株主総会のシーズン到来 今年はどんな提案が飛び出すか、アクティビストと企業の攻防に注目

山下耕太郎
2023年6月8日 10時00分

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日経平均株価が33年ぶりの高値を更新し、海外投資家の買いが活発になっています。それと同時に、6月の株主総会を控え、アクティビスト(物言う株主)の動きも活発になっています。近年、アクティビストからの提案が増えています。その理由はどこにあるのでしょうか。

株主総会とは

株主総会は、株式会社における最高意思決定機関です。

株主は、会社に関する意思決定を行うために、会社から出された議案を検討し、決議します。株主総会は、株式会社に関するすべての事項について決議できます。したがって、株主総会は、会社の経営方針や事業計画、取締役の選任、配当の決定など、会社の重要な意思決定を行う場なのです。

年に1回開催される定時株主総会が、通常の株主総会です。この定時株主総会では、企業の経営陣が1年間の事業報告を行い、株主が経営上の重要事項を決定します。

株主総会は、投資家が会社について知り、投資判断のための情報を得るための場でもあります。投資家にとって株主総会は、経営方針や事業計画、取締役の選任、配当の決定など、会社の重要な意思決定を行う場です。

また、株主総会では、株主は経営陣に直接質問することもできます。株主総会は、投資家にとって、会社について詳しく知り、投資判断のための情報を得る機会にもなっています。

アクティビストの台頭

日本の株主提案制度は、諸外国に比べて株主が利用しやすい制度で、近年、提案件数が急増しています。

株主提案は、株主が株主総会における議案を提出できる権利です。日本では、議決権の1%以上を6か月以上継続して保有する株主が、株主提案を行うことができます。株主提案により、経営方針や事業計画、取締役の選任、配当の決定など、会社の重要な意思決定に影響を与えることができます。

株主提案が活発になっている理由のひとつは、ファンド(アクティビスト)の活動が活発化していることです。アクティビストは「物言う株主」とも言われ、投資先企業の経営方針や事業計画に影響を与えるために、株主提案を行うことがあります。

こうしたアクティビストからの提案と思われる案件の増加が顕著で、剰余金の配当や取締役の選任など、多くの株主の関心を集める案件が提案されることも少なくありません。大手資産運用機関も、これらファンドからの株主提案に賛成票を投じるようになり、上場企業の株主総会運営を難しくしています。

企業側への働きかけとして、株主提案以外の方法も使われるようになり、上場企業の経営改革を目的としたファンドによるキャンペーンも珍しくなくなりました。

最近の日本のコーポレート・ガバナンス改革では、投資家と上場企業の対話を促進することが求められていることから、株主提案やキャンペーンは、今後も活発化することが予想されます。

セブン&アイに見る日本市場の成長

2023年5月25日に開催されたセブン&アイ・ホールディングス3382>の株主総会では、米大手ファンドのバリューアクトキャピタルが、百貨店やスーパー、コンビニエンスストアなどを複合的に運営することによる株主価値の毀損、つまり「コングロマリット・ディスカウント」を批判しました。

セブン&アイはこの批判から逃げず、株主提案に対する反論書を作成。井阪隆一社長がメディアの取材を通じて、「食」の戦略を進めるためにはスーパーマーケットの人材や開発力が不可欠であるなどと主張しました。

日本の株式市場でアクティビストが存在感を増し始めた2000年代には、「株主(アクティビスト)が攻め、経営陣が守り(逃げ)」の構図がありました。しかしながら、今回のセブン&アイとバリューアクトのやりとりは、日本の資本市場において(大企業に関しては)経営者と株主が企業価値を議論できるまでに成熟したことを示唆しているのではないでしょうか。

セブン&アイの株主総会は、日本企業がアクティビストにどう対応すべきかを示す事例となりました。アクティビストからの批判を真摯に受け止め、株主価値の向上につなげることが、企業の成長につながります。

世界的に見ても、日本はアクティビストの活動が最も活発な国のひとつとなりました。

調査会社のインサイティアによると、2022年にアクティビストから提案を受けた日本企業は107社で、2021年から60%以上も増加し、2015年を比較すると4.5倍となりました。ちなみに首位のアメリカは昨年511社で、2016年から20%以上減少しています。

アクティビストは単に経営陣を批判するだけではありません。時には、業界の専門家を探したり、社外取締役候補を具体的に提案したりすることもあります。企業には、きちんとアクティビストと議論し、公正かつ合理的に対応することが求められているのです。

[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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