運用のETF

初心者でもスマートベータを活用できる投資商品として、ETF上場投資信託)があります。ETFとは、株式市場で取引される投資信託の一種です。

スマートベータを取り入れたETFは、特定のファクターを重視して銘柄を選定したポートフォリオになっています。それぞれの内容を理解して、自分の投資方針に合ったファクターのETFを購入するのがいいでしょう。

また、運用コストが高いとリターンが減ってしまうため、低コストのスマートベータETFを選ぶことも大事なポイントです。長期的に安定したリターンを出しているか、過去の運用実績もしっかり確認しましょう。

スマートベータの魅力

スマートベータは、低コストで運用できる点や、特定のファクターを活用して市場平均を上回るリターンを狙える点が大きな魅力です。一方で、市場環境やファクターの選定次第では、期待外れの結果となることもあります。

スマートベータだけに頼るよりも、他の投資手法と組み合わせて利用することで、よりリスク分散ができるようになります。

ETFは新NISAでも買えるため、インデックス運用の投資信託だけではちょっと物足りない方には、スマートベータ運用のETFを追加してみてもよいかもしれません。

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[執筆者]榊原佳子
榊原佳子
[さかきばら・よしこ]ライター、個人投資家。名古屋大学大学院修了後、大手出版社とIT企業で編集者として勤務したのち、フリーランスに。社会人1年目から株式投資を始め、投資歴は10年以上。株を通して経済や国際などの時事・歴史に関心が広がり、さらに株の世界にのめり込む。
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