お墨付きの優良ベンチャー「J-Startup企業」 現在の株価はどうなっている?
手頃な株価で創業間もない企業の株を買い、その後、大化けして大儲け──。投資家の夢でもあるが、当然、すべてのスタートアップ(創業間もない企業)が成功するとは限らない。では、そこに「経済産業省のお墨付き」があればどうだろう?
経産省のお墨付きスタートアップ!
2018年6月、経済産業省は優れたスタートアップを支援する「J-Startupプロジェクト」を始動。すでに92社のが選ばれており、その中にはすでに上場した企業も含まれている。「大化け」はあるのか? これら上場スタートアップ企業の株価をチェックしてみた。
そもそも「J-Startup」とは?
まず、J-Startupの設立趣旨を見てみたい。J-Startupホームページには、以下のように記されている。
日本では約1万社のスタートアップが日々新しい挑戦をしています。
しかし、グローバルに活躍する企業はまだ一部。
世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し
革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供する。
それが経済産業省が推進するスタートアップ企業の
育成支援プログラム「J-Startup」です。
この理念のもと、「トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当などが、日本のスタートアップ企業約10000社の中から一押し企業を推薦。外部審査委員会が推薦内容を尊重しつつ企業をチェック」して選ばれたのが「J-Startup企業」だ。第一弾として92社が認定されている。
J-Startupが認定したこれら「特待生」企業には、経済産業省、JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)といった「官」の組織がファイナンスや海外展開などを支援。
さらに、ベンチャーキャピタルや大企業といった「民」の組織は、人材育成やオフィススペースを提供するなど、まさに官民一丸となった支援が行われるのだ。
すでに上場している企業は12社
選ばれた92社の顔ぶれを見ると、メルカリ<4385>といった知名度の高い企業もあるが、たいていの企業は、あまりなじみがない。なかには「月面開発を行う」という夢のある企業もある。そして92社のうち、すでに12社が上場を果たしている。
【上場しているJ-Startup企業】
- ユーグレナ<2931・マザーズ>
- ペプチドリーム<4587・マザーズ>
- リプロセル<4384・JASDAQ>
- CYBERDYNE<7779・マザーズ>
- クラウドワークス<3900・マザーズ>
- ユーザベース<3966・マザーズ>
- Fringe81<6550・マザーズ>
- PKSHA Technology<3993・マザーズ>
- マネーフォワード<3994・マザーズ>
- すららネット<3998・マザーズ>
- メルカリ<4385・マザーズ>
- ラクスル<4384・マザーズ>
J-Startup企業の株価をチェック
では、これらJ-Startup企業の株価はどうなっているのか、新規上場からの推移を見ていこう。
・ユーグレナ<2931>
(Chart by TradingView)
ミドリムシを活用した機能性食品、化粧品を販売。バイオ燃料事業も。2012年12月20日上場。上場直後から株価は急伸、5か月で5倍以上も高騰するが、その後急落。2016年からは緩やかな下落傾向が止まらず。
・ペプチドリーム<4587>
(Chart by TradingView)
独自の創薬開発プラットフォームを用いた特殊ペプチドの開発。2013年6月11日上場。株価は一貫して上昇傾向にあり、2018年3月には初値から6倍近くとなる高値を更新。その後の高位で推移している。
・リプロセル<4978>
(Chart by TradingView)
iPS細胞の研究試薬、臨床検査事業。2013年6月26日上場。ほぼ上昇することがないまま、上場1年で株価はほぼ半減。その後も緩やかな下落が続く。
・CYBERDYNE<7779>
(Chart by TradingView)
医療や介護分野などで活用されるロボットスーツの開発・販売。 2014年3月26日上場。直後から株価は上昇傾向、2016年6月には3倍に。その後は下げて、2018年末には500円を割り込む。
・クラウドワークス<3900>
(Chart by TradingView)
国内のクラウドソーシングプラットフォームのパイオニア。2014年12月12日上場。じわじわと下げ、2016年年始には500円を切るも、その後は上昇傾向。特に2018年以降は伸びが顕著。
・ユーザベース<3966>
(Chart by TradingView)
情報分析サイトとニュースサイトの運営。2016年10月21日上場。2017年までは緩やかな上昇傾向だったが、2018年に入り急伸。7月以降は段階的に落とすも、年明けから戻す。
・Fringe81<6550>
(Chart by TradingView)
インターネット広告配信プラットホーム開発等。2017年6月27日上場。直後から株価は下落し、2か月で初値の半分近くまで下げる。その後は横ばいが続いていたが、2018年末からさらに下げている。
・PKSHA Technology<3993>
(Chart by TradingView)
人工知能のアルゴリズムの開発。2017年9月22日上場。上場2か月で株価は倍に。2018年はやや下落傾向にあったものの、盛り返しつつある。
・マネーフォワード<3994>
(Chart by TradingView)
個人向け家計簿アプリの開発・提供等。2017年9月29日上場。2018年1月まで横ばいが続いていたが、2月から1か月強で株価は倍まで急伸。その後上昇は一服。年末にかけて下げていった。
・すららネット<3998>
(Chart by TradingView)
オンライン学習教材の開発。2017年12月18日上場。上場直後から株価は上昇を続け、2018年6月にはほぼ倍増。その後はやや下落傾向も、株価は依然高水準。
・メルカリ<4385>
(Chart by TradingView)
おなじみフリマアプリの開発、提供。2018年6月19日上場。直後から株価は下落傾向。年末に最安値をつけるも、年初からは上昇に転じ、2か月で約2倍にまで戻した。
・ラクスル<4384>
(Chart by TradingView)
印刷プラットフォームの運営。2018年5月31日上場。10月までに2倍以上に伸びた後はやや下落するも、1月後半からさらに上昇。
期待と株価の因果な関係
こうして見ると、経産省そして投資家たちの期待を乗せて順調に株価を伸ばしている企業はあるものの、一方で、やや期待が高すぎたかなと言わざるを得ない企業もちらほら。
また、株価が好調な企業のなかには、過去3期の営業利益がすべて赤字……という企業があったり、反対に、業績はいいのに株価は振るっていない企業があったりもする。業績と株価は必ずしも連動しないことが、ここでもうかがえる。
誰かのお墨付きや太鼓判があったとしても、株価が「確実に」上がるとは決して言えない。勢いのあるスタートアップを応援しようという場合でも、大切な資金を投じる以上、判断は慎重に下したい。